5.ヤワな男
『フリゲート船』
ひぃひぃ…
学者「いやぁぁこれマジ重かったっすね…ひぃひぃ…」
ローグ「ゲスさん…もう明るくなりかけてる…早く積んで隠さないと」
学者「キラーポッドはとりあえず甲板に置いて布を被せやしょう」
女盗賊「布は何処に?」
学者「荷室に入れちまったんでミファさん取って来て貰えやす?」
女盗賊「分かった」スタタ
学者「フーガ君!早い所積んじまいやしょう」
ローグ「うん!」
狼女「その他の物は荷室で良い?」
学者「そーっすね…整理は後でやるんで細かいのはミルクちゃんお願いしやす」
ローグ「警備の兵隊がこっち見てるね」
学者「荷物を積んでるんで今の所怪しんでる感じは無いっすね…明るくなる前に終わらせたいっす」
ローグ「キラーポッドだとバレたらマズい?」
学者「マズいっちゅうか無傷のキラーポッドだとバレたら何処で入手した?…って話になりやすよね」
ローグ「変に積荷を探られたくも無いか…」
学者「そういう事っス…まだ暗い今がチャンスなんで頑張りやしょう…そっち持って下せぇ」
------------
------------
------------
『朝』
バサッ グイグイ ギュゥ
学者「ふぃぃぃ…ギリセーフっす…これで梱包した貨物にしか見えんすね」
ローグ「あぁ疲れた…」グター
学者「ほんじゃ俺っちがボイラー動かして来やすかね」ヨッコラ
女盗賊「え?船を動かす?」
学者「ここに停泊してたら又入船料取られちゃうんすよ…商工会の船じゃないんで金貨2枚払う事になるんす」
女盗賊「金貨2枚…高いな」
学者「もう朝が来ちまったんでそろそろ集金来てもおかしく無いっすね」
女盗賊「荷車とか放置?」
学者「乗せてっても良いんすが何か使いやす?」
女盗賊「まぁ…次荷物を運ぶくらいにしか…」
学者「とりあえず桟橋は離れちまいやしょう…変に積荷を確認されるのも嫌なんで」
狼女「ちょっと待て…まだ宿屋に荷物が置いてある」
学者「ミルクちゃんたちは食べ物くらいしか無かったっすよね?」
狼女「それとあの男をそのまま放置するのか?」
学者「どうせ宿屋の誰かが見つけてどうにかしてくれやすよ」
狼女「ミルク金貨あと2枚持ってる…もう一日ここで待機出来ないか?」
学者「あれれ?名前も知らん男が気になりやすか?」
狼女「そんなんじゃない…放置して死ぬかも知れんと思ったら気になるだけだ」
学者「どうしやすかね…見つかるとマズい物積んでるんで桟橋からは離れたいんすよね…」
女盗賊「小舟だけ置いて沖に離れておくのは?」
学者「それならまぁ良いっすけど…」
女盗賊「沖で停泊してる沢山の船って何してるんだろう?」
学者「あれは海上積み替えで待機してるんすね…まぁ入船料の節約っすよ」
女盗賊「じゃぁその船と同じ様に待機」
学者「俺っち速攻キラーポッドの通信機外したいんで後は上手くやって下せぇ」
女盗賊「じゃぁ私とフーガで船動かすからミルクは宿屋の方に…」
狼女「帰りは小舟で戻れば良いんだな?」
女盗賊「そうなる…宿屋に置きっぱなしの私の荷物も持って帰って欲しい」
狼女「分かった…荷車持って行くぞ」
学者「ミルクちゃん気を付けて下せぇね…遺跡を荒らしちゃってるんで直に騒ぎになる筈なんで」
狼女「分かった…じゃぁ宿屋に行って来る」シュタタ
学者「ほんじゃ小舟降ろしてこの船は沖に出ちまいやしょう!」
『宿屋』
ガチャリ バタン!
