カナリアからの依頼
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その後、「安楽椅子」にカナリアという癒しを求めて集うイッセンの同僚が、たむろするようになっていた。
「……あの、ですね」
こめかみを押さえながらイッセンはため息をついた。
本日来ている同僚の膝の上にはニーニャが鎮座している。
「ニーニャ可愛くて、大人しいんだもん」
「ご自宅でネコを飼えばいいかと」
以前ならまだしも、今ならネコと戯れる時間くらいあるはずだ。その同僚の足元には大型狼のモンスター「ハウグス」もいる。
「アパートペット禁止だし。飼う前にいちどネコ喫茶に行ったら、見事に嫌われて誰も近づいてくれなかった。おネコ様の僕になる自信はあるのに」
しみじみと呟きながら、同僚のキャラクター「フィズ」はニーニャの尻尾を撫でている。
「リアルでもネコの尻尾とか撫でてませんよね?」
「撫でるよ! 肉球もぷにぷにするよ!! ぎゅっと抱きしめるよ!!」
「問題はそれだ!!」
即答したフィズにイッセンは思わず突っ込みを入れた。
「ぜんっぶ、ネコが嫌う動作ですよ! 少しくらいならいいかもしれませんが、続けられると逃げます!」
「にゃ!?」
イッセンの声に驚いたニーニャとハウグスが毛を逆立てた。
「……ごめん、ごめん。ちなみに今みたいに大声をあげるのも、リアルネコは嫌いますからね?」
「そっかぁ。やっぱりリアルでネコ飼うのやめよう! その代わりここのニーニャたちを愛でよう!!」
開き直ったフィズに、イッセンは呆れるしかなかった。
「じゃあ、依頼していいですか?」
そう訊ねてきたのは、カナリアだった。
「どうしたの?」
「みんなのご飯の材料が少なくなってるんです。それを取りに行って欲しいなって」
「……自分で行きなよ」
「そうしたいのは山々なんだけど、指名依頼が切羽詰ってるの。これからリアちゃんのところに行って、鱗と抜け毛、それから爪を切ってそれを持ってこなきゃいけないし」
確かに。それだけはカナリアでないと出来ないことである。
「持ってくるのは?」
「ワームの肉百キロと雷魚五十匹。それからラディディッシュ五十キロと……」
「そんなにあるの!?」
フィズが驚いていた。
「はい。ワームの肉はどんなにあっても足りないんです。ミートパイにも使いますし」
……竜神様と翼竜たち用ね。
「それからワンちゃんや、狼タイプの家族にも好評なんです」
「……あっそ」
「雷魚は?」
「ニーニャたちネコ系の家族、それから……」
聞くだけで頭が痛くなってくる。ラディディッシュに関しては、それこそ大量に必要なはずだ。
「分かった。で、報酬は?」
一応「依頼」なのだから、報酬は必要だ。
「えっとね、時価を考慮すると一万Pだと思う」
「妥当だね。その値段を考えたのは?」
「セバスチャン」
イッセンの問いに当たり前のようにカナリアが返してきた。
「それで手を打つよ。セバスさん、飯だけ用意して」
「イッセン様、かしこまりました」
「ってなわけで行きますか? 先輩」
カナリアに感謝される上に、ニーニャの好感度も上がりますよ? そう耳元でささやけば、あっという間に同意してきた。
二人でパーティを組み、AIの装備も整えて「安楽椅子」を出た。
その後も、フィズはこの依頼をちょくちょく受けるようになっていたことに気付くのは、ジャッジに問いただされた時だった。
~~イッセンが来る前の「安楽椅子」にて~~
カナリア「セバスチャン、お肉が足りなくなってます」
セバス「お客様に出す分は足りてますが」
カナリア「みんなの分です」
セバス「……そちらでしたか。失礼しました。確かに少なくなってますね」
カナリア「ジャッジさんもいらっしゃらないし、私もこれからリアちゃんのところに行って、そのあとアクセサリー作りしなきゃいけませんから、どうしましょう?」
セバス「ギルドカウンターに依頼を出せばよろしいのでは?」
カナリア「……出せるんですか?」
セバス「ミ・レディ。今回あなたが作るアクセサリーの依頼はどこから、どうやって来ましたか?」
カナリア「ギルドカウンターを通じて、指名依頼です」
セバス「同じことです。ただし、指名しないだけの話ですよ」
カナリア「……そういえばそうですね。(そう言って必要な材料を書き留めていく)これ位必要なんですけど」
セバス「妥当でしょうね。で、クエストクリア時の報奨金はどれくらいになさるおつもりで?」
カナリア「どれ位必要でしょうか?」
セバス「……そこから、ですか? おそらく一万Pにしておけば間違いないですよ」
カナリア「ありがとうございます! リアちゃんのお手入れに行く前にギルドカウンターで依頼出していきます!」
セバス「(果たしてミ・レディは出せるんでしょうかね)そうしていただけると助かります」
実は、今までセバスチャンがこっそりこの依頼を出していたということをカナリアは知らない。
お粗末さまでしたww




