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妙な体験談

作者: dai

とある都市伝説をモチーフとしていますが、実際の出来事とは関係ありません。作者はそう信じています。

 これは俺が大学生だった頃の話だ。ある朝起きると、俺は見知らぬ部屋に居た。…いや、全く見知らぬ部屋という訳ではなかったのだが、明らかに様子が違っていた。部屋中に鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ましたときにまず見えた天井はいつも通りの白。視界の端に入った壁もいつも通りのベージュ。それから数秒ほど後に違和感を感じた。後ろ側を見ると、いつもの場所に目覚まし時計があった。…聞き慣れない音を響かせる、自分が持っているはずのない型の目覚まし時計が。

 妙な出来事で一気に目が冴えた。まず目覚まし時計を止め、体を起こして部屋の中を見渡す。昨日までとは部屋に置いてある物も配置もかなり変わっている。置いてある物に関しては、型番とかが違うだけで大体昨日まであった物と変わらないようだった。次に部屋のカーテンを開けて外を見てみた。外を見て驚いたと言うのか絶望したというのか…昨日までとは景色が変わっていた。近くの家の雰囲気が完全に変わっていたり、遠くにあるはずの山が無かったり…。

 これは壮大なドッキリか?それとも俺の頭、それも記憶を扱う部分がおかしくなったのか?それとも、俺が今居る世界、そもそもそれが…。

 暫く色々と考えた後、どうしようもないという気分になった。とはいえ腹は空くわけで、朝飯の用意を始めることにした。部屋に常備食があった筈だと思って探してみると、それっぽい物を発見した。見慣れないブランドではあったが、『栄養食』みたいな事が書いてあったのでテーブルに出して食った。朝飯を食った後、今居る部屋の状態を掴むために色々部屋の物を漁ることにした。ついでにBGM代わりにテレビを付けた。テレビのリモコンのボタン配置も何か違和感を感じたが、あまり迷わずに電源を入れることができた。

 物を漁って、何となく惹かれるタイトルの本を開いた時にふと気づいた。ここではあらゆる文章がなんか変だ。例えるならば『私はいつも朝には食事を摂る。』が『私は毎旦後には食べ物をを取り込む。』と書き換えられたように、普段使わない表現が盛り込まれていたり、全く聞いたことのない単語がふと現れたり。本の内容も、テレビの話も、どちらも。物を漁り続けたところ、携帯電話を見つけた。俺が持ってるはずのない機種の物だった。契約会社も知らない会社だった。まず、少々苦戦しながらも電話帳を開いた。これを見れば、恐らくこれの持ち主がどのような人と関係を持っているかが分かるはずだと思ったのだ。電話帳を見てみると、自分の家族の名前、知っている高校以前の知り合い、大学の知り合いの名前があった。知らない名前があったり、相当親しかった筈の友人の名前が抜け落ちたりはしていたが、それ以外は昨日までの携帯電話とほぼ同じだった。

 更に物を探してみると、布団の中で妙な物を見つけた。クシャクシャの紙で、開いてみると印と文字が書かれていることが分かった。印は六芒星というのだろうか、そんな感じの物で、文字は確か『厭きし』みたいな感じだった。

 少々物漁りに飽きてきたところで外に出ることにした。物漁りの最中でキーホルダーにつながれた部屋の物らしき鍵が見つかったので、それと携帯電話を持って行って出ようと思ったわけだ。部屋の外に出て、まずは部屋がある建物を調べてみる。2階建て、各階4部屋。雰囲気も昨日までとは変わっていなかった。次にその周りの建物を調べてみる。昨日までと同じ位置に同じ建物がある所もあるが、別の建物が建っていたり、敷地の形がそもそも違う所もあった。

 周囲の状況を見ていると、よく一緒に遊んでいる友人が俺を見つけて話しかけてきた。「今日は休みだからどっかに遊びに行かない?」という感じの内容だった。勿論意訳だ。で、それに対していつもの口調で「悪い、今よく分からない事に巻き込まれてるからまた今度な。」と答えると、友人は妙な顔をした。俺の口調が妙だったかららしい。

 それで、友人を部屋に招き入れて、今日起こった事と妙な状況について話した。朝起きたら部屋の様子がおかしかったこと。外の様子もおかしかったこと。日本語の文法や単語に違和感を感じたこと。携帯電話の電話帳の登録相手が妙なことになっていた事。俺が話してる始終友人はその最中何かを考えてたようだった。俺が話を終えた後、友人から幾つかのことを話された。平行世界が存在するという説があること。平行世界といってもファンタジー世界のような物ばかりではなくさほど変わらない世界があると言われること。そして今の俺は今日になってこちらの世界に飛ばされた別世界の俺である可能性が高いこと。その証拠に、昨日までのこの世界の俺はそういった系統の事に熱を上げていて、一方俺はそういうことに全く意識を向けていなかったこと…。

 友人に「どうやったら元の世界に戻れると思う?」と聞いたところ「知らない」という答えが返ってきた。だろうな。

それから暫く話をして、友人が帰った後、部屋の片隅にあったノートパソコンをインターネットにつないで、色々調べてみた訳だ。すると幾つか興味深い情報を見つけられた。だが結局『異世界に飛ばされてから元の世界に戻る方法』というのは自力では難しいらしい。特に、『特定の場所がゲートになってた時』とか『おっさんが連れ戻してくれるパターン』とは違って、元々こっちの世界に居た俺が使った方法は特にそういうのが難しいようだった。


 結局俺は普通の会社員になった今も、元の世界には戻れていない。たまに元の世界が懐かしくなったりはするけれども、こっちの世界に慣れてしまったし戻るのも難しそうだしその辺りは考えていない。人間関係にも慣れたし、こんな感じで殆ど違和感のない文章を書けるくらいになってしまっているし、こっちでの生活もそう悪くないと思っているし。

 この文章で、当時の俺の感覚を掴みやすくするためにテレビの辺りの例文は元居た世界での書き方と今の世界の書き方を逆にしている。そのせいで現状を掴むのに時間が掛かったりしたらごめん。

 それじゃあ今日も会社に行ってくる。元の世界では土日出勤、一晩残業とか当たり前とか聞いたことがある辺り、こっちに来て良かったように思うこともたまに有ったりするんだよな…まあ、この話に関しては別にいいか。

どんでん返しになった…のか?

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