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過去の手紙 ニーナに会ってはいけません
『来週の日曜日のお昼12時。
渋谷のスクランブル交差点に行くから。
サリー私に会いに来て』
「その手紙の返事は…なしです。」
カウンセラーの先生の表情は変わらない。ただ、目の奥が真剣だった。
「何でですか!?別に手紙は!」
声が裏返った。机の上の蜂蜜レモンの入ったコップが小さく揺れた。声代わりの僕に気を遣って先生が喉に優しい飲み物を用意してくれていた。
カウンセラーは小さく息を吐いて、僕の正面に膝をつくようにして視線を合わせた。
「イオリさん。これは“守護天使セラピー”の最も大切なルールです。対象者と会うことも、会おうとすることも、どちらも禁止です」
沈黙。時計の針の音が、やけに大きく響いた。
「……渋谷には行ってはいけません」
その声は穏やかで、けれど一切の逃げ道を与えない響きだった。




