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始まる学校①

『ねぇ中島くんはどうしてこの時期に転校したの?』


 「お母さんの具合が悪くて…まぁ大学は東京で受けようと思ってたし丁度良いかなって」


 『森ノ山高校って頭いいじゃん!!勿体無い!』


 「むさ苦しい男子校だったよ」


 『中島くん全国模試載ってたよね!?』


 「アレはたまたま。ルームメイトが国語以外全国1位だったから僕は霞みまくってたよ…」


 『うそ!1位と同じ寮だったの!?え、1位って内藤カゴメでしょ。名前超可愛い』


 「顔も美少年だよ」


 『うっそぉー!』


 カゴメという共通話題のおかげで、新しいクラスメイト達と盛り上がることが出来た。(ありがとうカゴメくん)



 思いの外クラスメイト達は良い奴が多かった。


 偏差値の高い高校だからか、皆、僕を邪険に扱ったり陰湿なことはしてこなかった。


 ただ肌感、自分たちのグループに入ってくるなよという空気感はあった。当たり前だ。


 高校2年のこの時期の転入は動揺するだろう。それに特進クラスだ。学力試験の上位40名で編成されるこのクラス。突然知らない奴が1位を取って入ってきたら内心は気分が悪いだろう。


 だから浅く付き合ってくれる分には、こちらも都合が良かった。


 僕がこの高校に転入した目的は、ニーナ…同じクラスの天野聖に正体を明かして謝罪をすることだけだ。



 さて…謝罪をするとは言ったものの、


 どうすればいいんだ…??


 謝罪するにしても、僕がサリーであることを開示しなければいけない…。


 (やぁ僕サリー…君はニーナだろ?あの時は逃げちゃってゴメンね)


 違う…違う…絶対に違う。


 あれ僕…この学校入ってからノープランだったんじゃないかコレ。


 それに…天野聖=ニーナ説も怪しい。僕のうっすらな記憶だけで判断した。


 これで天野がニーナじゃなかった時だ。


 僕は横目でニーナの顔を見た。


 ニーナは席に座り女子2人に囲まれていた。先ほどのポニーテールを下ろし、2人に髪を編み込んで貰っていた。その恥ずかし気な表情を3秒くらい見てから目を逸らした。可愛い。


 僕はとんでもない勘違いをしてしまったのではないか。


 いやもうこうなったら、ニーナ=天野ヒジリを立証させよう。


 まずカウンセラーの先生に連絡を取るか…。


 先生には渋谷の一件以来会っていない… 。


 最後に会ったのは精神科の病院だ…。僕が渋谷の公園で手首を切ったと聞いて先生は泣きながらお見舞いに来てくれた。あの時の先生の顔を思い出すだけで胸が詰まる。


 そしてその記憶にリンクして、泣きながら僕を待ってくれたニーナの顔も思い出してしまう。


 自分の浅はかな行動で、どれだけの人を傷つけてしまったのか身をもって知ったはずだった。


 今も結局同じじゃないか。


 犯人が出所するこの半年間で、ニーナに謝罪して死ぬ…なんともまぁ…僕は自分勝手な男なんだろう。


 それでも、死ぬなら思い残しは無い方がいい。


 『死んだように踊って生きろ』


 そう僕はあの日死んだんだ。だからもう何をやっても良いんだ。僕はあと踊るだけなのだ。


 頭の中で作戦会議をしていたら転校初日は、あっという間に終わってしまった。


 授業も簡単だった。僕の高校では1年の後期にやったところをこの高校は2年の秋にやっている。別にこの高校を下に見ているわけでは無い。僕がいた男子校がクソなのだ。



 よし…まずニーナ=天野ヒジリを立証する。先生と連絡を取ろう。


 そう決心して椅子から立ち上がった。放課後は掃除当番以外は速やかに教室から出なければいけない。僕は荷物をまとめクラスの皆に従って教室から出た直後だった。




 『おい…お前、守護天使セラピーを知っているな?』


 目の前には、おかっぱの髪型をした小さな生徒が僕のことを睨みつけていた。


 「は… ?」


 誰だ…?という疑問と同時に、脳裏を突き刺したのは『守護天使セラピー』という言葉だった。


 なぜ…コイツがセラピーのことを…。


 いや、そもそもどうして僕に声をかけてきたんだ。


 おかっぱの生徒は今にも僕を殺すような、憎しみに満ちた目で睨みつけていた。しかし背が小さいせいで、そんなに怖くはなかった。


 「久しぶりだね…サリー」


 初めて会ったおかっぱ頭の一言は、僕の止まっていた時間を急に動かしてしまった。


 


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