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3-5 相談事は誰かにすべき

「なぁ、ルーシー。気づいたことがあるんだ」


「ん? 何が?」


「実はさ、オイラたちってすっげえ相性いいんじゃね?」


「……は?」


「えー? そう思わない? だってさ、この間、

姉ちゃんのペンダント盗んだ犯人捕まえたとき、すっげえコンビプレーだっただろ?

水球作って、飛ばして、凍らせて──ワン・ツー、フィニッシュ! 」


「──あぁ、そっちか……。 うん、確かにあれは良いコンビネーションだったな」


「なぁ、ああいうのもっとバリエーション増やさないか?

なんか、必殺技っぽくてかっこいいよなぁ。

名前とかも決めてさ。そうだ、なんならオイラが名前考えてもいいぜ。

水と風だろ? うーん、そうだな。

あ、リキッドサイクロンとかは? 」


「名前はやりすぎだろ……。しかも微妙にダサいし。

けど、実は僕も融合が出来ないかってずっと考えていたんだ。

色々と魔導書を読んでみたんだけど、

もしかしたら可能かもしれないって思ったんだ。

それでこの間、エバンに提案してみたってわけ。

……うん。あれは、決まると気持ちがいい」


「だろ?なぁ、もっと技を増やそうぜ」


「うん、やってみるか。

対抗戦で使えるかもしれないしね」


「よしっ!じゃ、早速練習しようぜ。

どんなのやる?

ルシエルが巨大な氷の球を作って、

オイラが風で吹き飛ばして転がしてさ。

周りが逃げまくって。くっくっくっ。

対抗戦で使ったら面白そうじゃね? 」


「それ、怪我人続出じゃないか……」


*  *  *  *  *


 クラス対抗戦がもうすぐ始まる。

特に三年生は今後の進路にも関わってくるので皆準備に余念がない。

騎士科三年、オーウェン・ベルハートは既に王国騎士団に内定が決まっている。

そして、この対抗戦での状況により配属先が決まると言っても過言ではない。


──と言うのは、表向きで、実はもう一つ強い想いを持っている。


──(対抗戦は俺にとって絶好のアピールの場だ。これを利用しない手はない)


オーウェンはあれほどの衝撃は受けたことがない。

それは、三年生初日のこと。

騎士科の新しい教室に向かう途中、教師と並んで歩く一人の女子生徒。

オーウェンは女子生徒に目を向けた。肩で揃えられた髪は艶やかに黄色く輝いている。

背筋を伸ばして立つその後ろ姿は、聡明さを表していた。


──(珍しいな。三年から編入する人もいるんだな)


横を通り過ぎ、二歩、三歩進んだところでちらりと彼女の顔を見た。


俯き気味だった潤んだ彼女の瞳がゆっくりこちらに向く。


全身に電流が走り抜け、骨が砕けたようだった。

それは今までに感じたことのない感覚。

鼓動が高鳴り、悲しくもないのに目頭が熱を帯びている。

オーウェンは息をするのも忘れて彼女を見入ってしまった。


それからというもの、気づけば彼女の姿を目で追っていた。


彼女のクラスの異性と話しているのを見つけると、

危険人物認定し、心の中で何度も睨みつけている。

いつか話したい。

いや、デートがしたい。


対抗戦の後には『後夜祭』が待っている。

生徒主体の一大イベントだ。

生徒たちは着飾り、盛大に盛り上げ、最高の思い出を胸に、冬休みに入る。


オーウェンはその後夜祭までにどうにかしたい。

今、一番の悩み事だ。

そんなことを考えながら校舎前広場を歩いていると、

背後から嫌な声が聞こえた。


「おい、オーウェン」


振り返らなくてもわかる。

この声は間違いなくアイツだ。

オーウェンは面倒臭そうに声だけ返した。

出来ることなら関わりたくない。

学園で最も苦手、否、嫌いな人物、ローウェン・アッシュだ。

騎士科三年。

父親は王国騎士団団長を務めており、それをいいことに学園内で幅を利かせている。


学園内では悪目立ちこそしていない。だが、何か問題が起こるたび、

裏で糸を引いているのは決まって彼だった。


オーウェンは彼が嫌いだ。

名前が酷似しているのも気に入らない。


「なぁ、オーウェン。この間、俺の仲間が魔導科の奴にちょっかい出されたんだわ。

なんか知らねえか?」


「いや、何も知らんぞ。そもそもそんなことがあったことすら知らん」


オーウェンは振り向かず、口だけを動かした。


「──ああ、そうか。もし何かわかったら教えてくれよ」


「知ってどうするんだ?」


「ああ? お前それ、本気で聞いてんのか? 

決まってんだろ。ちゃんとお礼はしないとな。

まあ、アンタにゃ関係ないか。じゃあな。優等生さんよぉ」


ローウェン・アッシュはオーウェンの肩に手を置き、

ギュッと力を込めた。

その手には、明らかな力が込められていた。


オーウェンは何も言わなかった。

だがその沈黙は、決して従順さを意味していなかった。

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