15.初恋
『翌朝_ゴールドラッシュ島』
ガコン ギシギシ
学者「ちっと下船許可とどんな様子か話聞いて来やすね?」
女盗賊「待ってれば良い?」
学者「積荷の確認有るかも知れんので見られたく無い物は隠しといて下せぇ」
女盗賊「おっけー!!」
学者「ほんじゃ行って来やす」ドタドタ
ターン タタタターン!
狼女「むむ!!」キョロ
ローグ「この音はアサルトライフル…か?バヨネッタにしては大きい…」
狼女「又か…」
ローグ「ミルク…どの辺りで戦闘をやって居そうか分かる?」
狼女「遺跡の方だな…」
戦士「これは危ないから宿に泊まらない方が良い様に思う…というか俺はあまりうろつけない」
女盗賊「あ…そういえば金貨一袋で揉めたんだっけ」
狼女「ミルクはもう一回遺跡の方に行きたいんだ」
女盗賊「何をしに?」
狼女「ゴーグルを使ってアダマンタイトの在処を調べたい」
ローグ「そういえば隠された場所とかも探せるかも知れないね…ウラン結晶が残って居れば…」
狼女「どうするかな…巻き込まれるのも嫌だな」
ローグ「次の機会でも良いと思う…そんなに急いでる訳でも無いよね?」
狼女「うむむ…もう少しガマンするか…」
女盗賊「ガマン?」
狼女「何でもない…気にしないでくれ」
女盗賊「ふーん…」チラリ
---発作をガマン出来なくなる---
---多分そう言いたいんだ---
---月に行って先祖と話す---
---それが呪いを解く事だって信じてる---
---でも月になんか行く事は出来ない---
---どうにかしてあげないと---
学者「喜んで下せぇ!制限付きなんすけど下船おっけーっす!!」
女盗賊「制限?」
学者「遺跡の方で例の反体制派…なんすか?テロリストが立てこもってるらしいんで行くなって事っす」
戦士「俺は船に残る…奴らと顔を合わせたくない」
学者「ココアさんも籠りっ放しなんで置いて行きやすか!!」
女盗賊「何泊?」
学者「一泊予定なんで物資調達は今日中に終わらせて下せぇ」
狼女「よし!ミルクは威厳を確かめに行って来る」
学者「ちっと心配っすねぇ…」
狼女「どういう意味だ?」
学者「ゴタゴタ起こさんで下せぇよ?」
狼女「大丈夫だ…今度は威厳でどうにかする」
ローグ「まぁまぁゲスさん…おいらが見ておくから」
学者「頼んますよ?」
狼女「よし!行くぞ!!」シュタ
『露店が並ぶ広場』
ザワザワ ザワザワ
どうも島の向こう半分にミサイルってのが有るらしい
じゃぁテロリストはそれを奪いに来たのか?
国が調査対象とかいって占有してたのが問題みたいだ
学者「また物騒な話な様で…」スタ
女盗賊「賑わいが無くなっちゃったね?」
学者「しゃーないっすよ…きっと死人も出てるでしょうからねぇ…」
狼女「ゲス!ミルクはそこのベンチで聞き耳立ててる」
学者「お?その方が情報集まりそうっすね…」
女盗賊「じゃぁ私もミルクと一緒に居ようかな…」
学者「俺っちは一旦宿屋に入って前に行った酒場で情報収取しやす…アンドロイドのクエストをもうちょい詳しく知りたいんすよ」
女盗賊「分かった…後で合流するのは宿屋かな?」
学者「そーっすね…フーガ君は俺っちと一緒に来て貰えやす?」
ローグ「え…うん…」
学者「ちっとフーガ君にもお願いしたい事有るんすよね」
ローグ「何だろう?」
学者「まぁ先に宿屋に入りやしょう…ここじゃ誰に話聞かれるか分からんので」
ローグ「そうだね…」
学者「じゃぁミルクちゃんも気を付けて下せぇね?」
狼女「何も起こす気無い!大丈夫だ」
学者「へいへい…ほんじゃフーガ君行きやしょうか」スタ
『ベンチ』
ザワザワ ザワザワ
こりゃ商売上がったりだな
ポーションの類は品切れ気味らしいぞ?
