序章
人々の笑い声が溢れている世界
街は活気を取り戻し、人々は自由に世界を移動できるようになった。
1年前、この地を支配する魔王が一人の勇者によって倒された。
人々は彼を称えた
世界の中心に彼の銅像を立て、取り囲んで宴会をした
子供たちの憧れとして、勇者は、多くの子供の夢となり
将来の目標となった
半年ほど前までは……
現実問題として、魔王がいない世の中に勇者は不要となった。
悪が消え失せた世界では平和が当たり前となってしまった
それは必然的に勇者という存在の消滅を意味した。
魔物がいなくなったので退治や護衛のクエストが消えた…
ギルドだった建物は物置になった
一緒に冒険をした仲間も故郷に帰っていった…
武器屋や防具屋は殆どが閉店し、宿屋や鍛冶屋になっちまった…
鍛冶屋にしても、もう剣の代わりに包丁を持ってくる。
ひとつの世界が始まりと同時にひとつの世界が消えようとしていた。
今更、勇者になる何ていったら危ない人に思われてしまう程だ
そんな平和な世界のとある街
この街の外れにある酒場で明るいうちから酒を飲む青年
彼の父は偉大な勇者だった…
そう、この青年こそ1年前に魔王を倒した英雄の息子であった。
彼の父は半年前に失職し、今では宿屋を経営している
すでに世界から勇者という言葉は無くなり、無価値となってしまっていたのだった…
彼は現在、パン屋でアルバイトをしている
元勇者の息子…、未来の勇者だった筈の彼の人生が
今、始まった




