3-15 国が国なら、その王様は…
明けましておめでとうございます!
皆様にとって、よき年になりますように… (=人=)~♪
第一王女、レイルの視点から。
今日は珍しくお父様からの呼び出しを受けた。
うちの家族は王族にして珍しいくらい仲が良い。この国自体が特殊であるとしても様々な利権や思惑から血縁と言っても他人よりも信頼できない関係になっても不思議ではないのだけれど。特に王位継承権などが絡むと余計にだろう。
お父様の実子は、私を含めて異母妹二人の三姉妹である。男児にしか王位が継げない国ならば、他の王族か私たちの夫となるヒトが次期国王になる。けれども、この国では特殊な方法で王様を決めるのでその心配は無い。それどころか、私たち王族も厳密には血縁関係でなくても構わない…。他所の国史を習った時には色々と驚いたものである。
「これは、これは…レイル様が王城におられるとは、珍しいことですなぁ。」
王城内の廊下を歩いていると横から貴族らしき男性に声をかけられた。きらびやかな装飾過多な装いから、どうでも良い人物と判断する。
「ふん。これだから、何処の馬の骨か分からない女の子供は勘違いして困る。」
無視して通り過ぎると小さな声で、しかし私の耳に届くように嫌味を言われる。幼少の頃から一部の貴族連中によく思われていないことを理解しているので、怒ることなく無視を貫く。私の態度に忌々しそうな表情をした後、その貴族の男性はどこかに立ち去っていった。
ここで少し、私の家族について話そう。
この国の王であるお父様には、二人の王妃がいる。正室と側室ではなく、第一王妃と第二王妃と呼ばれ、身分的な差異は無いとされている。第一王妃となった私の実母とお父様は恋愛関係の結果、無理矢理の承認によるもの。表向きは政略結婚である第二王妃様とお父様の関係は幼少時からの腐れ縁だったりする。
これだけだと、歪な三角関係による泥沼になりそうだけど、お母様同士が意気投合して実の姉妹以上の親密関係になり、弾き飛ばされたのはお父様の方だったりする。第一と第二を決める時も、年齢が上だからという理由で第二王妃様がごり押しで承認させてしまった。
母親同士の仲が良いので、娘である私たちも仲良しである。だけど、王族としての公務は末の妹に任せきりである。私は適性がないから、すぐ下の妹は虚弱体質から、後は諸事情によるものである。申し訳ないと思うが末の妹は朗らかに笑って許してくれる。優しい娘だ。
せめて、彼女の負担が少しでも減るように影から力を貸すようにはしているが、どこまで助力になっているのか分からない。私ができる事なら、姉としても王族の一員としても協力は一切、惜しむ気はない。
「あれ?レイルも王様に用事なの。」
考え事をしていた私を現実に戻したのは、友人になったばかりの蒼溟だった。
不思議そうな表情で気軽に声をかけてくれる存在に、無意識に落ち込み始めた気分が浮上するのを感じる。
「やぁ。ワタシは呼び出しを受けて来たんだ。蒼溟は、こんな所でどうしたのだい?」
「僕も突然の事でよく分からない。」
そう言って、簡単に事情を話してくれた。
「共同開発したアイテムに関しては、興味本位からだと思うけど…。」
お父様のことだから、イタズラに使えないか悪巧みしていることだろう。インテグリダー様の方は、悪用されないかどうかの実証検分の報告書を渡してあるから、開発した魔工術式の製図が転用されないかの立証説明を開発者自ら説明するように…という意味だろう。
「蒼溟は、薬学の知識も持っていたのか?」
「うん、一応ね。姉さん達の一人から実践付きで教わっていたの。」
実践付き?…臨床実験でもしていたのだろうか。
蒼溟と他愛ない会話を楽しみながらお父様の執務室へと向かう。そんな二人の後ろをジンが微笑みながら付いていくのであった。
◇ ◇ ◇
お父様の執務室の前には、護衛兵たちがきちんと仕事をしていた。平和な国の破天荒な王の下であっても忠実に職務を果たそうとする彼らにはいつも申し訳なく思う。
「陛下、レイル王女様と王宮魔技師筆頭補佐のジン様、ならびに蒼溟様がご到着されましたが…「おぉ、気にせずに入れ、入れ」 …との事ですので、どうぞお入り下さい。」
護衛兵士の言葉をさえぎらないで下さい、お父様。
苦笑しながらも扉を開けてくれる兵士に目線でお礼をしつつ、お父様の執務室へと入る。そこには、予想通りにお父様とインテグリダー様がいらっしゃった。
「うむ。よく来たな、愚民よ。余こそは偉大なる王様であ~る♪遠慮せずに、敬うがよいわぁ~、あっはっはっはっはー!」
よく分からないテンションで胸を張る自称『偉大なる王様』にため息が出てしまった。
「さて、陛下は無視して…よく来てくれたね、二人とも。蒼溟くんとは、一度面識があるけど改めて自己紹介をさせてもらおう。私は、この国の宰相補佐を任されているインテグリダー・カーリタース。これからもイロイロと関わりがあると思うから、気軽に接してくれていいからね。」
「はい、宜しくお願い致します。」
「おう、ちょっと待てやぁ…」
蒼溟が素直に挨拶する傍らで、ジン様が黒いオーラを身にまといながら笑顔でインテグリダー様の肩を鷲づかみにして、部屋の隅へと移動していった。どうしたと言うのだろう?
