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箱庭の少年  作者: 木乃羅
第ニ章 安穏とした日々
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2-8 未知なる魔境へ…ようこそ♪

 翌朝、意気揚々と迎えにきたリベルター兄さん。

「やぁ、おはよう。蒼溟(そうめい)クン、昨日はよく眠れたかい?」

「おはようございます。ぐっすりと眠れましたよ。」

 僕の返事に満面の笑みを返してくれるリベルター兄さんの背後にジンの奥さんであり、兄さんの母親でもあるフィランさんが微笑みながら立っていた。

「おはよう、リベルター。久し振りねぇ?」

 ビシッ!?と擬音が聞こえてきそうなくらい固まるリベルター兄さん。

「・・・おはようございます。母上、本日はお日柄も良く・・・。」

「えぇ、天気も良くて気持ちのよい朝ね。ところで・・・。」

 久々の実の親子による対話は、母親からのお説教から始まったのだった。


◇◇ ◇


「やれやれ、朝一番から母上のお説教とは。やっぱり、私にとって実家は鬼門ですねぇ。」

 あれから玄関先で二時間くらいお説教が行われ、僕はサカエさんとお茶を飲みながらその様子を見学していた。

「さて、気を取り直しまして。ギルドの穴蔵(ダンジョン)案内もいいのですが、本日は私の職場にある魅惑の空間へとご招待しましょうかね。」

 “魅惑の空間”と聞いて、アオが僕の懐から顔出す。

「ミュッ!?」

 なに、その楽しそうな名称!?と…表情では一切分からないけど…期待に満ちた様子の薄青色の球体生物にリベルター兄さんは、満面の笑みを浮かべる。

「ふっふっふっ・・・。期待は決して、裏切りませんよ♪」

 それから僕らは王城へ向かって歩き出した。

「ねぇ、リベルター兄さん。そこは、王城の中にあるの?」

「一応王城の外となっていますが、厳密に言うと中間地点ですねぇ。・・・あぁ、ほら見えてきましたよ。」

 そこは王城の外堀と街の内壁の間に店舗が密集した地区だった。

「うわぁ、スゴイ雑多な雰囲気の所だねぇ。」

 僕とアオはそのギュウギュウに押し詰めた感じにビックリしてしまう。

「ここは、国営の商店街で主に王城で働いている人たちが経営しています。」

「えっ?それは副業ということ?」

 僕の問いに兄さんは、悪戯っ子のような顔をすると

「当たっているような、いないような。元は王城勤めの者たちへの娯楽として、学園のクラブ活動のようなことを提供していたのですよ。」


 騎士や兵士、官吏や侍従に下働きの者たちなどで王城内は保たれている。だが、生活の大半を仕事につぎ込み過ぎて、過剰な権威欲や物欲、歪んだ優劣感などが発生することがある。それを少しでも緩和しようということでクラブ活動を実施してみたのだ。

 その内容は、多種多様で規模も様々だ。

 基本的な規律として、人様に迷惑をかけないこと、利潤を追い求めないこと、仕事に影響を及ぼさないこと、が設けられている。この他にも細かい規約は存在するが、王城に勤めている者であれば、誰でも参加できる。


「まぁ、この国営商店街は学園祭に似たようなノリですね。ここで得た収益の一部は、クラブ活動の費用や本職である仕事場の経費として使われることになります。」

 へぇ~、仕事以外に趣味を積極的にもつことができるんだ。

「それに、本職を引退した者たちが次の職場として選びやすいこともありますし、趣味で作ったり、発明したり、発見したもので国益になりそうなものは、国がクラブから買い上げる仕組みもありますから。」

「スゴイねぇ~。でも、それはそれで問題が起きるのでは?」

 例えば、誰かが見つけたものを横取りするとか、他国のひとが賄賂を送って本職の方に害を及ぼすとか・・・考え出したらキリがなさそう。

「ありますよぉ~。それこそ、他の種族では見られないような多種多様な問題に犯罪、ルールなど。それらを“国の直営地区”を利用して独自の処罰方法で裁きます。」

 ニッコリと笑いながら言う兄さんが怖いです。

「まぁ、その発足から処罰まで独特過ぎてココは混沌となってしまいました。でも、ココに関わる者たち全てがこの場を大切に、そして大好きなので、逆に普通の犯罪は抑止されていますけどね。」

 ちょっと誇らしげな兄さんの表情。愛国心からなのか、それとも仲間意識からなのか、僕には分からないけれど、そんな兄さんが羨ましく感じた。

「真面目モードはここまでにしまして・・・。蒼溟クン、ここは一般的に“趣味人の集い”と言われています。その真髄を今からお見せしましょうッ!!」

 リベルター兄さん曰く、真面目モードでは無いその姿は、悪がきにしか見えない。

「みゅ、みゅ――――んッ!!」

 面倒臭い説明は終了にして、面白いもの楽しいことを目指してGO!!と叫ぶアオ。

「そうそう、インフィニティ殿は分かっていらっしゃる♪何事もメリハリつけて行う方が、効率いいのです。仕事するときは真面目に、遊ぶときは真剣に、騒ぐときはトコトンはっちゃけるのです!!」

 握りこぶしを作って、力説するリベルター兄さんの肩にオアが飛び乗り、その通りだぁ―楽しむときは全力でGO!!と叫ぶ。

 あぁ、実は似たもの同士?

「さぁ、蒼溟クンもそんな所で悟りに至っていないで、魔境へと繰り出しますよぉ~♪」

 似たもの同士たちにより、僕は趣味人たちが集う魔境へと連行されるのだった。

“趣味人の集い”国営商店街は、日本のアノ電気街を連想していただくと分かりやすいかもしれません(笑)


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