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箱庭の少年  作者: 木乃羅
第三章 激動する状況
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3-14 面白いの…見つけた

主人公目線は、諦めて…次は、副部隊長だぁ!!


 そろそろ近衛部隊の人たちの名前が出てくるのかも?最初の予定では、脇役程度だったはずなのですが…どうして、こうなった? orz

 今回の息抜き…建前は「(そな)えあれば、(うれ)いなし」の異邦人の格言を用いた王族のパシエンテ様の為の薬材確保。隊長の言い分では、隊員の士気と実践訓練を兼ねたものらしい。


 でも、本音はマンネリ化してきた業務内容の改善とイタズラを仕込む為だと思う。


 任務途中で王宮魔技師筆頭補佐…自称、引退されたらしい|(笑)…ジン様とお会いした。偶然というよりも、向こうから近づいてきたみたい。茂みに隠れている姿なんて、動物みたいで面白そうだった。次の機会には、一緒に参加させてもらおう。


 ジン様の同行者に噂の異邦人がいた。

 隊員であるフェリシダーからも報告があがっていた人物で、宰相補佐インテグリダー様の指示により簡易の素行調査と報告を追加で書き上げていたのを覚えている。彼女からの評価は高めで、素直な弟ができたと喜んでいた。

 個人的には、常に行動を共にしているらしいインフィニティとレーヌ族に興味があったのだけど…最初の方に少しだけ姿を見せてくれた後は、どこかに隠れてしまった。とっても、残念です。


 隊長と一緒に諜報部からの報告書を読んだけど、異邦人に対しては珍しく城内および国内での活動制限は(もう)けられないようだ。これは、本当に珍しいこと。

 個人の性質に寄らず、こちらの常識などを知らない異邦人に対しては教育と徹底した監視が付けられることが通常である。本人に明確な悪意がなくても、彼らの思想や技術、倫理観などは危険視されるに十分な破壊力があるから。


 でも、報告書に記載されていた「×××は見た!少年の赤裸々な実録簿|(笑)」は何だったのだろう?題名らしきものだけで、その内容は書かれていなかった。

 隊長は爆笑していたし、インテグリダー様は呆れた様子。会議に参加していた王様は、何故か目元を手で(おお)っていたけど…何か知っているのかな?


 余談だけど、この会議で必要時に彼を後宮に立ち入らせて良いとの認可を受けている。家族至上主義の王様にしては異例の決断で、会議に参列した皆が内心でビックリした。

 だって、王様なのに国政を部下に放り投げて家族サービスをしようとしたお方だから。…後で王妃さまからキツイ折檻(せっかん)を受けたらしいとの噂を耳にしたけど、あり得そう。


 そんな事前情報が盛りだくさんの異邦人さん。実際に会ってみたら、野性の動物みたいな感じだった。ケモノ耳と尻尾を付けてあげるとよく似合いそう。


 帰り道では面白い道具をイロイロと見せてもらった。


 プチティラノの撃退用の笑い茸主成分「笑って(こら)えて」カプセル。

 神経毒を活用したものだけど、相手の体格から効き目が左右されるのでは?と思ったけどカプセル内に魔石を使用した魔工術式が組んであって、効果時間に拡散使用まで設定できる優れものだった。


 ウボールカ用には忌避剤「お口臭い~」カプセル。

 プチティラノ用よりもかなり小さなカプセルで、手のひらサイズ。楕円の端にはボタンのようなものがあって、押すと人工的に作った血潮の臭いが時間差で広がる。それをエサに仕込むもよし、ウボールカの口内に放り込むもよし。指定した時間後に、強烈な臭いが胃袋から発生して彼らの嗅覚を軒並み停止に追いやり、彼ら自身をノックアウトさせるようだ。死に追いやるのではなく、気絶状態にするらしいのだが…自然界では致命的な隙だろうなぁ。


 他にも「(しび)れた足では歩けません」に「(すべ)るぞ、(ころ)べ」と「五味〈酸味・苦味・甘味・辛味・渋味〉ひと舐め」、「(かゆ)倍増(ばいぞう)」などを見せてもらった。形状はカプセル仕様で細やかな微調整ができ、カプセル含めて自然分解もする、環境に優しい優れものだった。


 全てお手製というのも高ポイント。カプセルの開発にはジン様のご子息であるリベルター様に第一王女であるレイル様も関わっているとのこと…楽しそう。


 今の職場に不満はない。隊長も面白いヒトだし、王族の方々は優秀で気遣い屋さんが多いし、部下も臨機応変で有能なヒトたちばかり。わずかな不満としては、パシエンテ様のお身体がもう少し丈夫だったら良いのに。


 この国は他と大きく違って、王族から国民に至るまでいいヒトばかり。だから、余計にこの国のために何かをしたいと強く想う。だから、たまに違う道もあったのでは?と思ってしまう。


