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箱庭の少年  作者: 木乃羅
第四章 ???
63/69

4-3 色々と微妙なのです

 サングィス国、第六王子さまの視点と別の視点が入ります。

 会話文が多い…。

 国営商店街の道をあるく二人の男性。庶民的な装いをしているが二人とも質の良い生地を使用している辺り、商店街の住民たちに身分の高い人のお忍びとすぐにばれている。


「勝手に城を出てもいいんスかねぇ~。」

「……(無言)」

「おぅじぃ~さぁ~ま、どこに行くのですか?」

「やかましいっ!その名で呼ぶな、チンピラもどき!」

「えぇ~、それじゃあ…ごく潰し。」

「貴様、このオレに喧嘩売っているのか。」

「いや~ん、様って呼ばれちゃったぁ~。」

「…ぶっ殺す。」

「うわっ!タンマタンマ。こんな往来で、剣を振り回さないで下さいよっ。」

「チンピラもどきを成敗してやるだけだ!世の為になるぞっ。」

「ちょっ、シャレにならないって!落ち着いて下さいよぉー、謝りますからー。」

「ふんっ!さっさと、自分の非を認めればいいんだ。」

「はいはい、まったく。余裕がないのだから、少しは心に余裕を持った方がいいですよ?」

「今の状況で持てると思うのか?」

「…持てたら凄いですよねぇ?」

「「……はぁ~~~。」」


 二人の男達は深いため息を吐くと露店で売っていた飲み物を購入して、近くのベンチに座る。


「このまま、ドコかに逃走したくなるよなぁ。」

「あー、それもいいですねぇ。でも、即効消されますよ?」

「消されるだけならいいが、最悪の場合は身に覚えの無い罪状を作られて指名手配にされそうだがな。」

「賞金首ですか?」

「ケチな国が金を出すはずがないだろう。消した後にでっち上げて、誰かの功績扱いになるだけさ。」

「うわぁ~、夢も希望もありませんねぇ。」

「ハッ!六男坊の末路なんてそんなものだろうさ。」

「そうですよねぇ~。三男坊ですら実家では肩身が狭くて居心地悪いのに、六男坊ですからねぇ。」

「あぁ、バカ過ぎても賢すぎてもダメ。程々で、従順なおツムの軽い駒にならなければ、生きていられない。はぁ、何を楽しみに生きろというのか。」

「男の人生の楽しみといえば、酒に博打に女ですかね?」

「酒と一緒に毒を飲まされ、博打をすればカモにされ、女を抱けば刃物で刺される…と、なかなか刺激的な楽しみ方だな。」

「うわぁ~、全力で後ろ向き発想だけど、ありえそうなところがなおイヤですねぇ。」

「高確率で起こりそうだがな。」

「いっそのこと、一つ上のお兄さんのようにハッチャケるのは?」

「精神的に病んで廃人と化し、城の片隅で薬草や香草を育てては生活費にしている…あの兄のようになりたいのか?」

「それは、それで平和そうですけど?」

「…有事の際には“毒草を作り、犯罪未遂の首謀者”候補扱いになっているが?」

「えっ?!マジですか。」

「与太話なら幸せなのだが、決定事項だな。その為に今も城の片隅で飼われているのだから間違いないだろう。」

「うわぁ、えげつねぇ。」

「あの一族に所属しているということは、そういう捨て駒にされる為に飼われているのと一緒さ。逃げようにも逃げられないし、逆らうには相手が悪すぎる。」

「知らなければ幸せでしょうけど、察してしまう貴方も不憫ですねぇ。」

「チッ、人事のように言うがお前も一蓮托生なのだからなっ。」

「あー、俺の方は別にいいスよ?一度、失っているハズの命ですからねぇ。それに貴方のそばに居るのは楽だし、面白いですから。」

「…いい事を言っているつもりか?」

「えー、スッゴクいい事を言っていませんかぁ~。これぞ従者の鏡!」

「割れてしまえ。」


**** 監視者たち ****


 二人の男性を密かに監視しながら、護衛もこなしていたラント国所属の兵士は彼らの話を録音しながらも同情していた。

「(なんか、不憫すぎるのですが…)」

