1.エジ・プト遺跡
5年の月日が流れた…
魔法が封印されて世界は平和になったのか?
残念な事にそうはならなかった
日増しに機械が脅威になって行った
人間達は機械と戦う術を一つ無くして居たのだ
戦う為には資源が必要だった
それらの資源を巡って再び人間同士の対立が始まろうとして居る
子供達はそんな世界を横目に
自分たちが生き残る為にやはり資源を求める
エネルギー密度の高いウラン結晶を求めて
古代遺跡巡りをしていたのはあの時の3人の子供達
ミルク、ミファ、フーガ
3人の物語が始まる…
『エジ・プト遺跡』
此処はシン・リーン領だ
考古学者による調査が一通り終了して一般人でも立ち入りが出来る様になっていた
その噂を聞き3人は様子を見に来ていた
ただ想像して居た遺跡とは違って居た
狼女「これはダメだな…ウラン結晶が眠ってる遺跡とは違うぞ」キョロ
女盗賊「何処かに開かずの扉が有るかも知れない…って考えるのは?」
ミファは女盗賊になった
と言っても成人の女性の姿では無い…あの時から少し成長しただけの子供の姿のままだ
でもそれが盗賊業として都合の良い時もある
狼女「う~ん…何か違うな…お宝の匂いがせん」
女盗賊「神殿とか沢山有るみたいだけどどうする?」
狼女「一応見るだけ見て行くかぁ…でもちょっと作戦練り直さないとなぁ…」
女盗賊「フーガ!一応壁画とかスケッチ取って置いて」
ローグ「へいへーい…」スラスラ カキカキ
フーガは短剣使いのローグとなっていた
幼少時代の栄養不足から恵まれた体形には育たなかった
どこか陰のある線の細い体付きだが器用さが有り何でも出来る
この3人の中で常にサポート役をこなして居た
女盗賊「ええと…ガイドマップによると…大体20キロ圏内に点在してるみたい」ペラペラ
狼女「それいくらで買ったんだ?」
女盗賊「金貨5枚…結構高かった」
狼女「銀貨じゃなくて金貨か…高過ぎるな」
女盗賊「お宝が見つかればすぐに元が取れると思って買っちゃった」
狼女「シン・リーンはこの遺跡を観光資源として利用してるみたいだな…多分ラクダを借りるのも高いと思うぞ」
女盗賊「じゃぁ20キロを歩く?」
狼女「ちょっと考え直そう…一旦カイロまで戻って仕切り直しだ」
女盗賊「フーガ!…だってさ?スケッチは軽くで良いよ」
ローグ「もう少し…半分おいらの趣味だから…」サラサラ スラスラ
フーガは画を描くのが上手かった
こうやって書いた画は彼の小銭を稼ぐ手段にもなっていた
無駄使いばかりする女2人とは対照的に彼は堅実に稼ぐタイプだ
『遺跡の町カイロ』
この町はエジ・プト遺跡へ行く為の玄関口になっていた
石造りの古代遺跡が多く残っており、考古学者達が休憩所変わりに使って居たのがやがて町の様になった
海に面して居る便もあり船から降ろされる物資も多く流通する…観光地へと変貌しようとして居た
狼女「はぁぁぁやっぱり海に近いと涼しいな…」ヘロヘロ
女盗賊「少し歩いただけで喉がカラカラ…水も調達しておかないと遺跡巡りは厳しいみたい…」
狼女「ミファ?あとどのくらい金貨残ってる?」
女盗賊「5枚…ミルクは?」
狼女「金貨は2枚…あと銀貨が少し」
女盗賊「…」ジロリ
ローグ「ちょ…又おいらの懐をアテにして…」タジ
狼女「どうする?宿に入る?それとも船に戻るか?」
女盗賊「多分宿も高いから休憩は船の方でしよう…少し町を見回って日暮れまでに船に戻る…それでどう?」
狼女「分かった…そうだミファ?さっきのガイドマップ貸して」
女盗賊「これまだ売れるから汚さない様に…というかミルクはこういう書物興味が無いんじゃ?」パサ
狼女「なんか…壁画に書かれてた模様が少し気になった」
ローグ「あ…おいらも気付いたよ…古代の神様はウェアウルフだったのかも知れないと思った」
