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現実世界にて<告白>

「お前は、どこまで関わっている?」

 先程までとはうって変わって、きつい口調になった隆二が保に訊ねてきた。

「出来れば関わりあいたくなかったんだが、俺の恋人が『限定クエスト』に巻き込まれた。んでもって『娘香の巫女』になった」

「……端折るの止めてくんねぇ?」

「いや、多分美玖が感じているのもそれくらいだし。あ、美玖は恋人の名前」

「惚気を入れてくるな!!」

「惚気てない。俺もそれに付き合って『巫女の守人』なんて称号をもらえた」

「で、その続きは?」

「俺と正芳は幸也に誘われて始めたんだ。その頃には『限定クエストは全てクリアされている』ということになってた」

「んなわきゃねぇだろうが」

「うん。それは運営にも確認済み。さすがにバグだと思ってクラッキングしようとしたら、運営に止められた」

「運営でなくても止めるよ! それは!! ってか、幸也や正芳は一緒じゃなかったのか!?」

「幸也は仕事の都合から一時離脱中。んでもって正芳はいたけど、止める前に運営に止められた」

 保の言葉に、隆二が頭を抱え始めた。

「続けるぞ。俺に言われて初めて運営側は『限定クエスト終了』という噂を知った」

「……やっぱどっか抜けてるな」

「神崎さんが責任者に近いところに居るからな」

「あの人か。知ったらすぐに対処するはずだろ」

「そうだろうが、今まで知らなかったでは済まされないって話をしたんだよ」

「……お前ね……」

「当たり前だろうが。美玖が巻き込まれなかったら、未だにあちら側に知らされなかったんだ」

 保は淡々と事実だけを述べていく。

「で? 二度と恋人さんが巻き込まれないために、お前が究明に乗り出したってわけ?」

「いんや。とある人の人脈を借りろって言っただけだったんだが……」

「その人にお前が怒られてくる羽目になったと」

「当たらずしも、遠からず。どちらにしても美玖がゲームを純粋に楽しむための障害になるやつは、俺が取っ払うつもりだったし」

「なんだよ!? その過保護っぷりは!! そんなんだから歴代の恋人に逃げられるんだろうが!!」

「美玖は逃げないと思うぞ?」

「逃がさないの間違いじゃないのか?」

「いや、逃げない。依存させるつもりだし」

「阿呆かぁぁぁ!!」

「というよりも、現状普通の生活自体が無理になってる。あ、これは俺のせいじゃないぞ。なんだったら正芳に聞いてもいい」

「……あっそ」

 怒ったり疲れたりと大変だと、保は自分のことを棚に上げて同情した。

「元々ゲーム自体もそこまでやってる子じゃなかったし、VRMMOも『TabTapS!』が初めてだからな。オンラインゲームの悪意から守るのも役目だろ?」

「どんだけ過保護なんだ……」

 呆れて呟いた隆二を無視して、話を進めていく。

「で、現在唯一の『限定クエストクリア』の称号をもっているのは、俺が知るだけで美玖だけ。しかも、その前にあるレイド戦でとあるギルドの力を借りた」

「……まさか『深窓の宴』なんて言わねぇ……」

「そのまさかだ。借りたのはサブマスのサイレンとそいつが選んだ五人の計六人」

「あれ? 俺が居たころはサブマスはシュウとトールだったはずだが」

「シュウはまだサブマスだな。トールは七月くらいに更迭の上、除名された。それに伴って、かなりの人数が『深窓の宴』を脱退。新しいギルドを作った」

 そこまで話すと、隆二はため息をついた。

「俺も一時期、『深窓の宴』にいた。あいつらはトールのやることを黙認してきた」

「だろうな」

「ギルマスだって同じだ。『深窓の宴』の初期メンバーは全員『限定クエスト』が終わっていないことも、終わらないことも知っているはずだ」

「なるほどな」

 それで、あそこまで広がったというわけか。そして運営側にも「深窓の宴」のメンバーがいるのかもしれない。

「というか、いるぞ。トール自身がT.Sカンパニーに縁があるはずだ」

「だからか。お前が『TabTapS!』を辞めたのは」

「それもあるし、俺もあのプログラムに関係してたんだ。……親父もだけど。だから俺らの知識が悪用されるのを恐れて辞めたんだ」

 ただ辞めただけではないだろう。おそらく、それなりの圧力がかかったのかもしれない。だから嫌気がさして山奥に籠ったのだろう。


よくぞ隆二も正芳も友人を続けていたものだと(ry

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