碌なことをしない人たち
いつもありがとうございます。
プログラムが組み終わるのを、神崎とともにお茶をしながら待つことになった。
神崎曰く、「これぐらいしても元は取れない」らしい。
「急ピッチで色々仕上げましたからね。出勤早々引き継ぎなしでプログラムとか、前の会社以来でしたよ。しかもアバターはともかく、他はあり合わせとか。ありえない」
お薄を飲んで一息ついた後、神崎が諸悪の根源たちを睨みながら言う。
「……カナリアちゃんも難しいと思いますが、ジャッジ君の手綱をちゃんと握っててください。ジャッジ君の一件でどうしても解決できないような場合は、俺やクィーンさんに相談。俺らはクエストにかかわることないんですから」
「はい」
しょんぼりとした面持ちのカナリアが答える。
「間違ってもクリスさんに相談しないこと。絶対問題を複雑にするだけだから」
「りょーかいっ!!」
カナリアが「はい」と言う前に、他のメンバーが答えていた。
「酷いな」
「どこが酷いって? この歩く非常識が!! 誰のせいで現場が阿鼻叫喚の図になったと思ってやがる」
青筋を立てた神崎がクリスにハリセンを向けながら叫んでいた。
「でも了承されたわけだし」
「よぉぉく分かった」
処置なしと言わんばかりに、神崎が話を切った。
「神崎さん、終わった」
出来上がったものを神崎が確認して、それを発動させる。
ディッチたちのタブレットに「クエストクリア」も文字が現れ、報酬アイテムが分配されていく。
「……やっちまった」
アイテムボックスを開けてディッチは思わずつぶやいた。
「譲渡不可なんだよな~~」
その時願ったものがそのままアイテムとして出てくる仕組みだったらしい。開けるときに飛行船の設計図とか考えればよかったと思ってしまう。
「神崎さん、どーしても譲渡不可?」
「当然です」
「いやさ、あいつらのトラップに引っかかった」
「は?」
アイテムボックスには「汝の思う愛らしきものは?」という文字が書いてあり、ディッチはユーリを思い浮かべた。そして、出てきたのは「ユーリに似合う服&防具二十セット(今まで運営側で出したネタもの含む)」だった。さすがにディッチは着れない。
「あんたら、何やってんですか!?」
「とりあえず煩悩の赴くままの考えが出そうなセリフ考えた」
しれっとジャッジが答える。
「さすがに1/1フィギュアとか出るとまずいからね、アイテム固定にさせてもら……」
「阿呆かぁぁぁ! この非常識親子が!! 当人使い道ないだろうが!!」
「……という冗談は置いといて。今から渡すほうが本当の報酬アイテムボックス。今開けたほうは譲渡可能だから」
その言葉にスカーレットの目が光った。
「うふふふふふ。これを着てもらわないとあたしもわりあわないわ」
そう言うなり、カナリアをがしっと掴む。
「ひゃぁっ! ジャッジさん!!」
ジャッジが引き離す前にことは終わった。
「……ふぇぇぇ」
カナリアの頭にはウサ耳が。しかも以前よりもグレードアップし、恥ずかしそうにするカナリアに合わせて、ウサ耳まで真っ赤になっている。
「ウサギ族になってる」
ステータスを見たイッセンがぼそりと呟いた。
また新たな種族が出来た瞬間だった。
カナリアのウサ耳ふっかーーーつ!!
そして新たな種族に……
神崎の胃はいつまでもつのか……




