花火と首吊り
首吊りは思ったより苦しかった。
楽には死ねない。
意思に反して生存本能が発動され、身体がジタバタと動く。それが苦しい。やめろ。抗うな。死ぬんだ。こんな苦しみより、今までの3年半のほうが地獄だった。頼むもう…。
バン!ーそのとき大きな爆発音が聞こえた。
聴覚が死んだ?
違う…花火だ。左目から緑色の明かりが照らす。バンッーバンッバンッと山奥の高校に大きな花火が踊る。
「たまやー!」とグラウンドから叫び声が聞こえる。
生と抗っている自分が情けなく感じる。
頼む。あっちに行かせてくれ、あの花火のように弾けて綺麗になりたいんだ。
意識がかすみ苦しみから解放されかけた時だった。
バンッと小さな音が鳴った。
花火とは比べ物にならないほど小さく、花火とは比べ物にならないほど近い場所から音は鳴った。
「あれ…?イオリなにしてるの?」
カゴメだ。
ルームメイトの内藤カゴメだ。
思わず歯を食いしばり最後の力で首に力をいれる。早く死ななければ。
そんな文字通り必死な自分をカゴメはニコニコと見つめていた。
カゴメの目には動揺も、悲しみも、怒りも何も映されていなかった。
カゴメの揺れるポニーテールと横顔がただ綺麗で、死ぬ前に見惚れるのがカゴメなことを悲しく思った。
「イオリは馬鹿だなぁ」
この声はどうか天使の声であってほしい。いや悪魔でも構わない。
そっちの人の声であってほしかった。