戦闘が落ち付くまではこの状態が続くな…売り場変えた方が良い
じゃぁフィン・イッシュまで移動するか?
あっちは価格が不安定で大損こく可能性がある…やっぱ商人ギルドが無いとダメだな
利益ないままバン・クーバー戻るのもなぁ…
シュタタタ
女盗賊「ミルク?生肉仕入れて来たヨ?今度はシカ肉」
狼女「んん?うん…」
女盗賊「あれ?何か元気無い?」
狼女「威厳を確かめたかったのに誰にも声掛けられん…」
女盗賊「なんだそんな事か…」
狼女「大事な事だ…」
女盗賊「大丈夫…ミルクは大人になって来てるから」
狼女「前に来た時は此処でカルアに会ったんだ」
女盗賊「金貨5枚か…」
狼女「なんだろうな…カルアに撫でられてた方がマシだな」
女盗賊「どうしたの?寂しい?」
狼女「違う…どうでも良い噂話を聞きたくないだけだ」
女盗賊「じゃぁココアさんと交代すれば良い…ジャンク屋を探したいとか言ってたから」
狼女「そうするかな…」
女盗賊「カルアさんに少しお土産買って一回船に戻ろうか」
狼女「カルアは何が好きなんだ?」
女盗賊「ミルクの方が詳しいんじゃないの?」
狼女「しまったな…ミルクの話ばっかりしてカルアの話を聞いて無かった」
女盗賊「じゃぁ聞いてみよう!」
狼女「うむ…」スック
女盗賊「フフ…」---多分---
---ミルクの初恋---
---自分で気付いて無い---
---彼が居ないと何をしても詰まらないだけ---
---ミルクは発作の事を気にして他人とは深く付き合わない---
---可哀想に---
『フリゲート船』
ザブン ギシギシ
戦士「んん?どうした?忘れ物か?」
狼女「ミルクとココアが交代する」
戦士「おお!ココアは置いて行かれて拗ねていたぞ」
女盗賊「また荷室に籠ってる?」
戦士「いつもの様に機械いじりだ…呼んで来るか?」
女盗賊「自分で行く…なんかミルクは背中を撫でられたいみたいだから宜しく」
戦士「まだ昼にもなっていないぞ?寝てしまうのではないか?」
狼女「カルア!話が有る…尋問だ」
戦士「尋問…俺は何かしたか?」
女盗賊「じゃぁカルアさんよろしく!!」スタタ
戦士「あ…あぁ…」タジ
狼女「まず好きな魚は何だ?」
戦士「魚?」
狼女「好きな肉でも良い…なんなら生のシカ肉があるぞ?」
戦士「いや…シカ肉は良いが生では食べない」
狼女「じゃぁ今から焼くぞ」
戦士「まぁそれなら…ん?もしかして俺が準備するのか?」
狼女「ミルクは肉を自分で焼いた事が無い」
戦士「まぁ良い…炉と炭を用意すれば良いんだな?」ドタドタ
狼女「ミルクは小麦練ってパンを焼く」
戦士「ほう?パンに肉を挟んで食べるか…それも良い」
女盗賊「…」コソーリ
---フフ…やっぱりミルクはこっちの方が楽しそう---
---このまま穏やかに過ごせれば良いな---
『立ち合い』
カン カン コン
連撃はこの様に相手に読まれない様に剣筋を変えながら切る
これがハーフソードと言う技…そしてこれがダブルスタブと言う技…
盾を持った相手には特に突きを上手く当てて行くのが重要だ
狼女「ふぅ…剣圧が強くて受けきれん」
戦士「まぁ体重差だから仕方が無い…ミルクは随分軽いな?」
狼女「太れって言ってるか?」
戦士「いや…そのまま速度を生かしながら戦うのも良い…ただ掴まれてしまった場合は弱いから気を付けるんだ」
狼女「分かってる…」
戦士「銃の撃ち合いでなかなか接近戦にはならないと思うが一応訓練はしておくべきだな」
狼女「カルアの剣はどの位の腕前なんだ?」
戦士「剣豪には到底敵わない…まぁ兵隊の中では上位という位か」
狼女「剣豪というのはフィン・イッシュのサムライか?」
戦士「そうだ…アレは特殊な訓練をしていて全く勝てない…まぁ兵隊の俺とは役割が違うんだ」