ヤワな男「!!?」
狼女「むむ…起きてたか」
ヤワな男「あ…ぐぅぅ…み…水…」
狼女「動くな…内臓が傷んでるらしい」
ヤワな男「はぁはぁ…」グター
狼女「でも随分顔色は良くなった…水だ…流し込むぞ」キュポン
ヤワな男「むぐ…むぐ…」ゴクゴク
狼女「やっとまともな水分取れる様になったな?」
ヤワな男「ふぅぅぅ…」
狼女「これはお前の体の中から出て来た黒曜石の矢尻だ…皮紐で繋いで一つにしておいた」カランカラン…
ヤワな男「!?」
狼女「気持ち悪いからお前が持っとけ…」ポイ
ヤワな男「…」ボーゼン
狼女「売ればそれなりの金貨になるみたいだぞ?…それで食べ物を買えば飢えんで済む」
ヤワな男「…」
狼女「もうミルク達は宿を出んとダメなんだ…お前はどうする?」
ヤワな男「…」トーイメ
狼女「しばらく介護無いと弱って行くとか言われたんだが誰か居ないのか?」
ヤワな男「…」スゥ
狼女「おい寝るな」ユサユサ
ヤワな男「ぐあ…うぅぅ…」
狼女「済まん…痛むんだったな…」
ヤワな男「はぁはぁ…」グター
狼女「まいったな…どうするかな…」
ヒソヒソ ヒソヒソ
血で汚れた衣服が捨ててあったらしいが関係無いか?
いや…あいつは流血して無え
くそっ!何処に逃げやがった
おいマズイ!俺等兵隊に後を付けられてるぞ?
ちぃぃ一旦分かれて例の場所で集合だ
狼女「ふむ…お前…誰かに追われてるみたいだな?」
ヤワな男「…」トーイメ
狼女「放置すると多分捕まるな…連れて行っても良いが多分ここにはもう戻らんぞ?」
ヤワな男「…」ジー
狼女「なんでミルクがお前みたいな男の面倒を見てるんだろうな…いや違うな死にそうなのを放置出来んだけだ」
ヤワな男「…」フフ
狼女「む!?なんで笑ったんだ?」
ヤワな男「うぐぐ…」グイ
狼女「お?片腕は動くか…どうする気だ?」
ヤワな男「くぅぅ…」クイックイ
狼女「指で文字を書いてるのか?残念だがミルクは文字が読めん」
ヤワな男「あぁ…」シュン
狼女「まぁ手が動くならミルクの背中を撫でろ…そしたら食べ物を食べさせてやる」
ヤワな男「ふんがぁ…うぐぐ」サワサワ
狼女「ふむ…まぁまぁだな…そのまま続けてくれ」
『洋上_フリゲート船』
ザブン ギシギシ
学者「フーガ君!蒸気で温めたキラーポッドの樹脂を木槌で引き伸ばして行ってくれやせんか?」
ローグ「甲板の上でやると木目が付いちゃうけど良い?」
学者「そんなん後でどうにでも加工出来るんで良いっす…兎に角キラーポッドだと分からん様に樹脂板に変えとくんす」
ローグ「じゃぁ引き伸ばして行くね」トントン
女盗賊「弾丸はチェストボックスに入れて良かった?」
学者「そーっすね…錆びん様にだけ注意して下せぇ」
女盗賊「ふぅ…じゃぁ弾丸はこれで良しっと」
学者「大収穫でしたね?これでバヨネッタも全員分用意出来やすよ」
女盗賊「プラズマ銃の方は?これそのままじゃ使えないよね?」
学者「それは後で飛距離伸ばせんか研究しやす…威力は半分で良いんで飛距離欲しいっすよね」
女盗賊「私どうしようかなぁ…手が空いちゃった…」
学者「食事を作って貰えると助かりやすが…」
女盗賊「芋で良い?」
学者「そう言うと思って居やしたよ…バターとか買ってあるんで芋だけでも美味しく食べられやす」
女盗賊「じゃぁ芋を蒸かして来る」
学者「おなしゃす…樹脂の加工だけ終わらせたら休憩しやすかね」
ローグ「うん…昨夜から動きっぱなしで疲れたよ」
学者「これであとウラン結晶だけ手に入れば5年は安泰っすわ…」
ローグ「アンドロイドの話を聞いてそういう訳にも行かなさそうって思ったんだけど…」
学者「そんなヒュー・ストンに行く訳じゃ無いんで今まで通りっす」
ローグ「そうじゃ無くてハウ・アイ島の方」
学者「あぁぁぁ…ちっと情報何も聞けて無かったっすね」
ローグ「危なくない?」
学者「行く前にどこかの漁村で情報仕入れて行きやしょう」
ローグ「漁村の場所とか知ってる?」
