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現実世界にて<女帝の忠告>



 無理のないようにと、リハビリは進められる。怖がると悪いという理由から、美玖がVR用カプセルを使う時は保がいてくれるようになった。

 それ以外の時間は一緒にいたり、別々に行動したりと色々だ。

「美玖」

 保が優しく抱きしめ、額と額を合わせる。この行為が何を示すのか、美玖には分からなかった。

「ん? 理性飛ばさないように? 代償行為?」

 聞けば疑問形で返された。

「あのね。俺は男だよ? 好きな女性()がいて、欲求がないわけじゃないし。そのあたりは察するか、聞かないで欲しい」

「……分かりました」

 よく分からないが聞かないほうがいいらしい、そう判断した美玖は素直に甘えた。

 保は「甘えていい。頼ってもらえた方が嬉しい」と美玖に言ってくれた。それに対して遠慮したのだが、寂しそうにした保を見て、甘えるようにしている。



 ……ただ、美玖は甘え方や限度というものが分からない。ひたすら依存に近い甘えになってきており、それを保は容認している。

 それに気付いた昌代は、ため息をついた。

「美玖よ。甘えることと依存することは違うぞ。お主はそれをはき違え、保はそれを容認しすぎじゃ」

「依存、ですか?」

「左様。依存してしまえば保がおらぬ時お主はどうするつもりじゃ? いつも保がおるわけではない。……今のようにな」

 保は納品のため出かけているのだ。そこを狙わないとこういう話が出来ないというくらいに、保の過保護ぶりは目に余る。……保のほうは孝道と良平に頼んだが。

「男としては頼られるのはやぶさかではないであろうの。しかも思いを寄せた相手じゃ。しかし、何事も過ぎたるは毒となる」

「毒、ですか?」

「此度の毒は、甘美でゆっくりと回る毒じゃ。ただ、やっと以前の毒から抜けてきたお主には、あっという間に回ってしまうぞ」

 以前の毒。その言い方に美玖は驚いていた。

「お主は二度と両親、それから父方の親族には会わずともよい。虐待という名の毒、それから全てを否定する毒、そして、操る毒。それがお主の身に回っておった毒じゃ」

「ぎゃく……たい」

「左様。あれを虐待と呼ばずに何と呼ぶ」

 驚く美玖に昌代はきつい言葉だけを投げかける。

「はい、あれは躾ではございません。虐待です」

 遠山がにこりと笑って肯定する。

「しかも十数年に渡る虐待。美玖さんにはなんの落ち度もありません。自分が不器用だととか、何も出来ないとかはありません。成績表を見る限り、家庭科も実技を含めて上の中位です。それから、リハビリがてら作っていただいた、昌代様の眼鏡用チェーンですが、細部にまで拘っております。かようなもの、我々も見たことはありませんよ」

 それすらも、VRMMOで職人スキルを磨いたからだと、美玖は言う。

「お主の頭のつくりはどうなっておるのじゃ? ああいうものは元からのセンスとやらと、器用さがなければ数ヶ月で作れるものではないぞ? いい例が保であろ。お主より前からやっておるのに、そういったものは全く作れないではないか。他のゲームでは名うての職人でもある。それなのに、あのゲームだけは傭兵という扱いのみじゃ」

「でも、教え方が丁寧でした」

「ふむ。それも教えられる側もよくなくば、終わりじゃ。お主のよさもあり、そして保のよさもあったのであろうの」

 どこまでも否定され続けた少女に、この言葉がどこまで届くか昌代とて分からない。


 それでも、傷を全て癒せなくとも、一人で歩けるようにするには語りかける以外、道はないのだ。


砂○け婆様……敵には容赦しませんが、弱い人には優しく厳しい方です。


保が婆様に遠慮無しなので、婆様も遠慮してません。美玖を押し倒そうものなら、すぐに乱入しますw保曰く、「地獄耳と千里眼」持ちです。

それを聞いた禰宜田家の面々は何もいえなかったとか。

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