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渡したものの価値


 いつもはバイクの音が聞こえるのだが、今日は車らしき音がした。

「……車、買ったんですか?」

「AT車だけどな。バイクで二台に分かれて移動するよりも、こっちの方がいい」

 最近はこの町から結構離れた場所まで、クエストに行くことが多くなった。違う町でクエストを受けることもある。……ほとんどがジャッジと一緒だが。

「騎乗クエストも受けとけ。そうすりゃ、馬とかが乗れるようになる。バイクでの移動よりも、セバス的には楽そうだからな」

「……馬、ですか?」

「馬が嫌なら牛とか鹿も可能だぞ。LVが五十まであがれば飛行タイプの騎乗にも乗れるぞ」

「空、飛べるんですか?」

「食らいつくのは、やっぱりそこか。……飛べるぞ。大体がペガサスとか、グリフォンだけどな。上手くいくと、ドラゴンにも乗れるらしい」

「ジャッジさんが乗っているのは?」

「最近は乗ってないな。今回は難しいから、また今度な」

 そう言って、ジャッジがカナリアの頭を撫でてきた。

「はいっ。

 それから、ジャッジさんとリースさんにお渡ししたいものがあったんです」

 車に驚いてこちらを忘れてしまうところだった。


 カナリアが二人に渡したのは、ペンダントとピアス、それからブレスレットのセットだ。


 一つつけただけでもそれなりのMINUPなどがあるが、三つそろえて使うと、相乗効果があるという、優れものになっている。セバスチャンには出来上がるなり渡したので、二人に渡せばいいだけだった。

「……おい、これ……」

「今まで色々してくれたお礼です。こんなものしか作れませんでした」

「『こんなもの』で済ませられるレベルじゃない。通常、セットとはいえ、相乗効果があるものなんてほとんどない」

「そうなんですか?」

 相乗効果のものは、今回初めて出来たのでカナリアとしてもよく分からない。

「礼としてもらうには多すぎるぞ」

「拠点購入の際の、利子分も含むと思ってください」

 一応、今日渡すお金で拠点購入時の金額返済は出来た。予想より早すぎる返済に驚いているのは、カナリアだけではない。


 一番驚いているのは、ジャッジだ。少しばかりアドバイスをしただけで、カナリアの名前はアクセサリー職人として、「TabTapS!」の中では有名になりつつある。

 カナリアが来ない間、知り合いといくつかクエストを回ったが、知り合いのAIがつけていることも多かった。


 しかも、初期の何の付加価値もついていないやつだ。


 アクセサリーに付加価値など求めていない者も多いのだろう。防御は鎧系で何とかなる。作る者によっては、その鎧自体が服の様に軽いものまであるのだ。だからアクセサリーなど、飾れればいいと考える者も少なからずいたということだ。

 カナリアのセンスがかなりいいということだろう。そんなものに付加価値がついたのだ。求める者も多くなる。そして、AIを「嫁」と宣言する連中の中には「お揃い」を希望する者もいたのだ。

 ジャッジとしては、そのプレミア中のプレミアをただでもらえたことになる。

「……いいのか?」

「ジャッジさんが助けてくれなかったら、きっと挫折してこの楽しみが分からないままだったと思います。たくさん助けてくれたり、色んなところに連れて行ってくれたり。私、感謝しきれないんです」

「……これからも連れてってやるよ。今日は車で移動するからな」

「はいっ。あつかましいかと思いますが、これからもよろしくお願いします!」

 ぺこりと頭を下げたカナリアを見て、そしてアクセサリーをその場でつけた。


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