学者「う…知らんす」
ローグ「ミファが海図持ってるから後で相談しよう」
学者「そ…そうっすねナハハハ」
『夕方』
アホー アホー バサバサ
学者「ミルクちゃん戻って来んすねぇ…」
女盗賊「ゲス!望遠鏡で見えてる?なんか兵隊がバタバタしてる…」
学者「見えて居やすよ…どうせ遺跡の盗掘に気付いて犯人探ししてるんす」
女盗賊「やっぱり船を動かしてて正解だったね」
学者「その内兵隊がスループ船に乗って積荷の確認に来やすよ…この感じだと明日っすね」
女盗賊「あそこにはもう何も残って無いから始めから無かったとは思わないかな?」
学者「いやぁ…石になった古代人をぶっ壊して居やすからね…てか開かずの扉に開けた穴も普通じゃ無いんで…」
女盗賊「あぁ…破壊の剣の切り口か…」
学者「綺麗にスッポリ穴が開いてるんで知見のある人が見たら怪しむと思いやす」
女盗賊「そういえばこっちにもピラミッドから盗まれた仮面を捜索にも来てるみたいだし…」
学者「もしかしたら同一犯とか勘違いしてるかもっすね」
女盗賊「ミルクが巻き込まれなければ良いけど…」
学者「小舟降ろしちゃったんで迎えにも行けんすよね」
女盗賊「私は水に沈まないから泳いで行ける…」
学者「この辺りはシーサーペント居るんであんま泳がん方が良いっす」
女盗賊「そっか…」
学者「ちっと島の方の見張りはミファさんに任せやす」
女盗賊「ゲスはどうするの?」
学者「早い所みんなのバヨネッタ用意した方が良いと思いやした」
女盗賊「何か戦闘を想定してる?」
学者「そーっすね…この辺だと豪族ってのがまだ力持ってると思うんで略奪とか始まりそうな気がしやす」
女盗賊「どうして?」
学者「昨日も宿屋の外でゴタゴタしとったじゃないすか…お宝がどこかにあると思ったら目ぼしいのを襲ったりするんすよ」
女盗賊「豪族…」
学者「装備の充実した海賊だと思って下せぇ」
『ゴールドラッシュ島_街道』
ゴトゴト ゴトゴト
兵隊「おい止まれ!何の荷物を運んで居る?」
狼女「なに?」ギロリ
兵隊「んん?若いな…銀髪か…」ジロジロ
狼女「荷物運んでちゃダメなのか?」
兵隊「確認だ…被せ物の中を見るぞ」バサ
ヤワな男「ぅぅぅ…」グター
兵隊「どういう事だ?怪我人を何処へ運ぶ?」
狼女「船に戻る所だ」
兵隊「どの船だ?」
狼女「沖で待機してる…小舟に乗ってそこまで行く」
兵隊「もう日暮れだぞ…」
狼女「じゃぁもう一泊宿に泊まれって言うのか?金が無いぞ」
兵隊「ふむ…入船料回避で沖に停泊か…それでどうして怪我人を運んで居るのかなのだが…」
狼女「じゃぁどうすれば良い?」
兵隊「どうして怪我をしているのか聞いて居る」
狼女「面倒くさいなお前…昨日喧嘩に巻き込まれて大怪我したと言ったら満足するのか?」
兵隊「昨日?」
狼女「どう見ても打撲の怪我だろう」
兵隊「ううむ…その他の荷物は食料と着替えか…」
狼女「もう行くぞ…忙しいから構わんでくれ」
兵隊「まぁ良い…賊がうろついて居るから気を付けるんだ…若い女が一人で荷車を引いて居ると目立つ」
狼女「背負って行けと言ってるか?」
兵隊「いや…それも目立つ」
狼女「それならお前が一緒に付いて来い」
兵隊「う…」
狼女「なんだ嫌なのか?」
兵隊「ええい仕方ない…」
狼女「おお!中々良い兵隊だな…」
兵隊「くそ…紛らわしいのに声を掛けてしまった…」ボソ
狼女「文句が有るなら別に一人で行くから良い」
兵隊「分かった分かった…荷車を押すから早く行け」
『港の桟橋』
ゴタゴタ
おい!勝手に荷を荒らさないでくれぇ
別に押収する訳では無い…確認だから大人しく従うんだ
狼女「これは何の騒ぎだ?」キョロ
兵隊「一般人には関係無い…お前の小舟は何処だ?」
狼女「あそこだ…一枚帆の奴だ」ユビサシ
兵隊「あれか…荷車は乗らんな」
狼女「そんな事分かってる」
兵隊「一応仕事だから小舟の中身も確認させてもらう」
狼女「好きにしろ」
ドーン ドカーン!
