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カナリア、外の世界を知る

 一体何をして、そこまでジャッジとカナリア(二人)が時間を食ったかというと……。


 原因はカナリアにあった。二人のAIは既に帰路に着く二人のために本拠地へ移転していた。残るはジャッジとカナリアになる。

「帰り、神殿移転で帰るか? それとも車で帰るか?」

「シンデンイテンってなんですか?」

 そんなことも知らずにやっていたのかと、ジャッジはある意味カナリアを尊敬した。

「各町に神殿があるのは知ってるよね?」

「はい」

「何のためにあると思っていた?」

「お祈りのためかと」

「それはNPC限定だ。他には行ったことのある場所にすぐ行けるようにするための装置が、あるんだ。ただし、人、もしくはこういった鞄など身体から離さないもの限定だ」

「ということは……」

「そう。車という『見せるもの』がなければ、神殿を使ってもよかったんだ。以前にソフィル王国首都にカナリアも来たことがあったし」

「ん~~。あとで考えます。それよりも、こんなにお店があるんですね」

 キラキラとした目で、カナリアがジャッジを見つめてきた。

「……いつもはもっと少ないぞ。なんていうか、出店もあるし。あれはPCで店だな。そっちがNPCの出店」

「どこで分かるんですか!?」

「出してる品物。NPCの場合は土地独特の料理が多い。PCの場合は……日本人がやると、本当に縁日でやってる出店になる」

「ふわぁぁぁ! 綿菓子もやってますよ! それからクレープ! あっちはなんですか!?」

「ホットドック。アメリカサーバーのやつがやってるな」

「海外の方もやってるんですか!?」

「逆に日本よりメジャーな国もあるぞ。特に舞踏会クエストのためだけにやってる人も多いくらいだ。レットの本拠地があるシュトルーム大陸はどちらかというと、欧米よりの文化になっていて、四月から七月まで社交シーズンなんだ。その間舞踏会はかなり多い。だからこっちが十月に舞踏会クエストをやっているって説もあるくらいだ」

「へぇぇぇ」

 ぴょこぴょこと動くカナリアの耳が、「見て回りたい」と訴えている。

「店、見て回るか?」

「いいんですか?」

 そんな顔をしていたら、駄目とは言えないだろう。それは言わずに頷くだけにしておく。


 服屋に入り、カナリアが好みそうな服に着替えると、既に「ウサミミ嬢キターーー」と掲示板に書かれていた。

 着替えて早々に店を出て少し歩くと、ラーメンの屋台があった。

「ジャッジさんっ! あそこ椅子があります!」

「あぁ。あそこで食べてくんだ」

 とてとてとそちらの方向にカナリアの足が向いていく。

「行きたいか?」

「はいっ。外で食べることってなかったので」

 いや、毎回外で食べてるだろう、という突っ込みはしないでおいた。おそらくこういった店が珍しいだけなのだろう。

「お。クルツの店だったか」

「ジャッジいらっしゃ……って、ウサミミ嬢!? ジャッジグッジョブ!!」

 ラーメンをゆでていたドワーフの男、クルツの言葉に踵を返したくなった。

「ジャッジさん! ラーメンが固まってません!」

「は!?」

 その場にいた全員が驚いてカナリアを見つめて来たが、それにカナリアは気付いていないようだった。

「ラーメンって固まってて、お湯を入れないとほぐれないんじゃ……」

「それインスタントラーメンだよ、ウサミミちゃん。これは生ラーメン。今までどんな生活を送ってたの? ……ジャッジが睨むから聞かないでおくよ。

 似たようなやつ開発するのに、時間かかったんだ。食べてってよ」

「……二つ貰う」

 椅子を空けてもらい、カナリアとともに座る。このずれた会話は、生活がおかしかったからだと今なら分かる。

 だったら、少しでも現実で味わえなかったものを与えてやりたい。


 出されたラーメンを見て「早いです!」とはしゃぐカナリアは、微笑ましく移るのだろう。

「おいしい!!」

「そいつはよかった」

 クルツも笑ってみているが、どうしたものか食べるのが遅い。

「……むぅ。減りません。魔法ですか?」

「はははっ。のびてるんだよ、ゆっくり食ってっから。こういうのは素早く食べるのがいいんだ。また店見つけたらおいでよ。だから味わわずに……」

「……ジャッジさん……」

「ん。残りは俺が食べるからいいよ」

「すみません」

 どうやらのびているうちに満腹になってしまったらしい。残りを貰って食べた。

「……クルツ、リアルに作るのいいが、時間が経つとのびるのだけは止めとけ」

 差し出し、食べさせるとクルツも頷いていた。


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