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プロローグ
世界が救われた日、私はただの村娘だった。
村の外れで小さな畑を耕し、母と二人でつつましく暮らしていた。
そのとき戦っていたのは、幼なじみのライル。
隣の家で育った、木登りが得意で、よく私を笑わせてくれた人。
けれど彼は魔王を倒すために旅立ち、英雄として名を轟かせてしまった。
……だから、もう二度と会えないと思っていた。
でも、あの日。
畑で土をいじっていた私の前に、彼は現れた。
鎧ではなく、軽装で。
黄金色の瞳が、真っ直ぐに私を捉えて――
「迎えに来た、ミナ」
それが、すべての始まりだった。