兵隊「む!!」ガバ
狼女「なんか沖の方で起きてるな…」
兵隊「これは招集が掛かりそうだ…悪いが俺はもう手伝えん…あとは一人でどうにかしろ」
狼女「助かったぞ」
兵隊「どの船に向かうか知らんが大砲の撃ち合いが始まりそうだから巻き込まれん様に気を付けるんだ…では!」ノシ
狼女「こんな真っ暗な海で小舟が動いてる事なんか誰も気にせんぞ」
ゴトゴト ゴトゴト
狼女「さて…荷物は小舟に乗せるとして」ゴソゴソ
狼女「荷車を小舟で引っ張れるかなんだが…沈んじゃうかなぁ」ザブザブ
プカプカ
狼女「おお…なんとか浮いてるな…よしよし」
狼女「後はワイヤーで引っかけておけばどうにかなりそうだ」
狼女「おい!助かりそうだぞ」
ヤワな男「…」フフ
狼女「なんだその顔…助けてやる代わりにしばらくミルクの世話をさせるからな」
狼女「さて…船に戻るか…」
『フリゲート船』
ザブン ギシギシ
女盗賊「あれはガレオン船かな…あの船で兵隊が捕えられたみたい」
学者「やっぱそうなりやしたか…荷物見られたく無い輩が抵抗した訳っすよ」
女盗賊「大砲撃たれたスループ船はもうダメみたい…」
学者「兵隊側があのガレオン船に負けない戦力持ってたとすると…ってあ!!気球が飛んでるじゃないすか」
女盗賊「あ…本当だ」
学者「おかしいっすね…あの気球はシン・リーンの奴っすよ」
女盗賊「もしかしてガレオン船はシン・リーンの船?」
学者「いや…シン・リーンはあんまガレオン船使ってるの見た事無いっす」
女盗賊「どういう関係なのか分からない…」
学者「ここは静観するしか無いっすね」
女盗賊「夜なのに他の船も帆を広げ出した」
学者「そらもうドンパチ始まっちまう感じなんで逃げやすよね」
女盗賊「あのガレオン船は兵隊を人質にとった形になってるけど…それでもドンパチ始まる?」
学者「う~ん微妙っすね…」
女盗賊「ちょっと待ってあのガレオン船…キラーマシンが乗ってる…」
学者「ええ!?」ドタドタ
女盗賊「間違いない…甲板の上に居るのはキラーマシン」
学者「ちょちょちょ…キラーマシンの部品はもう生産されて無いし人口筋肉もとっくに無くなっていやすよ」
女盗賊「又作られてたとしたら?」
学者「マジすか…」
”どうもその人型のドロイドが生産力を持ってるとか最近の話題ですよ?”