「シクシク…誰も相手してくれない。」
「え~と、レイル。」
なにやら、一人放置されている『偉大なる王様』が膝を抱えて椅子の上で拗ねているけど…相手しなくても良いと思う。
「そういえば、蒼溟。あの護身用のカプセル類の魔工術式回路は応用が利かないようにしてあると報告書で見たけど具体的にはどんな感じなの?書類上ではよく分からなくて。」
蒼溟と共同開発したカプセル類には術式を組み込んだ魔石が一般の目に入らないようにブラックボックス化してはあるけど、専門職の手にかかれば開けることは可能である。
ただし、そこはワタシも魔技師の端くれ。そう、やすやすとは開けないようにしてあるし、無理にこじ開ければ魔石ともども術式が崩れ、二度と使えないようにはしてある。
「あれはねぇ、言葉遊びに近いかな? 使用している術式回路自体に矛盾しているものがたくさん含まれているから、一部を改ざんすると全てが破綻しちゃうの。」
「? 毒素を変更するとかでも、イロイロと変わりそうだけど。」
「ほら、例えば…1+1=2という数式を言葉遊びだと、田に変わるように回路の読み方が違っていたり、2と認識するのではなくアヒルと呼んでみたり。この場合だと毒素を神経系から持続性のものに変更すると効果時間の部分に破綻が生じて範囲指定ができなくて起動しないとかかなぁ。」
なるほど、言葉遊びとは思いつかなかった。
「え?でも、そんな無駄な部分がある割には術式回路自体はかなり小さくまとまっていたようだけど。」
無駄が多ければ、それだけ回路自体が複雑になりカプセル状にはならないはずだけど。
「それは、重複して読み込みなどをしているからだよ。数式は1+1だから、その結果や計算過程などをどのように認識し、判断するかの方が複雑だったかなぁ。」
「それでも、結構な量になると思うけど…。」
「そこは、創意工夫によるね。逆にこれを応用できるヒトがいるなら、利用するよりも一から作り直した方が遥かに早いと思うよ。」
「そうしますと、解析する時間なども含めての嫌がらせですか?」
いつの間にか、ワタシたちの傍に来ていたインテグリダー様とジン様が会話に加わる。
「そうですね♪ 解析した後も理論上で組みなおそうとしてもかなり時間がかかると思いますよ…なにせ、村で一時期はやった時などは解析した後に落とし穴がたくさんあって、代用しようとして色々とひどい目にあいましたから。」
どこか遠い空ろな目線をする蒼溟の姿に、深く追求することを止めるワタシたち。
蒼溟の村のヒト達って、一体どんな性格の方々がいたのだろう。話に聞く限り、ウチの民よりもハッチャケ度が半端ないように思えるのだけど…。
「ふむ。それなら、あのカプセル類が悪用されることはなさそうだな。安全対策などはレイルや他の魔技師たちがきっちりとしてあるみたいだし。」
「ようやく、まともに会話する気になりましたか…陛下」
「インテグリダーさんや、俺に対する扱いが酷くないですか? 一応、上司ですよ?」
「一応、上司だから私が引退できないのですよ。この問題児(陛下)」
「うっうっ、扱いが酷い…。まぁ、それは後で議論するとしてだ。話が進まないから直球で言わせてもらおう。」
一応、用事があったんですね。ワタシは暇つぶしに呼ばれたのかと思っていました。
「あ、扱いが…。コホン、蒼溟くん。王族にならないかい?」
ドヤ顔しているお父様にインテグリダー様とジン様の両者から拳骨が贈られました。ごめんなさい、ワタシもつい手が出ていました。
「「「話を端折り過ぎ(だ!!)(です!)」」」
パパ~ンが登場です!
王様なのに、家族第一主義者。仕事場ではいらないヒトですね(笑)
仕事場といえば、作者のグチを一つ…。
ウチの会社は、社員を使い潰す気か? 出勤が早朝を越えて、夜中出勤なのに終業は夕方だと!? ふっざけんなぁー!ワタシの遊び時間を返せぇ~(本音♪)
いつか、ウチの職場をパロディにして小説にして見たいと目論でおります。他所で少しあげていたのですが、イロイロと同僚に見つかりそうになり逃走しました(笑)
いえね、実名は当然のように避けていたのですが、個人的につけたあだ名(キャラ名)がピンポイント過ぎて、同僚たちには誰だか一目瞭然だったようです。
やべ、上司に見られたら減給されてまう!Σ( ̄□ ̄;)
こんな感じで、今年も宜しくお願い致します。 m(_ _)m