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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
ジャッジのいないクエスト

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現実世界にて<サプライズ 4>

 翌朝、終始ご機嫌そうな美玖と寝不足気味の保の様子に、全員が驚いた。

 逆なら分かる。


 何せ、保は自分の部屋に美玖を連れ込んだのだから。


「美玖ちゃん、何かあったの?」

 りりかが訊ねると、美玖の顔は耳まで真っ赤になった。

「おまっ!! 何をした、何を!?」

 正芳が保に詰め寄っている間に、美玖にはりりかと一弥、それから晴香が誘導尋問を始めていた。



 宴も終わりに近づき、美玖は軽々と保に抱え上げられた。

 その時点で「あ、今日食われるな」と二人以外が思った。

「た、保さん!?」

「たまにはいいでしょ?」

 そう言ってすたすたと歩いていった。

「止め損ねた!!」

 悔しがるりりかを、一弥が宥めていた。


 美玖を己の休む部屋に連れ込んだ保は、美玖に大きめの箱を渡した。

「これ、は?」

「クリスマスプレゼント。……別に日本人だからクリスマスは関係ないなんてありえないからね」

 昌代に色々してやられ、己のプレゼントが霞んでしまったかもしれないが。

「わ……私、何も用意してないです」

 そりゃそうだろう。今まで「クリスマスは関係ない」とされていたのだ。用意するなんてことは考えないはずだ。

「じゃあ、頂戴」

 そう言って保は美玖にキスをした。ディープなものにしようと思ったが、通常のキスでさえここまで驚いているのだ、それ以上は今のところ止めておこうと思った。

「これで俺も美玖からクリスマスプレゼントを貰ったよ」

 その言葉に美玖が驚いていたが、保は笑っただけだった。

「今日、トナカイの服着たりしたから、寒かっただろ」

「保さんがブランケットかけてくれたおかげで、助かりました」

「そっか。ならよかった。今日の夜くらい、俺の部屋に居て」

 クリスマスは家族や大切な人過ごす日だと、美玖に教えていく。だから、夜くらいは二人きりになりたかった。

「いましたキス以外、しないから」

 その言葉に、美玖が微笑んできた。


 保の腕を枕にして、己に背中を預けるようにぴったりとくっついて、美玖は眠りについた。


 ここからが保の理性との戦いだった。

 寝顔が見にくいのは残念、と思ったのは最初だけ。暫くして、美玖がころんと寝返りをうって顔がこちらに向いた。

 穏やかな寝顔にほっとするものの、すぐさま理性との戦いになった。

 こういうときは円周率を思い出すといいんだっけ? などと思春期真っ只中の男子のようなことを思ってしまった。

 そうこうしているうちに、美玖が額を首下近くに摺り寄せてきた。


 我慢できるか!? これは襲ってもいいということか!? などという保の葛藤は。美玖に伝わるはずもなく、寝言で保のことを囁かれるだけで舞い上がれる自分が恨めしい。

 何度も腕を抜こうとしたが、眠った美玖は断固として許さず、一晩お預けをくらったのだ。


 そして翌朝になり、安心して眠った美玖と、それを見つめ続け寝不足になった保がいたわけである。



 その話を聞いた一弥とりりかは手を合わせて笑っていた。

「さすが美玖ちゃん!」

「天然砲と呼ばれ続けただけはある!」

 二人は嬉しそうにそう言った。

「ジャッジさん! その美玖ちゃんが額を摺り寄せるって行為ですけど、『この人なら信用できて、安心できる』って人に無意識でする行為ですよ。つまり美玖ちゃんから見て、ジャッジさんはただの安全牌です!」

「それが崩れると、美玖は逃げます! 全速力で逃げます! 安全牌と認識されるのと、危険人物と認識されるのどっちがいいですか?」

「……くそっ」

 手を取り合い喜ぶ二人をよそに、保は苦虫を噛み潰したような顔になった。

「……保、今んとこ安全牌でいてやれ」

「正芳、他人事だと思ってるだろ!?」

「他人事だが、ここで安全牌じゃないと思われ、逃げられたらその先に進めないぞ? 少しずつ壁を取り壊していけば、そういう対象になるんだ。長い目で見ろ」

 腹が立つが、「美玖に逃げられた上ずっと会えないのと、美玖と一緒にいれるのどっちがいい?」という正芳の言葉で、保は引き下がることにした。


最強は天然砲の美玖でしたw

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