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箱庭の少年  作者: 木乃羅
第四章 ???
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4-2 嫌われ者がやって来た

本日、2話目です。


文章途中にてBL(妄想)発言がされます。

不快に思われる方は流し読みを推奨させて頂きます。


 平穏な日常を乱す来客がサングィス国から訪れた。


 かつて色々な問題を起こした第五王子に代わり、今度は第六王子が数名の護衛と共に“魔の森”への襲撃問題に対しての釈明をしに来たというのが、訪問理由である。


「ふっ、こりない連中だなぁ。」


 王の執務室には様々な部署から上がってきた情報を取りまとめた書類が置いてあり、それを速読したジンは嘲るようにつぶやいた。


「まぁ、バカなのは確かでしょう。」


 インテグリダーの言葉に王であるエスタも頷く。

 第六王子はその上の兄よりも幾分かはマシなだけであり、基本は人族至上主義な考えのためか既に問題をいくつか起こしている。


「はぁ、ここは国営商店街所属の“躾の仕方研究会”と“紙一重研究会”に暗躍してもらうか?」


「魅力的な提案ではありますが、無理でしょう。」


「どうしてだ?」


「王子の周囲にいる護衛たちが前回よりもかなりまともで優秀だからですよ。」


「ちっ、下手するとこちらのシッポを掴まれかねないかぁ。」


「ふむ。いっその事ですが、蒼溟くんを接待役にしてしまいましょうか。」


 インテグリダーの発言にジンとエスタが怪訝な顔をする。


「一応、王族扱いですし姫様方の婿候補にして異邦人である蒼溟くんなら身分的な問題は解決します。一般常識は身に付けていますし、仮に奇想天外な言動をしたとしても彼ならば“異邦人ゆえに”という理由で事は収まるでしょう。」


「それだと、保護と教育をしたうちの国が問題にならんか?」


「大丈夫ですよ。それ以上の問題児を送り込んだサングィス国のバカ共を黙らせることくらいは出来ますから。後は、殺害さえさせなければ問題はないでしょう。」


「あー、確かに。簡略訪問とはいえ、国賓として受け入れた客を死なせては外交問題に発展するかぁ。」


「まぁ、それを狙ったとしてもさせませんけどね。」


「(なんか、インテグリダーが不気味な笑みを浮かべているが…)」


「(そこは見なかったことにするんだ。エスタもとばっちりは喰いたくないだろう?)」


「(確かに…)」


「お二方とも、何かおっしゃりましたかね?」


「「いいえ、何も…」」

 慌てて首を横に振るジンとエスタ。


「だが、インテグリダー。お前は大事なことを一つだけ忘れているぞ。」


 ジンの言葉に怪訝な表情を見せる彼に心当たりは無いらしい。


「蒼溟はこの国のことをよく知らない。」


 その言葉にエスタとインテグリダーはようやく気付く。

 あまりにも周囲に馴染み過ぎて忘れていたが、蒼溟はこちらに来て一年未満であり、国の歴史はおろか、周辺諸国の事情や王侯貴族のことも知らない。


「すっかり忘れていたなぁ。」


 エスタの言葉にインテグリダーは珍しく地味に落ち込んでいた。


「宰相補佐の私が、頭脳職であるはずなのに…。そんな基本的なことを忘却するなど、なんたる不覚。」


「あ~、そうだな。そうやって考えてやると、今の蒼溟の状況は異常だよなぁ~。」


 ジンの言葉に更なる追い討ちをされたインテグリダーは

「ふっふっふっ、有望な人材は早急に確保するのは当然…。所詮、変人共が集う国なのだ。いまさら奇行の十や百…、気にしたら負けだ!」

と小声で自己弁護をはかり始めていた。



◇ ◇ ◇



「はぁ~~。それで、貧乏クジは私に回ってくるのですね。」


「陰気なため息はやめて下さい、リベルター様。」


 結局、お鉢が回ったのがジンの息子であり、蒼溟の義理の兄であり、宮廷魔技師筆頭の師団長という要職についているリベルターだった。


「それで、トラブルメーカーなバカは何処に逃走中ですか?」


「追跡組の報告では、随行者の一人と行動を共にしているそうです。他の自称・護衛のサングィス兵たちはのん気に部屋でお茶していますよ。」


「ほぅ、私たちにバカを探させておきながら自分たちは寛ぎ中ですか…。」


「(毒を)盛りますか?」


「いえいえ、そんな事をして外交問題にされたら面倒ですから。ここは、“禁断の愛後援会”の皆様のお力を借りて共同風呂を貸し切り状態にしましょう。」


「新たなる扉が開かれる…と?」


「人生が実り豊かなものになるかも?しれませんよ。」


 私は当然ながら、断固拒否させて頂きますけどね…と続けるリベルターに勤務中の部下たちが失笑する。


「リベルター様!それなら是非とも方術師メディシーナ様の新薬を投入いたしましょう!」


 勢い込む女性魔技師に胡乱(うろん)な目線を送りながら、念のためにリベルターはどんな効果があるのか聞いてみた。


「体力増進剤と聞いております!(まぁ、それを目指して出来た精力増強剤ですけどね☆)」


 彼女の周りにいる女性陣がコソコソと内緒話をするが、その内容は…

「いや~ん、耽美の世界が展開されるのね!」

「肉体美に溢れる兵士とひ弱なサングィスの兵士による禁断の愛~萌えるわっ!」

「いえいえ、そこはサングィス(攻)のラント(受)で無理矢理とか?!」

「違うわよ。その逆でラント(攻)のサングィス(受)の躾プレイよっ!」

「うわぁ~どれも必見よねぇ~。」

「策を完全なモノとするためにも貸し切りの際に幻惑魔術を施行する?」

「「「いいわねぇ!!」」」

 あえて性別に関しては言及していないが、リベルターを筆頭に男性部下数名が悪寒と冷や汗を流し、その不穏な会話を聞かなかったことにした。


「コホン。それでは、各々のシュミの為にもお仕事を続けますかね。」


「「「「「了解っ!!」」」」」


 愛国心よりも自分たちの趣味を優先する部下たちにリベルターは内心で思う。

( 好きなモノを肯定して語りあえる仲間のいるこの国の環境を守るためならば、きっと兵士だけに限らず国民や領内に居る他の種族も一丸となって邪魔を排除するのでしょうねぇ。 )

 それが頼もしいのか、恐ろしいのか微妙な感じがしてリベルターは天井をボンヤリと見つめてしまう。


( まぁ、確かなのはこの国を治めようと考えること自体が無茶なのでしょうね。 )


 どんな思惑があるのか、嫌われても懲りずに来訪するサングィスのお莫迦さんたちの末路を想像したリベルターは…ニヤリと黒い笑みを浮かべる。


「まぁ、愉しませてもらいましょうかね。」


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