狼女「カルアはどんな役割を?」
戦士「戦線の維持…盾を使って味方を守る…剣を使うのは二の次なんだ」
狼女「なるほど…」
戦士「これからの時代は剣じゃ無く銃器に変わって行くのだと思う…でも盾の役割は変わらない」
狼女「カルアは銃を…ミルクは剣を学べば丁度良さそうだ」
戦士「剣を学ぶのはただ技術を学ぶのでは無いぞ?」
狼女「じゃぁ何を学ぶ?」
戦士「一言で言うと人間性か…礼儀とか作法とか…忍耐力も集中力も…」
狼女「おおお!それだ!!ミルクの威厳だ!!」
戦士「そう言うのも身に付くと思う」
狼女「よし!毎日やるぞ!!」
戦士「俺も衰えた体を少し取り戻したいと思っていた…訓練に付き合うか?」
狼女「訓練…何する?」
戦士「そうだな…まず基礎体力か…船の掃除とか丁度良さそうに思うけどね」
狼女「う…」
戦士「こういうのは競い合いながらやると苦痛を感じないで済む…俺と勝負してみるか?」
狼女「分かった…ミルクが勝ったら背中を撫でて癒せ」
戦士「じゃぁ俺が勝っても背中を撫でてくれ…それで良いな?」
狼女「よし!負けんからな!!」
『夕方』
ヘロヘロ ドター
狼女「もうダメだ…死ぬ」グター
戦士「ハハハ俺の勝ちだな?約束通り背中を撫でて貰おう」
狼女「ズルいぞ!体重差が不利だ」
戦士「約束は約束…俺も背中を撫でてみて欲しかったんだ」
狼女「ぐぬぬぬぬ…」サワサワ
戦士「おお…なかなか気持ち良い…」ノビー
兵隊「おおおお~い!!」
戦士「んん?」ムクリ
兵隊「積荷の確認をさせてもらいたいんだが船に上がっても良いか?」
戦士「あれ?入船料を払っているのだが?」
兵隊「一応密輸の取り締まり中なんだ…理解して欲しい」
戦士「まぁ…仕方が無い…」
狼女「勝手に持って行くのは無しだぞ?」
兵隊「対象の物が乗って居なければ直ぐに立ち去る」
戦士「一応立ち会う形で良いな?」
兵隊「まぁ良かろう」スタ
戦士「ミルクはここで横になっててくれ…俺が兵隊に立ち会う」
狼女「分かった…」
兵隊「見張りは2人か…荷室まで案内してくれ」
戦士「こっちだ…」スタ
狼女「…」グター
『荷室』
ドタドタ
兵隊「ふむ…見当たらんな…」キョロ
戦士「何の密輸を?」
兵隊「ミサイルだ…例のテロリストがどうやってミサイルを運び出すのか分かって居ないんだ」
戦士「じゃぁ全然関係無いな…」
兵隊「その様だ…しかし一つ気になる」
戦士「何か?」ドキ
兵隊「檻の中で拘束されてる女が横になって居るだろう」
戦士「あぁ…」
兵隊「奴隷取引は違法だぞ?」
戦士「ウェアウルフなんだ…暴れ出されると困るから檻に入れてる」シラジラ
兵隊「そう言う事か…ウェアウルフを捕らえてると言うのはフィン・イッシュで心象良くない行為だが?」
戦士「見た通り痛めつけてる訳では無い…急に暴れられても困るから拘束してる」
兵隊「ふむ…確かにその様だな…」
戦士「今静かに寝ている所だから騒がないで欲しい」
兵隊「分かった…しかしお前妙に落ち着いて居るな?」
戦士「俺も元はフィン・イッシュの兵隊だ…事情は分かる」
兵隊「おお!?どの部隊に?」
戦士「大きな声では言えんがバレンシュタイン卿の私兵として仕えていた…負傷して戦えなくなったから除隊されたんだ」
兵隊「そうだったか…その話をし始めると言う事は事情を何も知らない様だな…」
戦士「んん?何か?」
兵隊「今回のテロリストはバレンシュタイン卿が関わって居るかも知れないらしい」
戦士「えええ!!?そんなバカな…」
兵隊「まぁ…今その名前を出すのは良くないとだけ教えておこう…要らぬ疑いを持たれる」
戦士「それは教えて貰って感謝する…」
兵隊「事件に関わって無さそうで良かった…積荷の確認はこれで終わりにする」
戦士「それはどうも…」
ターン!!
