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舞踏会クエストの準備


 現状、「TabTapS!」に毎日ログインしているのは、ジャスティスとディスカスだ。

 ジャスティスはまずギルド本拠地でカナリアの現状を話し、そのあとジャスティスの作業場に行く。そこで毎年十月前半にやる舞踏会クエスト用のドレスやブラックスーツを作っていくのだ。


 毎度、舞踏会クエストの時にディスカスとスカーレットの意見は尊重している。

 スカーレットは女性という点において、そして、ディスカスは現実世界ではアパレルショップの店長なのだ。そしてディスカスの弟が美容師。流行に敏感でそしてセンスもいい。

 本来ならば、今回はこの二人にカナリアも含めたいところだった。


「今回はある意味助かる。カナリアの作ったアクセサリーありきだからな」

「俺はかなり大変だぞ。予定枚数よりも十着も多いんだ」

 何せ「カムエル」はAIも一緒に行く。そして、本拠地に残るメンバーは誰一人いない。

「お待たせ」

 スカーレットが久方ぶりにやって来た。取調べがひと段落ついたのだろう。

「お疲れ」

「……うん」

 ディスカスの言葉に、不機嫌そうにスカーレットが答える。かなり腹が立っているのだろう。

「とりあえずカナリアも復帰できるものとして作ることにしてある。で、これがカナリア用」

 ふんわりとした、カナリアのイメージにぴったりと合うドレスだった。

「えぇぇぇ!? 何でぇ? ウサミミとカナリアちゃんの可愛らしさはいかされるけど、あの綺麗な足が全くいかされない!」

「阿呆! ドレスコードを考えれば、これが限界だ!! 舞踏会だぞ!? 普通はイブニングドレスになるんだ!」

 ジャスティスにはその辺りがよく分からない。毎年ブラックスーツを作らされているが、どこがどう違うと聞きたくなるときもある。毎年多少の流行やらブラックでなく少し色を入れてみろとか言われるが。

「ちえっ。つまらん」

「で、カナリアがお前のアクセサリー類を竜鱗で薔薇をモチーフにしてくれたから、こんな感じで」

 胸元には布で薔薇をかたどり、すらっとしたスカーレットのスタイルを生かすシルエット。

「今回は赤いドレスじゃないのか」

 いつも名前のとおり赤い服を着ているスカーレットからすれば、不服と言ったところだろう。

「カナリアの発想力を生かすのが最優先だろうが」

「まぁね。そういえば、カナリアちゃん。『服にも天然石の小石をちりばめても綺麗ですよね』って言ってたっけ」

「それを早く言えっ!確か淡い赤の鉱石があったよな?」

 目を見開き、ディスカスが唐突に言い出した。

「ある。染色用にこれから乳鉢で粉末にする」

「ビーズ並みの粒でいい。砕いて、エンチャントで薔薇のところにだけ少しつけろ。そこだけが淡い赤で他の場所に竜鱗の粉をつける。だと少しばかり色合いがかわっていい感じになる!」

「……特許取っておくか」

「そうしておけ。お前とカナリアでな」

 そのあと、他のメンバーの服も決まっていく。AIのアクセサリーはまだないが、布地のお披露目としてはまずまずだ。

「布地作成に入るから、出てけ」

 そう言って二人を追い出し、ジャスティスは一心不乱に布地を織り始めた。


 カナリアが戻ってきた時に誇れるように。



「TabTapS!」は現実世界で十月から三月までイベントが多いのが特徴だ。


 まずは十月前半の舞踏会クエスト。いかに多い日数に出るかというのも競われるポイントであるが、今回は全員で一日だけにしてある。

 十月後半はハロウィンイベントがあり、十一月は収穫イベント。十二月は言わずもがな、クリスマス。一月は正月に何故か百人一首のカルタ集めイベント。二月は節分とヴァレンタインイベント。三月が桃の節句イベントにホワイトデーイベント。

 これこそまさに、というのがファンの言い分でもある。……受験生には泣けるイベントスケジュールであるが。


 出来ればカナリアにこの怒涛イベントを体験して欲しかったと、ジャスティスは思った。


ディスカス、最近あまり出番がないのは一人他県住まいのせいです。


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