学者「まさかのまさか…アンドロイドが持ってる生産力ってキラーマシンを作ってるって事なんすかね…」
女盗賊「それを人間達に普及させてその後一気に裏切る…とか?」
学者「考えられやす…つまりキラーマシンを密輸してたって事っすよ」
女盗賊「買い取り先は何処だと思う?」
学者「シャ・バクダ付近の内陸の方っすね…フィン・イッシュから地下通路を使えばそこまで密輸出来やす」
女盗賊「こっちの大陸でキラーマシンが欲しい理由って何だろう?」
学者「内陸の森の方で機械と戦ってるみたいなんすよ…キラーマシン居ればちっこい弾丸跳ね返しやす」
女盗賊「分かって来た…あのガレオン船は話に聞く公爵という人の…」
学者「エト・ワイマー卿でしたっけ…その人はもう居ないんすよね」
女盗賊「じゃぁそのエト・ワイマー卿を操ってた誰か」
学者「いやぁぁここに来てそういう話はもう聞きたく無いっすね…なんでこう陰謀みたいな奴はいつまでも消えんのですかね…」
女盗賊「確かめ様も無いし関わらないのが一番か…」
学者「そーっすよ…俺っちはミファさん達を守るので精一杯なんで…」
ドタドタ
ローグ「ゲスさん!ミルクが戻って来る!」
学者「おお…良い所に戻って来やしたね…これで船を移動させられやすね」
ローグ「なんか小舟で何か引っ張ってるよ…荷上げが大変かも知れない」
学者「魚用の網使いやしょう」
ローグ「うん!用意する!」ドタドタ
『荷上げ』
ヨッコラセ ドッコイセ
狼女「なんか荷車がひっくり返ってるんだが…あの男落ちんか?」
学者「網に掛かってるんで落ちやしやせんよ」グイグイ
女盗賊「ミルク…あの人連れて帰って来たんだね」
狼女「放って置けないから…」
女盗賊「でも良かった無事で」
狼女「向こうの大きな船でなんか始まりそうだな?」キョロ
女盗賊「うん…ミルクは何か情報聞けて無い?」
狼女「気になる噂と言えば海上積み替え中に船を奪われたとかいう噂を聞いたが関係ありそうか?」
女盗賊「もしかしてあのガレオン船かなぁ?」
狼女「奪われた相手は海賊みたいだぞ?」
女盗賊「海賊と言っても誰がその人なのか…」
ガガーン ビビビビ
狼女「むむ!気球から雷が落ちたな…」
女盗賊「あの気球はシン・リーンの気球…ガレオン船の人と戦ってるんだ…」
ガガーン ビビビビ ピカー キラキラ
学者「うほほ…なんすかアレ…杖と魔石銃使われるとあんなんなるんすね…」
狼女「凄いな…光の雨が降ってるみたいだ」
学者「気球で気付かれん様に真上から接近して一気に雷落とす…こりゃ気を付けとかんとイカンすね」
狼女「魔石銃の飛距離が50メートルと言うのは嘘か?けっこう飛距離ありそうだぞ?」
学者「上から撃てば地面に落ちるまで届くみたいすね…多分水平距離が50メートルってだけっすよ」
狼女「そういう事か…」
学者「こりゃ巻き込まれる前に退避した方が良いっす…ボイラー動かすんで碇を上げて下せぇ」
狼女「分かった」
『10分後…』
バサ ググググ ギシ
学者「やっと動き出しやしたね…この船はボイラー暖まるのに初動時間掛かるのが弱点すね」
女盗賊「とりあえず沖に出て近くの島を目指すで良い?」
学者「漁村の場所とか分かりやす?」
女盗賊「う~ん…海図には記されて無いけど…大体どの島が漁村になりそうかくらいは分かるかも…」
学者「こっから先は島伝いに行く感じっすか?」
女盗賊「うん…陸地が無いから島を探しながら現在地確認する感じ」
