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箱庭の少年  作者: 木乃羅
第三章 激動する状況
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3-13 気晴らしできたかな?

 主人公が動かしにくいので、どうしても他人目線になってしまう様子…今回も近衛部隊の女性隊員の目線です。

 表現力と文章能力が切実に欲しい…(涙)(T△T)

 武器の手入れをしながら、周囲を軽く警戒する。夜警の間は、特別な事態でもない限りさほど神経をらす必要はない。


 そういえば、私もすっかりこういった仕事に慣れましたわね。


 後宮勤めの近衛兵といえば、女性騎士たちの憧れの職場でもある。

 前線に立つわけではないが、その重要性は同様に重いといえる。警護する王族やこの国には居ないが、他国の姫君などを様々な状況から守るのである。失敗すれば、自らの親族のみならず他国との戦争の要因にもなりかねない。また、その場所柄の理由で様々な人間関係に暗躍なども存在する。


 見習いの時は、憧れと緊張でガチガチだったけど…新人の頃になると、上司や警護対象の方々の奇行に目を白黒していたわよねぇ~。懐かしい。


 のほほ~んとした雰囲気でありながら、その視線は周囲を油断無く確認している。特に灯りと暗がりの境目など些細なものを見逃しやすいが、暗躍する者たちはその隙間をよく狙うのである。


 後宮ではないといえ、任務中である。無意識にその隙間を警戒してしまうのは、職業病といえよう。


「ところで…、貴女は何を打ちひしがれていますの?」


 同期で気心のしれた戦友であり、親友でもあるチームメイトは少年(蒼溟さん)の側でうなれている。


「……物事、知らなくていい事は聞かない方が幸せだったなぁと実感しているところ。」


「何を言いたいのか、よく分からないのだけど…とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いたら良いのではないかしら?」


 お気に入りのお茶を荷物から取り出していると、少年がさり気なくお湯をくれるので目礼で返して、すぐに淹れる。少し蒸らし、コップに入れ、彼女に手渡す。


「はぁ~…、ようやく落ち着いた気分だわ。」


「ふふ、それはよかったわね。」


 彼女とは見習い時代からのルームメイトでもあったからなのか、一緒に居ると家族と過ごしている時のように安心するのだ。


「ふぅ、このままだと何事も無く任務達成できるかしら?」


 楽観的な言葉だけど、それは多分無理だと思うなぁ。彼女もそれを認識しているのか、小さな声で「…息抜き代わりの時点で、無理かなぁ~。」とつぶやいている。


「そうね。怪我もなく済めば、それで良いのではないかしら?」


 私の言葉に力なく笑いながら、ため息を吐いている。表情豊かで、見ていて飽きない。

 彼女の育った環境を聞いているから野戦や精神面では強い方なのだけれども、その割に常識人だから隊長や副隊長の奇行に歯止めをする役割を任せられている。その役割を認識したうえでからかってくるのが、ウチの上司の悪癖だとは思うのだけどね。


「明日は、朝一から移動だよね。空路は使わせてくれないだろうから、陸路での帰還かぁ。」


「そうねぇ、ほぼ確実にプチティラノとの遭遇戦があるわよね。」


「ウボールカともやりあうのかなぁ。」


「状況にもよるでしょうね。」


 どちらとも集団戦を覚悟しなくてはいけない相手である。最悪な状況は、プチティラノをあしらっている最中にウボールカも参戦してくることだろう。


「そういえば、小猿ちゃん。プチティラノとウボールカを相手した事はあるの?」


 あ、とうとう本人にそのあだ名を言ってしまったのね。

 微弱な悪意を含んだあだ名をつけるのは、彼女の悪癖である。それが原因で無用な争いになった事など数知れず…それでも反省する様子はないのだけれども。


「え?小猿って、僕の事ですか。」


 蒼溟(そうめい)さんは、自分を指差しながら確認をすると彼女は大きく頷いた。どう反応するのだろうと、興味津々で見ていたら…


「あははは、小猿ですか。野生児の次によく言われます。」


 楽しそうに笑い飛ばした。その表情と雰囲気から特にやせ我慢などをしている様子は感じられない。それどころか、その呼び名を嬉しそうに受け止めているようである。


「むぅ、以外に大人な対応をされてしまった…つまらん。」


 …貴女、喧嘩を売ってどうするの。


「それで、どうなの?」


「う~ん、相対したことが無いから何とも言えないですね。一応、対策はしてありますけど…それが本当に有効なのかは、実際に試してみないと分からないです。」


 蒼溟さんの正直な意見に、ちょっと感心してしまった。自惚れではないけど、私たちはかなり整った容姿をしている。その為に、私たちの前で見栄を張ってしまう男性が多く、こういった場合に自分の力量以上に言ってくるのが常であった。