「(人族の王族だからこその話なのか、サングィス国特有なのかが判別しにくいが…哀れとしか表現しようがないな。)」

「(まぁ、所詮はよその王族の事ですから。私たちは職務をまっとうするだけですよ。)」

「(確かに…。それにヤツラの目的も不明なのだから、気を抜くなよ。)」

「「「(了解です)」」」

 物陰に隠れている者や庶民に扮する者たちから特別仕様の通信機を使用して小声でやり取りしつつも周囲をきちんと警戒しているのはさすがだろう。


**** ****


「それで、これからどうするのですか?」

 飲み干したジュースの入れ物を露店に返却し、連れ合いに声をかける。


「護身用のものを手に入れるつもりだ。持参したものはどうせ使えないだろう。」

 ベンチから立ち上がると大きく伸びをしながら答え、懐から小さな袋を取り出した。


「おぅ~じぃ、よぉ。どこから盗ってきたのですか?貴方に小遣いなどと気のきいたものは存在しないはずですよ。」

 小ばかにしたような呼びかけと共に目元を手で覆いながら嘆くフリをする従者に、

「人聞きの悪いことを言うなっ!チンピラもどき。」

身元バレしている第六王子は蹴りをかます。


「イタッ!…しかし、マジでどうしたんですか、そのお金は?」


「地道に稼いだに決まっているだろう。何のために城を小まめに抜け出していると思っているんだ、お前は。」


 蹴られた部位をさすりながら執拗に聞いてくる従者に憮然としながら答える。

 六男とはいえ、王族の一員である。必要なものは経費として物が準備されるために、個人で自由にできる金銭は驚くほど少ない。

 そんな彼が武器を購入できるほどの金銭をもっているのである。従者は思わず、国庫から無断で持ってきたのかと疑ったのだ。


「へぇ~以外ですねぇ。それにしてもアノ国で身分を隠しながらとはいえ、よく稼げましたね。」


 感心する従者と対照的に暗く沈みこむ王子様。


「必要だったとはいえ。酒場での給仕はもうイヤだ…。」


 身分を隠すためと短時間で稼ぎの良い仕事として彼が選んだ職種は酒場での“女性給仕”だった。元が中性的な顔と華奢な体型だったこともあり、化粧と服装だけで女性とみられ、言動を注意することにより、違和感すらなくなった。そんな彼の給仕姿は酒飲み連中だけでなく、他のおばちゃん連中にも気に入られるくらい可愛らしいと評判だったらしい。


「給仕ねぇ。いっそのこと、性転換してみますか?もてますよ。」

「貴様っ!その厚いツラの皮を剥いだ後に去勢してやろうかっ!」

「エグイことを大声で言わないで下さいよ、ごく潰しさま。」

「よぉ~し、いい度胸だ。俺の従者らしく主人より先に逝ってもらおうかぁ~。」

「あ、は、は、は、…じゃれていると時間がなくなりますよ、ご主人様?」

「けっ、可愛くもなんとも無い。それどころか、おぞましく感じる台詞だな。」

「ひどっ!!」


**** 監視者たち ****


「(結構、仲の良い主従ですねぇ)」

「(第五王子の時とはかなり違うようだな)」

「(前回は真正のアホだったからなぁ)」

「(護衛連中は微妙ですけど?)」

「(いやいや、武芸に関しては今回の方がかなり上等の部類だぞ。性格はかなり難有りだけどなぁ)」

「(じゃあ、これからが大変という事ですか?)」

「(多分なぁ)」


**** ****


 とある武器屋にて、一人の男が現実に打ちのめされ床に崩れ落ちていた。


「オレの稼ぎでは無理だとぉ~(愕然)」

「まぁ、元々武器などの装備品は高いですからねぇ。しかも!サングィス国の貨幣は他国よりも価値が低いですから…ご愁傷さまです。」

「くぅ~っ(泣)」

「しかし、店主さん。なんで、ダガーナイフよりも料理用の小刀の方が高いんだ?」

「あぁ、それは簡単な理由だよ。この国で狩れる獲物でダガーナイフが通用するようなのはいないからさ。小刀は街中で普通に使えるし、獲物の剥ぎ取りもこっちの方がやりやすい。」