学者「ほんじゃ結構彷徨っちまうかもっすね…」
女盗賊「多分そうなる…でも大丈夫!ミルクは鼻が良いから割と遠くの事も探せると思う」
狼女「雨が降らなければな…」
女盗賊「あれ?ミルクが言い出すと言う事は…」
狼女「もうすぐ雨が降るぞ」
学者「お!水が補給出来やすね…そう思って樽を多めに仕入れといたんす」
ローグ「ねえ!!この人いつまで甲板で寝転がして置くつもり?」
ヤワな男「はぁはぁ…」グッタリ
狼女「そこで良いぞ…ミルクも荷室より甲板で寝転がる方が好きだ」
ローグ「この人怪我してるし…もうすぐ雨も降って来るじゃないの?」
狼女「荷車をひっくり返して簡単な雨除けを作れんか?」
ローグ「ええ!?そんなので良いの?」
学者「なははは…ミルクちゃんの言う事を聞いて置きやしょう…確かにこの船の一番快適な場所は甲板っす」
ローグ「まぁ良いか…明るくなったら作ってみる」
『翌朝_曇天』
ザブ~ン ユラ~
学者「ふむふむ…割と順調に回復して居やすね…やっぱ黒曜石の矢尻取り出したのが大きいっすわ」
ヤワな男「う…ぁぁ…たす…かった」
学者「臓器の炎症が引いて行ってる筈なんで上手く栄養摂取出来ればもうちょい回復早そうっすわ」
ヤワな男「ど…どこへ…行く?」
学者「まぁまぁ…しばらく船旅なんでその間しっかり回復しやしょう」
ヤワな男「ふっ…」
学者「黒曜石の矢を受けてたって事は元々兵隊だった感じっすかね?」
ヤワな男「そう…だ」
学者「ほんじゃやっぱ7年くらい前に異形の魔物が攻めて来た時に受けた傷っすね…後遺症残って除隊した…」
ヤワな男「ふふ…その…通り…」
学者「いやぁ俺っちが居て良かったじゃないすか…全部黒曜石の矢尻は取り出しやしたよ」
ヤワな男「ありが…たい…俺は…生かされた」
狼女「むにゃー」ゴロン
学者「あらら…ちっと見苦しい感じになって居やすが見ないでやって下せぇ」
ヤワな男「ふ…ふふ…いたたた」
学者「腹圧かかると傷むんで笑うのはガマンっす」
狼女「んん!?」ムクリ キョロ
学者「お?ミルクちゃん起きやしたね?」
狼女「ゲス…何してる」
学者「診察っすよ」
狼女「そうだ…エリクサーと水を飲ませる時間だ」
学者「ちゃんとミルクちゃんが与えてくれてたんすね…心配せんでも俺っちが点眼しやした」
狼女「点眼?」
学者「エリクサーはそれで十分なんす」
狼女「そうだったのか」
ヤワな男「水…を…貰える…か?」
狼女「むむ!?話せる様になったな?」
学者「傷む筈なんで無理に話さんでも良いんすよ?」
狼女「用意しておいたんだ…飲め」キュポン
ヤワな男「むぐむぐ…」ゴクゴク
学者「あいやいや…なんか雑っすね…」
狼女「飲んでるから別に良いだろう」
ヤワな男「ぶはぁ…」
狼女「よし!背中を撫でろ…その後に食べ物を食べさせてやる」ゴロン
学者「ちょちょ…どういう事になってるんすか?」
狼女「今言った通りだ…背中を撫でたら助けてやると言う契約なんだ」
学者「アハ…なんちゅーか…ミルクちゃんの威厳とかどうなっちゃったんすかね?」
狼女「威厳と背中を撫でるのとどう関係する?」
学者「いやまぁ…別に良いんすけど…」---こりゃ血は争えんっすね---
狼女「早く撫でろ…」
ヤワな男「ふんがぁ!いたたた…」ナデナデ
『雨除け』
トンテンカン トンテンカン
ローグ「ふぅ…これでちょっとした雨除け…というか日除けかな…」
学者「荷車とボロ切れを組み合わせやしたか…」