兵隊「ムム!!近いな…」
戦士「おっと!?何か起きてるか?」ドタドタ
『甲板』
ゴロゴロ グター
戦士「ミルク!!今銃声が聞こえただろう?」ドタドタ
狼女「そうだな?向こうの方で誰か撃たれたみたいだ」
戦士「見て居なかったのか?」
狼女「ミルクは疲れて横になってただけだ」グター
兵隊「私は様子を見て来る…これは積み荷の確認済みを示す張り紙だ…見易い所に貼って置いて貰いたい」パサ
戦士「あぁ…預かって置く」
狼女「…」ジロリ
兵隊「では!!」ビシ
狼女「…」シラー
タッタッタ
狼女「カルア…こっちに来い」
戦士「どうした?」スタ
狼女「耳を貸せ…」
戦士「んん?」ソローリ
狼女「あの兵隊は敵だ…これから奪う船を物色に来てる」ヒソ
戦士「何だって!?」
狼女「声が大きい」ヒソ
戦士「済まん…」
狼女「遠くで話してたあの兵隊の仲間をミルクが撃ったんだ」ヒソ
戦士「そんな事をしてバレたら只じゃ済まんぞ?」
狼女「今からミルクが宿屋まで走ってみんな連れ帰って来る…小舟を置いて船を少し沖へ流せ」
戦士「兵隊が敵とはどういう事になってるのか…」
狼女「良いから今すぐ動け!ミルクは走って来る!」ピョン シュタタ
『宿屋_大部屋』
ガチャリ バタン
学者「どわっ!!ノックぐらい出来んすか?」ドキドキ
狼女「今すぐ移動だ…緊急事態だから急げ!」
学者「ななな…何か起きやしたかね?」
狼女「船が奪われる…逃げるぞ!」
学者「えええ!?」
女盗賊「ミルク!何が起きてるの?」
狼女「話は後だ!ミファ!今妖精は要るか?」
女盗賊「寝てるけど…」
狼女「起こして近くの兵隊を全部眠らせてくれ」
女盗賊「ミルクの妖精は?」
狼女「もう働かせてる!早くしろ!行くぞ!!」シュタタ
『街道』
タッタッタ
女盗賊「気球が飛んでる…」スタタ
狼女「マズいな…あれに取り付かれると雷を撃たれる…」
学者「ちっと敵が誰だか分からんのですが…」
狼女「指名手配になってるかも知れんとか言ってたのはゲスの方だろう」
学者「ちょ…」
女盗賊「私達狙われてる?」
狼女「知らん!兵隊がミルク達の船を奪う作戦を話してた…命令がどうとか言ってた」
学者「命令…ほんじゃ兵隊は上の指示に従ってるだけっすね?」
狼女「シン・リーンの気球も同じ事になってると思う」
学者「あたたたた…」
機工士「もうアンドロイドは通信していないぞ?」
学者「別のアンドロイドに記憶を移すとか出来たりしやせんか?」
機工士「ええ!?」
狼女「それだな…ミルク達の行先を予測して別のアンドロイドが動いてるんだ」
学者「こりゃ厄介な事になっちまいやしたね…」
狼女「兎に角逃げるぞ…走れ!」シュタタ
『桟橋の小舟』
ユラユラ
狼女「よし!兵隊は居無いな…早く乗れ!」
女盗賊「気球が高度上げてる…真上から来そう」
学者「ちっと遠いっすね…」
狼女「あんな高高度から雷が届くか?」
学者「分からんす…落雷なんで下まで落ちて来そうっすね…」
機工士「あ!!雷なら避雷針に落ちる…」
学者「おおおおお!!ほんじゃ雷に当たったフリをしながら接近してくるの待てそうっすわ」
女盗賊「採用!それで行こう」
学者「よしよし…船まで20メートル…なんとかなりそうっすね」エッホ スイー
狼女「他の船からも何かされるかも知れんから気を付けろ」
女盗賊「動いてる船が多くてどれが敵なのか…」キョロ
