バレンタインクエストに向けて
いつもありがとうございます。
難産でした。
あっという間に季節は廻り。
現実でもゲームでも充実したクリスマスと正月を過ごしたカナリアは、バレンタインイベントをこなすべく、リリアーヌとタブレットをのぞき込んでいた。
「……いろいろあるんだね」
「日本発のやつだと、大抵チョコレートで終わりなんだもん」
「WOL」もそうなんだよ、とリリアーヌは笑う。「TabTapS!」は何故か(というか、クリスのごり押しでそうなったというのは、後で聞かされた)大陸や島ごとにやっているバレンタインイベントが違う。
日本独特のチョコレートイベントから(こちらはしっかりホワイトデーイベントがセットになっている)、果ては「聖ヴァレンティヌスに倣い、カップルを成立させろ!」という異色のものまである。
「むぅぅ」
どれをするか、というので二人で悩んでるのだ。
「Lttle ladyたちは何で悩んでいるのかな?」
いつの間に、という言葉はクィーンが発したパッシブスキルで有耶無耶になった。
「まぁ、毎度の選り取り見取りで悩んでいるだけです」
さらりとリリアーヌが告げた。
「バレンタインクエストだね。個人的にお勧めなのは『カップル限定クエスト』かな」
「……それすらいろいろあるんですが」
リリアーヌが言う通り、「カップル限定クエスト」も多岐にわたる。ダンスをするものから、共同作業ものまで。どれを指しているか分からない。
「なぁんだ。Little ladyはともかく、Fraulein知らないの?」
「……その流れだと、Frauleinってあたしのことですよね」
「Of course! Little ladyが二人じゃ、どっちを指すか分からないし。だったら、違う言葉のほうがいいだろう?」
「……この似非紳士が」
「|I compliment《褒め言葉だよ》」
途中からリリアーヌとクリスの舌戦となり、カナリアはクィーンに言われるがまま、茶の稽古に突入していた。
それが続くこと暫し。英語がだめなリリアーヌの負けで舌戦は終了した。
「美玖ちゃん、ごめん」
二人に茶を出しつつ、カナリアは笑うしかなかった。
「まぁ、私のお勧めは今回限定のクエストだよ。公式HPでも話題に上がっているはずだからやってみるといい」
「……分かりました」
……嫌な予感しかしない。
しかし、イッセンの要望により四人でクエスト参加が決まった。
余談ですがフロラインという言葉はドイツでは死語だそうです。「お嬢さん」という意味しかないらしく、未婚女性にしか使えないからとか。声をかけるときは「フラウ」のほうがいいそうですよ。
本来であれば、リリアーヌに対して使うのは「フラウ」。わざとクリスは「フロライン」と呼ぶことでリリアーヌをイラつかせております。
それから、「褒め言葉だよ」という英語……
これは正しいかどうかわかりません。
「もちろん」という英語も「Sure」は「(人が)確かで、確信して」から質問や依頼に対して「いいですよ」とか「もちろん」という訳になるのだとか。もう一つの「Of course」は「取るべき方向にある、正しい方向にある」から「当然」という意味での「もちろん」になるのだとか。ぶっちゃけ、クリスの言葉を簡潔に言ってしまえば「だから何?」みたいな感じです。なので、「もちろん」と答える時には「Sure」をお勧めします。クリスのように「Of course」と言ってしまうと余計な恨みを買うことになるかもしれませんので、皆さまお気を付けください。




