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俺と心中しよう

 「イオリ…会いに行きなよ」


 カゴメは僕の頭を撫でながら言った。カゴメの胸の中で泣き腫らした僕は迂闊に顔を上げることができなかった。


 「え?」

 

 「会いに行きなよ…。ニーナに…天野ヒジリに」


 カゴメは吐息混じりの声でそう言った。もう寝落ちそうなのだろう。


 「カゴメ、何を馬鹿なことを」


 「馬鹿じゃないさ。天野ヒジリが通っている高校は少しクラス分けが特殊だから」


 「な…」

 なんでカゴメがそんな事を知っているんだ。


 「単純にテストで成績が良い40人が特進クラスで1組になるんだ。簡単だろ?」

 

 「僕に転校しろって言うのか?」


 「どうせ犯人が出所するから死のうとしてたんでしょ?」

 耳元でカゴメがそう囁いた。


 自分が心の中で何度も反芻し続けていたことを他人からあっさり指摘された。僕は顔が真っ青になり寒気がした。


 「じゃあ良いだろ。どうせ君は死ぬんだ。死ぬ前くらい好きな女の子に会って学園生活を満喫しても誰も咎めないさ」


 カゴメは…神様のように微笑んだ。


「イオリくん…人はね、終わりを見つけたら後はもう走るしかないんだよ」




 “死んだと思って踊るように生きろ”




 あの時の検事さんの言葉が蘇った。



 「カゴメは…それで良い?」

 僕はカゴメの胸元でそう言った。なぜか怖くて顔を見ることが出来なかった。


 「なんで俺の許可がいるんだよ。君が転校するのは寂しいけど。そうだな…じゃあイオリ…顔を上げて」

 

 そう言ってカゴメは僕の肩を掴み、ゆっくり顔を近づけた。




 「ニーナに会って全てが終わったら…俺と心中しよう」



 そう言ってカゴメは僕の唇に再びキスをした。


 やっぱりカゴメからは冬の蜜柑の香りがした。


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