学者「近付いて来る船は敵だと思いやしょう」
ローグ「おいら先に上に上がるよ?」パシュン シュルシュル
学者「ココアさんはワイヤー持って無いんで俺っちと一緒に…」パシュン シュルシュル
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『フリゲート船』
バサバサ グググググ ユラ~リ
女盗賊「よし!風拾った…」
学者「なんか気球が高度下げて来んのですが…」
狼女「作戦と違うから混乱してるのかもな」
学者「作戦?」
女盗賊「兵隊はどういう作戦の話を?」
狼女「夜になったら一気に船を奪う話だ…その話をしてる時にミルクが一発バヨネッタを撃った」
学者「あらら…兵隊を撃つのはマズいっすね」
狼女「鎧に弾かれたから死ぬみたいな事にはなって無い…鉄がかなりへこんだくらいだ」
戦士「異常に気付いた兵隊達が集まり始めてみんな倒れたのを見たぞ?」
女盗賊「あ…眠ったんだね」
学者「なるほど…向こうにしてみれば何が起こったか分からんもんで手を出せんくなった訳っすね?」
狼女「兎に角逃げられて良かった…怪我人も出てない」
学者「いやしかし…これでかなり動きにくくなったのが分かりやした…」
戦士「反体制派うんぬんに関わって居る場合では無い様だ」
狼女「その反体制派はどうも豪族とか簡単な括りじゃ無さそうだぞ?」
女盗賊「どう言う事?何か情報掴めてる?」
狼女「ミルクが思うに機械に操られてる派とそうでない派だ…豪族は操られて無い派なんじゃないか?」
学者「そんなん言われると良く分からんくなりやすね…」
戦士「ミルクの意見も一理ある…今回兵隊は機械に操られてたと考えれば済み分けが分かりやすい」
学者「つまり遺跡を占拠してるテロリストは良い者の可能性が有る訳っすね?」
狼女「そう考えるとカゲミは機械に協力しようとしなかったから商人ギルドを解体させられたのかもな?」
学者「いやぁぁ…ややこしいっすね…」
女盗賊「多分それも機械の戦術ね…そうやって人間を分断してる」
学者「やっぱ兄貴に衛星の打ち上げを成功させて貰わんとダメみたいっすね…」
女盗賊「ハッキングし返すという意味はコレね…」
『ミルクの檻』
ガチャリ ギー
狼女「…」スタ
学者「ミルクちゃん何する気っすか?」
狼女「こいつ本当に動かないのか?」ペチペチ
アンドロイド「…」シーン
学者「分からんす…メインエネルギーはもう無いんで体が動く事は無いと思いやす」
狼女「なんかずっと監視されてるみたいな気がする」ゲシゲシ
学者「その可能性は否めんのですがもう通信する手段も無いんで何も出来んすよ」
狼女「皮がめくれてた手足も治ったみたいだな」ジロジロ
学者「治ったっちゅうか手袋と長靴はめ直しただけなんすけどね」
狼女「つなぎ目が無いぞ…どうなってる?」
学者「ホムンクルス生体の特徴なんすね…接触してる物と同化していくんで傷が繋がるんすよ」
狼女「ミファの体とちょっと違いそうだ」
学者「俺っちも仕組みが良く分からんす…ミファさんの場合は出血するんでそれが傷を繋げるのを阻害してるのかも知れんす」
狼女「まぁ良いや…それよりこいつが居るとミルクが檻に入れんぞ?」
学者「んん?満月の時を心配していやす?」
狼女「また満月が来る」
学者「それまでにこいつを売っ払っちまいやすよ」
狼女「お?買い手が分かったのか?」