ローグ「新しい布を使って良ければもう少ししっかり作れると思うけど…」
学者「まぁボロ切れで十分すよ…山賊が作る拠点てこんな感じなんすよね」
ローグ「あぁ…樽とか並べたらそんな風になりそう」
女盗賊「ねぇ…珍しくミルクが何か調理してるんだけど…」
学者「なんかこの人に背中撫でる代わりに食べ物をやるとか言って居やしたよ?」
ローグ「それは良い…一回撫でたら何度も要求されるからおいら逃げてるんだ」
学者「まだ痛くて体動かせんのですがねぇ…」
ヤワな男「お…俺の名は…カルアだ…」
学者「カルアさんすか…」
女盗賊「どうしてこんな大怪我に?」
ヤワな男「うぐ…うぅぅ」
学者「まだあんましゃべらせるのは早いっすね…もう2~3日待ちやしょう」
女盗賊「そっか…」
学者「ところでミルクちゃんが作る食事ってもしかして…」
ローグ「多分豆のスープ…味の無い奴」
学者「うへぇ…」
女盗賊「ま…まぁ消化には良さそうだからカルアさんが食べる分には…」
学者「フーガ君…ミルクちゃんとは別に魚でも焼いて食べやしょう」
ローグ「そうだね…網に魚掛かって無いか見て来る」スタ
『雨』
ポツポツ ザザー
学者「お?雨が降って来やしたね…暑かったんで丁度良かったすわ」
ローグ「装備品を脱いで来る」スタタ
学者「そーっすね…濡れながら甲板の掃除でもしやしょう」ドタドタ
女盗賊「ミルクも装備品濡れるから脱いで!」
狼女「他に着る物無いんだけどな…」ヌギヌギ
女盗賊「インナーまで脱げとは言って無い」
狼女「ところでもう鼻が利かんから敵が近寄っても分からんぞ?」
女盗賊「私が監視しておく」
狼女「寝てても良いか?」
女盗賊「寝る前に教えて…この雨はどの位続く?」
狼女「嵐にはならん…夜中降り続けて明日は多分晴れる」
女盗賊「おっけー」
学者「ミファさ~ん!!」ドタドタ
女盗賊「ん?」
学者「これ使って下せぇ…バヨネッタMK-2っす」
女盗賊「あれ?なんか小さい…」
学者「ミファさん用に小型化してるんす…本体が樹脂で弾丸も100発に減らしてるんでかなり軽いっす」
女盗賊「へぇ…おもちゃみたい」
学者「まだ照準を調整せんとダメなんすけど俺っちのバヨネッタと性能は変わらんすよ?」
ローグ「フフン…」スチャ
女盗賊「フーガも同じ?」
学者「実は鉄が無いんで俺っちと同じバヨネッタを作れんのですよ…まぁ樹脂は樹脂で良い所もあると思いやす」
女盗賊「これ今渡すと言う事は戦闘を想定してると言う事だよね?」
学者「そーっすね…昔雨で視界悪くなってから一気に海賊に襲われた事あるじゃないすか?」
女盗賊「う~ん…有ったような気もする」
学者「まぁ一応の備えっす…船に大勢乗り込まれてもバヨネッタなら追い返せやす」
女盗賊「ミルクの分は?」
学者「勿論用意してるんすが…」チラリ
狼女「むにゃむにゃ…」ゴロン ノビー
女盗賊「仮眠…と言う事で…」
学者「ナハハ分かって居やすよ…平常運転っすね」
『数日後…漂流物』
ターン! ターン!
女盗賊「やっぱり裸眼だと300メートルくらいが限界…」
学者「ふむふむ…望遠鏡無いとやっぱ無理っすか」
ローグ「全然当たらない…」
女盗賊「フーガこれ使って…そのバヨネッタは私が調整する」
ローグ「お願い…」
学者「まぁ向こうにスナイパー居無けりゃ300メートルで十分っちゃ十分すね…」
ターン!
狼女「軽すぎて撃った時にブレてる気がする…」ターン!