「だが、折れないか?こんな細い刃渡りでは。」

「兄さんたちは他国のおヒトかい?この国の小刀は大半、魔工術式により様々な強化や効果が施されているのが当たり前さ。だから、ダガーナイフよりも性能がいい。」

「へぇ~、その分値段も高いと。」

「そういうことさ。そっちの兄さんもサングィス国の貨幣だと普通に買い物も難しいだろうから、探求者ギルドで両替をしてもらった方がいいぞ。」

「親切な店主よ。重ね重ね申し訳ないが、探求者登録をしていないものでも両替はしてもらえるのだろうか。」

 現実に打ちのめされた第六王子がようやく復活して獣人族の店主に訊ねる。


 王族としての矜持など元から無い彼は、相手が多種族であろうと親切にしてくれた相手に対して礼儀を忘れるような無礼はしなかった。


「あぁ、大丈夫だよ。あそこは、協会のギルドでもあるからな。協会の通貨であれば、どの国の商人でも扱ってくれる。それにサングィス国の貨幣は、俺たち獣人系の商人にとって扱い難いからなぁ。」

「あ~、確かに。」

「護身用は諦めて、何かアイテムでも買うしかないか…。」

「兄さんたち、安くて性能の良さそうなアイテム類なら“国営商店街”で購入した方がお得だぞ。」

「???」

「店主さんよ、おススメする理由は?」

「稀なる異国のおヒトたちだ。少しでも、この国に好感を持って帰って欲しいだけさ。後はそっちのお兄さんがあまりにも気の毒すぎてなぁ~。」

「あー、気を使ってもらって悪いな。彼は不幸の星の下に生れ落ちたような奴だから。」

 従者の言葉に無言で睨みつける第六王子。

 そんな彼らを仲の良い友人同士と見た店主は笑いながら教える。

「あそこは“趣味人の集いの場”だからなぁ。利益度外視の物を格安で売ってくれるが、購入の際にはきちんと説明を聞いてからにしろよ。何せ、面白い事が大好きな連中ばかりだから、たまにとんでもない物を売っている場合があるから。」

「例えば?」

「踊るガイコツ人形や男の夢を粉砕する老婆の水着写真など。」

「店主さん、最後の水着写真は詐欺じゃないのか。」

「くぅ~っ、兄さんもそう思うだろう!だがな、売り文句に“ありとあらゆるコアな趣味に応対します”とある限り、詐欺とは言い難い品物なんだ。」

「いやいや、それでも年齢層の幅が広すぎるだろう!」

「だがな、兄さん。その水着写真の入った袋には…“夢を超える熟女の媚態”と書かれているんだ。これは、ついつい手が出ちまうだろう?」

「出るな!そんなバカな…と思いつつも一縷の望みを抱いて購入してしまう。男の悲しい性を利用した悪質な商品だぁーーーー。」

「おぉ~、理解してくるか!!」

「もちろんだとも!!」

 熱く手を握り締めあう店主と従者に物凄い冷めた目線を送る第六王子。彼は心からの一言をポツリとこぼす。

「バカが増殖した…」


**** 監視者たち ****


「(くぅ~、ここにも同士が被害にあっていたのかぁー)」

「(あぁ、オレも購入してガックリと打ちのめされたよぉ~)」

「(…バカですか、貴方たちは)」

「(まぁ、ヒトの心理を付いた商品ではあるがな。一応、商品心理調査の一環として行われたものだから単価自体は安いぞ)」

「(ま、まさか。アレは王城連中の実験だったのですか!)」

「(うむ、なかなか良いデータが取れたと魔技師たちが喜んでいたぞ)」

「「(ノオオオォォォーーーーーッ)」」

「(…ボソ…でも、ワビの品はなかなかのモノだった…)」

「(……変態)」


**** ****

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