学者「フィン・イッシュの娼館に話をすれば良いみたいっす」
狼女「娼館…」
学者「確か忍びが管理してる筈なんすよ」
狼女「ふーん…なんで忍びがアンドロイドを求めてるんだろうな?」
学者「忍びは絶対機械と関わって無いんで弱点を探したいとかだと思いやすよ?」
狼女「絶対関わって無いってなんで分かる?」
学者「古きしきたりを守り続けてるのが忍びっすね…妖術とか呪術とかそっち系なんすよ」
狼女「魔法は無くなったのにそれが残ってるのは良く分からん」
学者「全然別物みたいっすよ?呪術とか言ってもお札に何か書いたお守りみたいなもんなんすけどね」
狼女「その取引が終わったらアランの隠れ家に帰るんだな?」
学者「一応そのつもりっす…冬まではもうちょいありやすけどね」
狼女「じゃぁ帰りにもう一回エジ・プト遺跡を見に行くぞ」
学者「仮面を盗まれた騒動が納まってりゃ良いすけどね…」
狼女「次のウラン結晶の目星も付けておきたいんだ」
学者「ヘッドギア入手したんで今度は探すのラクっすね」
狼女「もしかしたらもっと簡単な所に隠れてるのも有るかも知れんな」
ピ… ウィーン シュッシュ…
狼女「むむ!!?」
学者「やっぱこいつ…」
狼女「目が動いたな…ピントを合わせた感じだ」
学者「左耳の後ろにCMOSっていうスイッチがあるんでそれを押すと止まる見たいす…」
狼女「どれだ?」ゴソ
学者「小さいんで分かり難いんすけど…」
狼女「有った…これだな…」カチ
アンドロイド「…」シーン
狼女「なんだろうな…囚人を殴って大人しくさせたみたいな気分になる…」
学者「人の形してるんでそう思っちゃうんすよ…精神衛生上良く無いんで離れときやしょう」
狼女「…」スタ
学者「檻を閉めときやすぜ?」
ギー ガチャン
学者「甲板に上がりやしょうか」
---どうもミルクちゃんは---
---傷付いてる誰かを放って置けないタイプなんすね---
---変に感情移入せんと良いんすが---
『甲板』
ザブ~ン ユラ~リ
機工士「もう見えないけどどのくらい飛んだ?」
女盗賊「1キロくらい?空は相対距離が分からないなぁ…」
機工士「一応成功…かな?」
ドタドタ
学者「どうしたんすか?もしかして気球に追われてたりしやす?」キョロ
女盗賊「違う違う…フグの風船に風の魔石使ってヘリウム入れて飛ばしただけ」
学者「お?例の遠隔操作する奴っすか?」
機工士「まぁ…自由には動かせないけど爆発させるくらいなら一応は…」
学者「火薬が無いんすよね…」
女盗賊「毒を使うと言うのは?」
学者「それは俺っち賛成出来んす…誰が被害被るか分からんすよ?」
女盗賊「じゃぁやっぱり火薬が欲しいか…」
学者「硫黄が入手出来たらどうにか作れたんすけどねぇ…てか毒も大抵硫黄が必要になりやす」
女盗賊「どっちにしてもダメだったんだね」
学者「只の風船だと何処に飛んでっちゃうか分からんのじゃないすか?」
機工士「それも今後の課題だよ…どうしようか考えてる」
女盗賊「ええと…ちょっと全然違う話になってしまうけれど…妖精がその風船に乗りたいとか言ってるんだけど…」
機工士「え…」
学者「ナハハハ…またエライ斜めな所から発想が来やしたね…」
女盗賊「もしかしたら妖精を乗せて飛ばせば気球に乗ってる人を眠らせられるかも知れない…」
学者「めちゃシンプルで良さそうな作戦っす」
ローグ「フグの風船に乗った妖精か…絵になりそうだ!!」