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箱庭の少年  作者: 木乃羅
第三章 激動する状況
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3-10 ××に出あったぁ~♪

 翌日、ジンと蒼溟たちは野営の後片付けをする。


「ジン、この枯れ木とかどうする?」


「おぅ、そこの岩のくぼみにでも突っ込んでおけばいいぞぉ。次の連中が使うだろう。」


 枯れ木などをツタで器用にまとめ上げると、くぼみに押し込み。カマドにしていた石なども岩の側へと並べて片付ける。


「ドラッヘたちはどうするの?」


 蒼溟の問いに、トレホドラッヘたちはガゥガゥ答える。


〔 蒼溟さま。彼らは、この場にとどまるそうです。五日たっても戻ってこない場合は、自主的に街へ戻ると言っていますよ。〕


「じゃあ、そうしてもらうか。」

 ジンはあっさりと決める。


 シュンの通訳にお礼を言って、この後の予定を決めると僕らは森へと進んだ。


◇ ◇ ◇


「「「ギャイン、ギャイン」」」


「そういえば、蒼溟。お前、狩りをするのが好きみたいだがコイツらは狩らんのか?」


 森で遭遇した狼モドキを香辛料(刺激の強いもの)で撃退していると、ジンがふいに問いかけてきた。


「う~ん、別に必要じゃないから。それに、これくらいなら動物避けで対処できるからね。」


「ヤツラの毛皮なら結構、高値で買い取ってくれるぞ?」


 不思議そうに聞いてくるジンに僕は簡単に説明する。


「村での教訓でねぇ。必要外の獲物は獲らないようにしているんだぁ。」


 納得していないのか、首をひねるジンにちょっと笑ってしまう。


 まぁ、必要にかられて狩猟をしているわけでもないので納得できないのも分かる気がするけど、僕の中では立派な理由でもある。


「村での教えに『因果応報、ヤル時は覚悟と容赦なく』というのがあってね。」


 狩るとは、相手を殺すこと。

 殺される覚悟がないのなら殺す勇気も持てていない証拠と言われたのだ。実際に、罠にかかった獲物にとどめを刺すのはかなりの覚悟が必要だった。


「中途半端な温情は、後に大きな禍根(かこん)を残す原因となる。殺すなら必ず息の根を止める。殺す勇気がないのなら『いかさず、殺さず』に徹底的に…という意味らしいよ。」


「納得できるような、できないような意味だなぁ~。」


「でも、殺された相手が例え悪党でもその身内や仲間にとってはいい人かもしれない。そうなれば、殺した方は世間的には正しくてもその人たちから見ると憎い敵だよね。」


「まぁ、そうだが。そんな事まで考えていたら、身動きとれなくなるぞ。」


「うん。だから『容赦なく』なんだ。」


「なんつぅか、かなり極端な話だなぁ。」


 ジンのため息まじりの言葉に僕は笑う。


 実際のところ『容赦なく』なんて、なかなか出来ないことだろう。

 だけど、あの村で育った僕にとってはトラウマを克服する意味合いもあって十分に納得できる言葉でもある。


「えと、何事も臨機応変にだから。物事の全てをその考えで判断するわけでもないけどね。」


「そりゃそうだ。犯罪者予備軍みたいな考え方ですごされたら、こっちが大変だ。」


 いい子かと思いきや、平然とした様子で笑う蒼溟にジンはちょっと薄ら寒い感じがした。


 どうやら、こちらが思っているほどにお人好しでは無いようである。安心なのか、不安なのか微妙な感じではあるが、普段の態度はどうやら(しつけ)の結果らしい。


〔 蒼溟~。ここから左方向へ進むよぉ~〕


 アオが地面の上でボールのように跳ねながら呼ぶ。


「? なにかあるの?」


〔 ちょっとねぇ~。面白そうだから、早く行こう!〕


 アオの面白そう発言に、僕は少し身構える。

 アオの判断基準は時折とんでもないからなぁ。


〔早く、速くぅ!!〕


 ポンポン跳ねるその姿に、ジンと一緒に警戒することにした。



 それから、数刻。

 アオの先導により森を進んでいく。途中から、人の気配を感じ始めた。


「ジン、人の気配がする。」


「あぁ、どうやら複数の武装した連中だなぁ。しかし、こいつは…どこかの部隊か?」


 ジンの言葉に僕も頷く。


 周囲にはまだ人影を見ないが、確かに訓練された人特有の気配の探り方を感じる。

 他の探求者たちだと全方位を軽くまんべんなく探るのが常である。だけど、訓練された部隊の人達だとそれぞれに受け持った方位を重点的に探るのが常である。

 それは、他がおざなりになるのではなく互いにある信頼関係により多方面に対しての警戒を薄くして、一点を重点的に警戒することにより、危機回避の能率を上げるのだ。


「熟練した人たち…という可能性は?」


 優れた探求者パーティであれば、城勤めの部隊隊員たちと同等ぐらいの能力はある。


「いや、この動きは違うな。きちんと統制されているし、何よりも隙が無さ過ぎる。」


 森の中で、しかも相対するのはヒト以外。

 普通の探求者たちであれば、経験などでカバーする事態も部隊として訓練された人達はきちんとした理念と統制で対応する。


「う~ん。…迂闊(うかつ)に接近すると怒られそう?」


「どうだろうなぁ。ここで遭遇する部隊なんて、ウチの城勤めだろうけど。」


 ジンと会話しつつも僕らは索敵スキルを使用しながら気配を殺して接近していく。


 一体、どこの暗殺者だ?と自分にツッコミを入れつつも物音ひとつさせずに彼らを観察できる場所に辿り着き、ジンたちと一緒に身を潜める。


「何かを探している?」


 そこには、(そろ)いの武装をした女性兵士たちが周囲を警戒しながら、一人の学者風の人物を警護していた。


 護衛されている人物をよく観察してみると、薬師らしい装いと熱心に足元の草を鑑識している。周囲に警戒する様子はなく、地べたに腰を下ろし、幾つかの薬草を手にしては熱心に識別をしているのだ。


「薬草採取? それにしては、やけに物々しいような?」


「あれは…、フェリシダーの所属する近衛師団の連中だな。」


 ジンの言葉に僕は首をかしげる。

 確か、フェリシダーの勤め先は城の後宮だったはず。特に女性騎士で構成された部隊は後宮に住む人達の護衛や様々な雑務をするらしく大変だと聞いた覚えがある。


「その人達って、こんなところに薬草採取するのも仕事なんですか?」


 ずいぶん、場違いのように思えるのだが…これも雑務のうちなのだろうか?


「いや、普段は後宮から出た仕事など無いはずなのだが…。なにをしているのだか。」


 ジンがやや呆れたような声を出す。

 僕はますます首をかしげながら、再び彼女たちを観察するが…。


「あっ!?」


 気付いた時には身体が反応して、身を潜めていた場所から飛び出していた。


忘れているかも知れませんが、ジンも一応は城勤めだった為に他の職場のことも把握しています。現在は、無理やり隠居を獲得した無職な爺さまとなっています(笑)

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