学者「それは何か対策出来そうっす…カウンターウエイト作ってみやすかねぇ…」
狼女「ところであの漂流物は何だ?樽にしては大きいし…」
女盗賊「ひっくり返った小舟に見えるけど?」
狼女「弾が当たった時に跳ね返された気がする…」
学者「ちっと確認して行きやす?」
女盗賊「寄せて行くね!フーガ!!寄せて行くから軽く帆を開いて」
ローグ「アイサー!!」ダダ
『謎の漂流物』
プカプカ ザブ
学者「お?お?お?これってもしかして…」
女盗賊「何か文字が書いてある…」
狼女「ゲス読めるか?」
学者「OV-245…こりゃ古代文字っす」
女盗賊「水に浮いてるって事は軽いって言う事だよね?」
学者「こいつは回収しやしょう…フーガ君!網を下ろして下せぇ!」
ローグ「アイサー!!」ダダダ
狼女「何なんだコレ?」
学者「多分なんすが古代の箱舟の一部っす」
狼女「良い物か?」
学者「調べて見んと分からんすけど素材としてメチャクチャ高性能な気がしやす」
狼女「バヨネッタの弾を弾き返してたもんな?」
ローグ「おりゃぁ!!」バサ ジャブン
狼女「ミルクちょっと降りて網を引っかけて来る」ピョン シュタ
学者「おお!!ミルクちゃん乗っても沈む気配無いっすね」
狼女「フーガ!網を引っ張っても良いぞ」ゴソゴソ
ローグ「ゲスさんも網を引くの手伝って…あれ?なんか軽いな」グイグイ
『甲板』
アーデモナイ コーデモナイ
おお…これメチャクチャ軽いじゃないすか
片手でもなんとか持てそうだね
裏側ってどうなって居やす?
何かの金属っぽいのが付いてるのと…フジツボが沢山
狼女「ふぅ…」ストン
ヤワな男「君達は…一体何者なんだ?」
狼女「何に見える?」
ヤワな男「海賊では無さそうだ…でもどうしてそんな重装備を…」
狼女「重装備?バヨネッタの事か?」
ヤワな男「いや…その他にも沢山銃器を隠して居る」
狼女「海賊から身を守るのに必要なだけだな」
ヤワな男「それにこの船もただの船と違う…機械の技術が使われて居る」
狼女「それは少し違うぞ…この船は海賊王が作ったんだ」
ヤワな男「海賊王…ドワーフの国出身だと?」
狼女「それも少し違うな」
ヤワな男「俺からしてみれば謎だらけ…」
狼女「簡単に言ったらお宝ハンター…古代遺跡を巡って旅をしてるだけだ」
ヤワな男「そうか…俺の見識が狭かっただけか」
狼女「お前は兵隊だったみたいだな?フィン・イッシュの兵隊か?」
ヤワな男「まぁフィン・イッシュと言えばそうなるが…本当はバレンシュタイン卿の私兵だった」
狼女「バレンは一緒に旅してたぞ」
ヤワな男「な…んだって!?痛たたたた…」
狼女「ミルク達はずっと後方支援だったけどな」
ヤワな男「いやそんな筈…君達はみんな若すぎる」
狼女「別に信じなくても良い…ミルクからしたらどうでも良い話だ」
ヤワな男「待ってくれ…借りにバレンシュタイン卿と同士だったとして君達の目的は一体…」
狼女「目的とか難しい事言われてもなぁ…生きるのに精一杯じゃダメか?」
ヤワな男「生きるのが目的…」トーイメ
狼女「狂った世界をどうにかしようとしてる人は他に居る…ミルク達はその人が帰って来るまで生き残るのが目的だ」
ヤワな男「フフ…納得したと言うか…俺もバレンシュタイン卿に言われたんだ」
狼女「なんてだ?」
ヤワな男「お前は生きろ…その時まだ俺は若かった」
狼女「バレンはそのまま敵に突っ込んで走り去って行く奴だぞ?」
ヤワな男「フフ…その通り」
狼女「お前もバレンみたいなタイプなのか?」
ヤワな男「既に衰えて戦士としてはもう二流に思う」
狼女「戦士か…」
戦士「君も身のこなし方からして戦士の様に見えるが違うか?」
狼女「君と呼ばれるのが気持ち悪い…ヤメロ」ムズムズ
戦士「では何と呼べば良い?」
狼女「みんなミルクの事をミルクって呼んでるだろう」
戦士「おほん!!ミ…ミルク…」
狼女「ううむ…様を付けた方が良いかも知れんな…」
戦士「ミルク様?」
狼女「う~ん…なんか違う」
戦士「君が呼びやすいんだが…」
狼女「ダメだ!君は禁止だ…背中の真ん中が痒くなる」ムズムズ
戦士「まいったな…」