これからも
雲一つない青空が広がっている。澄んだ空に穏やかな太陽が高くのぼり、庭で花を眺めるリーメイとヨウをやさしく照らしていた。
季節が変わり、それを告げる花が咲く。目立ちすぎないが鮮やかなその花弁の色は、ヨウの本棚にあった本で見たものより綺麗だった。
花は風に揺れている。香りはないが、季節の香りを漂わせているようで、リーメイは目を細めた。
「これですね、手紙で言ってたお花」
リーメイは花の側にしゃがみ、髪を耳にかけた。
「……覚えていてくれたのか」
「当たり前です!楽しみにしてたんですよ」
ヨウもリーメイの傍まで来て、しゃがんだ。
あの事件から暫くたった。ヨウはこうやってすぐ傍まで近寄ってくれるようになって、距離も近くなった。
はじめて頬に口づけしてもらったときはリーメイは真っ赤になって暫く茹でた蛸のようになっていたが、今ではリーメイからもしたりする。まだちょっと照れる気持ちはあるが。
あの後、一度だけチャンフェイと会った。チャンフェイにはものすごく謝られたが、リーメイからするとチャンフェイは悪くないので、大丈夫だから頭を上げてください、と繰り返した。
それからヒェンの監視が厳しくなったのか、それとも迷惑をかけまいと思ったのか、チャンフェイは姿を現すことはなかった。
その代わりに、定期的に手紙が届くようになった。チャンフェイは変わらず元気らしい。手紙が届くたびに、リーメイはニコニコしながら手紙を読んでいる。彼女らしい溌剌とした文章だ。読んでいるだけで楽しい。
「こうしてヨウさまと時間を過ごしていると、あっというまに夕方になっちゃうんですよね。なんだか時間にいじわるされてるみたいです」
リーメイが唇を尖らせると、ヨウがくすりと笑った。
「僕も困っていることがある。最近時間感覚がずれてきていてね。季節が変わると明るい時間が少なくなるんだが、それだけではないと思うんだ」
「ヨウさまもいじわるされてるんですね」
「そうだな。一度説教でもしてやりたいが、効果がないのが目に見えている。困ったことだな」
リーメイもくすくすと笑った。言い方は相変わらずだが、冗談を言う回数が増えたのは嬉しい。
「まあ、夜になると星や月が綺麗なので、それはそれでいいんですけれど、それを見ながらお話してると、またいじわるされちゃうんですよね。
もっと色々話したいのに、眠くなるのは何故なんでしょうね」
「君は早く寝るのも仕事だからな。僕の要望に素直でいてくれるのは助かるよ。」
「え〜、ヨウさまわたしとお話する時間、短くなっちゃっていいんですか?」
「そうとは言っていない。話すことは尽きないからね」
リーメイも冗談を言ったりするようになった。たまに焦ったりするので、そういうところは微笑ましいと思う。
「……次の季節も、またこうやって庭でゆっくりしましょうね」
リーメイが微笑むと、ヨウは微笑み返して、花の方に目をやった。
「冬になったら、雪がつもる。この庭も眩しくなっているよ」
「真っ白になるときらきらしますもんね!」
「残った草にも霜がおりるようになるだろう。厚手の服が必要になるな」
次の季節はまだ先なのに、もうそのときの話をしている。
今の話もするし、未来の話もする。過去の話だってする。何だって、小さなことだって、話してしまうのだ。
二人は寄り添い合って花を眺めながら、たわいもない話をし続けた。あっというまに日は傾いていき、気づくと空の色が変わっている。
来年も、再来年も、こうしていたい。
リーメイはそう思いながら立ち上がり、ヨウに手を差し伸べた。
ヨウはその手をとって、立ち上がる。
頬を撫でる穏やかな風を感じながら、やわらかでやさしい手のぬくもりを感じていた。