「副部隊長、後宮の入口に着きましたよ。そろそろ、現実に戻ってきて下さい。」


「着いたの?」


「なにやら物思いに沈まれていたようですが…体調でも崩されましたか?」


 私の目線にあわせて、しゃがみ込みながら見習いさんが心配そうな顔をしている。


「大丈夫ですよ。副部隊長のことですから、小猿ちゃんが見せてくれたカプセルの有効活用方法でも模索(もさく)していたのでしょう。」


「むぅ、否定はしない。でも、優しくしてもいいと思う。」


「副部隊長…楽しそうだったら、隊長のイタズラに便乗して大事(おおごと)にするヒトの台詞ですか?」


「…人生に楽しみは必要。」


「物事には限度があります。」


 旗色が悪い。チームメンバーでもある今期の“壱乃(いちの)”のお説教は始まると長い。早急に話題を変えないと…。


「異邦人…蒼溟(そうめい)さんは?」


「分かりやすい話題転換をありがとうございます|(嫌味)。小猿ちゃんなら城内に入る前の身体検査の途中で、ジン様ともども王様から呼び出しを喰らいましたよ。」


「さすがに後宮内とはいえ、城内でその言いようはあんまりだと思うわよ。」


「そうよ、“四葉(よつば)”の言うとおり。でないと来期も“壱乃”になってしまうわよ?」


 何気に私たちの会話にすべり込んできたのは、王妃さまの護衛をしていたはずの隊長だった。


「ちょ、部隊長!?背後から首を()めないで下さい。後、部隊内での任務中コードネームをころころ変更するのを止めませんか?」


「あら、いいじゃない。誰が何の任務についているのか容易に悟らせず、付けられたコードネームを間違えないように注意力も増す。いいことずくめじゃない?」


 “壱乃”の肩にあごを乗せ、ニヤニヤ笑いながら言う。


「その決め方がもの凄く嫌だからです。」


「そお? 運任せのくじ引きもいいけど、部隊内での自己評価もわかって良くない?」


「評価というよりも遊びですよね!?部隊内のイロイロ順位表を基に決めるのは変でしょう!」


 たまに部隊内でアンケート調査をするのだけど…内容は、人気投票と同じ。 誰が一番もてるのか? 料理上手と下手は誰か? 仮装させるなら誰がいい? イタズラをするなら誰? 等々。ちなみに、今期のお題は「器用貧乏なのは誰?」だった。一番から順に、異邦人たちの漢数字?に手を加えたコードネームを使用するのだ。


「不思議ですよね。器用貧乏と言うとなにやら哀愁(あいしゅう)(ただよ)いますけど、万能と(あらわ)すと華やかになるのですから。」


「まぁ、今回のは“貧乏クジ”も含めての評価だと思うけどね。」


「上司と同僚が冷たい…泣いていいかな?」


「お腹を抱えて笑ってあげるわ♪」


「あら、貴女が可愛らしいからいけないのですわ♪」


 うん。暴走気味な姫百合部隊のストッパーさんは、今日も健在らしい。フェリシダーの次にからかう対象として部隊の中では人気だったりもする。


◇ ◇ ◇


 あの後、私たちは見習いさんを薬材ともども師匠さんへと無事に送り届けた。任務に参加した子たちは各自で報告書を作成して提出すれば、今日の勤務は終了である。

 私は、定時報告で隊長に伝えていた内容の補足と事務処理を進めていく。


「へぇ、なかなか面白そうな子だね。パルは気に入ったみたいだしね。」


「うん。きっとナダールも会えば、気に入ると思う。」


 隊長であるナダールと私は幼馴染みでもあるが他のヒトたちは知らない。私を近衛師団にスカウトして身元の保証人になってくれたのも彼女である。幼い頃の愛称を使ってくれるのは今や彼女だけである。


「ふむ。フェリシダーの弟分で、リベルター様の義理の弟かぁ。しかも、カプセル型の物騒な魔道具を作れるほどに魔工術式に詳しい…インテグリダー様が危険視しそうね。」


「…多分、大丈夫。」


 私の言葉にナダールは、ちょっと目を見開く。すぐに面白そうに笑うと根拠を聞いてきた。


「勘? それ以外は…あのカプセルの魔工術式。詳しくは分からないけど、第一王女のレイル様が関わってる。」


 第一王女のレイル様は争い事を好まない方。パシエンテ様も嫌う傾向があるが、レイル様は無力化する。ある意味、その為に魔工術式を学んでいると言っても間違いではない。開発に関わっている以上、悪用される事を一番警戒している…はずである。

 それに「異邦人だから」というには、変わり者すぎる。普通、使用した容器の後処理までも計算に入れて魔工術式を組むだろうか?自然分解の中には有害な毒素の無効化も含まれているらしい。


「ほう。パルの勘ですか…聞くほど、知るほどに謎が深まる人物だね。」


「そう?」


 私は、ナダールが何を警戒しているのか分からない。でも、きっと杞憂(きゆう)で終わる気がする。私の…パルウムの名に賭けてもいいと思えるほどの確信が何故かある。


「これから楽しくなりそう…。」


「そうだな。」


 私の言葉にナダールが優しい笑顔で(こた)えてくれる。


 もし、私の勘が外れて…蒼溟さんが敵にまわったとしても、この優しいヒトたちを守るためならば、私はどのような事でもするだろうと深く心に誓った。

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