「あら?見栄を張らなくていいのかしら~。」


 彼女が意地悪そうに笑いながらからかうと、蒼溟さんは逆にきょとんとしている。


「???一緒に行動するのなら、お互いの力量はある程度正確に把握しておいた方がいいのではないのですか?」


 え、実は別行動の予定でしたか?と若干、慌てる蒼溟さん。


「うむむ。頭で理解してはいても出来ないのが、多い(男の)連中でまともな意見をサラッと言えるとは…こやつ、できるな!」


 …先ほどから、キャラが壊れてきているわよ。朱に交われば、赤くなる…の異邦人たちの言葉通りに上司の悪癖がうつってきたのかしら。ブレーキ役がそれでは困るのだけれど。


「まぁ、冗談はさておき。流血状態にすると厄介な敵が有象無象(うぞうむぞう)に群がるから極力、止めてね。」


「特徴を聞く限り、集団に囲まれると倒すのはもちろん、逃げるのも大変そうですね。」


「そうそう。中堅探求者の中には、自分の力量を過信して失敗する連中もいるから、本当に気をつけてね。特に、今回は見習いさんと材料を無事に送り届けるのが最優先事項だから。」


 あら、和気藹々(わきあいあい)と会話をしている様子を見るに…結構、気に入ったのかしら?


「そうですね。無理に討伐をする必要もないですし、逃げられるのなら逃げるのが最良の選択ですよねぇ。」


「そうそう。敵を殲滅するだけが戦いじゃないからねぇ。」


「あぁ、分かります。無用な殺生はしないで欲しい…というか、絶対に巻き添えをくうからやめて欲しいのに、やめてくれない…。」


「分かるわぁ~。しかも、張本人は事態を引っ掻き回して遊ぶだけで解決には協力してくれないし…。」


「「はぁ~…、癒しが欲しい。」」


 …貴女たちは姉弟ですの?

 そんな、お馬鹿な会話をしながら私たちの夜はふけていったのでした。


◇ ◇ ◇


 さて、私たちは無事に都市ルジアーダへ到着した。

 道中の様々な出来事…人為的ハプニングも含めて、発生はしていたけれど…も難なく解決して、予想よりも早目にたどり着くことができた。


 想定外と言えば、蒼溟さんのプチティラノ対策がかなり有効だったことかしら。ジン様いわく「熊の撃退方法じゃね?」との事ですけど…クマって、どんな生き物なのかしら?


 方法は、いたって簡単でしたわ。

 まずは、動物避けの鈴音を付けながら進み、遭遇すると専用に調合した神経毒を相手の鼻先に炸裂させる。それを幾度か繰り返すと相手が嫌がって近づいてこなくなる。

 これ、結構簡単ですけど肝心の神経毒…今回は、食事の際に使用されていた笑い茸から抽出したものを中心に他にもイロイロ…がきちんと効いてなければ意味がない。それに、その神経毒を受けた固体が様々な状態異常になりながらも生きて、他の固体に伝えることも大切だったりもする。


「いやぁ~、今回は小猿ちゃんのおかげで楽させてもらったわぁ~♪」


「珍しくご機嫌ねぇ。」


「そりゃあね。あの撃退方法が上手くいってくれたおかげもあるけど…何よりも、副部隊長がそれを気に入ってくれたから余計な手間が(はぶ)けたのが大きいよねぇ~♪」


 自分が乗っていたトラホドレッヘに頬ずりしながら喜ぶ姿にちょっと呆れつつ、私も納得してしまう。


「そうね。普段でしたら、特別訓練と称してウボールカを呼び寄せようとしますからね。」


「そうそう。しかも、その為の血のりまで用意していたらしいから。本当っ、小猿ちゃんに大感謝だわぁ。」


 え!?そんな物を用意していたの。…そうか、だから出発前にやたらと回復薬や武器の点検、それに予備などを入念に確認させたわけねぇ。彼女じゃないけど、私も蒼溟さんに感謝したくなってきたわ。


 チラリと蒼溟さんと楽しそうに会話する副隊長を見る。普段の無表情とは比べ物にならないくらい楽しげな雰囲気で笑う姿に周りの隊員たちが内心で驚いている。しかも、小柄な体型もあって、蒼溟さんと兄弟のように見えてしまう。


「まっ、結果的には程よい気晴らしになったのかな?」


「えぇ。明日からの仕事も頑張れるかしらね。」


 そのまま和気藹々と私たちは城へと向かうのであった。


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