女盗賊「そういう話なら考古学者が多いから調べられるかも知れない」
狼女「ハハが昔ウェアウルフの起源について調べてたんだ…もしかしたら関係してるのかも知れない」
女盗賊「一応情報は集めておくよ…フーガは私と一緒に来て」
ローグ「うぃーっす!」
ミファの姿は他人には子供に見える
だから酒場などに情報を集めに行く時は他の大人と一緒に行く必要が有った
しかしこれが意外と上手く行く
多少の問題を起こしても子供がやった事…で済まされるのだ
女盗賊「じゃぁ日暮れに…船の方で」ノシ
『桟橋_フリゲート船』
ザブン ギシギシ
狼女「ゲス!!居るか!?」スタタ
学者「おろろ?帰りが早すぎやせんか?」
狼女「ちょっと作戦変更だ…ウラン結晶が有りそうな古代遺跡じゃ無さそうだ…」
学者「あらら…やっぱそんな感じっすか…」
狼女「船の方は何事も無かったか?」
学者「なーんか怪しんで何人か見に来たんすが追い返しやしたよ…ほんでミファさんとフーガ君は一緒じゃ無いんすか?」
狼女「ちょっと町の方に情報集めに行ってる…日暮れまでには戻って来ると思う」
学者「ほんじゃミルクちゃんが船の番をしてくれるんだったら俺っちも買い出しにちっと出やすかねぇ」
狼女「こんな所で何か買えるのか?」
学者「ここら辺は魔石が安いんすよ…出来るだけ沢山買って他で売れば儲けられるんす」
狼女「あぁ…魔石か…そういえばミルクにも必要だったな」
学者「ほんじゃ俺っちも少し船を降りやすね…そうそう…いつものエリクサー点眼するの忘れんで下せぇ」
この男…ゲシュタルト
子供達の面倒見役に収まって居る
何故ならライカンスロープ症を患って居るミルクと
ホムンクルスの肉体を与えられたミファの2人には継続してエリクサーを与える必要が有ったからだ
そしてこのフリゲート船は彼らが家替わりとして使う為にアランクリードから与えられた船だ
このフリゲート船を拠点としながら古代遺跡を巡りウラン結晶を探す旅に出て居たのだ
学者「あ…そうそう…頼まれてたワイヤー装置の修理終わりやしたぜ?」
狼女「おお!やっとか…何がダメだったんだ?」
学者「バネが伸びきってたんす…代わりに圧縮空気使うタイプに改造したんでワイヤーの射出具合変わってるっす」
狼女「じゃぁ少し試しておかないとな…ていうかそれだと魔石が必要になるな」
学者「それはしゃーないっすね…バネを使ってる骨董品なんかもう探しても見つからんすよ…バージョンアップしたと思って下せぇ」
狼女「又魔石の消費が増えるのか…」
一般人が手に入れられるエネルギー資源として魔石が流通していた
シン・リーンの主な収入源だ
その製造法は高度な錬金術を用いるらしい
用途として魔石を杖に仕込んで炎や雷などのエネルギーを発射する事が出来る
そして最近では魔石銃という武器も登場してきた
機械と戦う為にはその様な武器が必要だったのだ
学者「じゃ行って来やすね」ノシ
『カイロの町_街道』
ワイワイ ガヤガヤ
冒険者なのか…考古学者達なのか…
恐らく古代遺跡へ向かう為に必要な物資を買って居るのだろう
街道には多くのテントが並び露店商が商売をしていた
学者「なんちゅーか…ベタな雰囲気っちゅうか…」キョロ
ごろつき「おいお前…俺の顔を忘れたとは言わせ無えぞ」スラーン チャキリ
学者「ちょちょ…もしかして俺っちを付け狙って来やしたかね?」タジ
ごろつき「桟橋に船泊めてんだろ…燃やされたく無かったらショバ代払って貰おうか」
学者「何言ってるんすか…ちゃんと入船料は払ってるって言ってるじゃないすか」
ごろつき「どうも痛い目を見無いと分からない様だ…お前等!囲め!」
ゾロゾロ
人影から人相の悪い男達が集まり始めた
学者「あいたたた…」---バヨネッタ置いて来ちまったぁ---
ごろつき「さぁて…この人数相手にやるのか?」ニヤリ
学者「分かりやしたよ…いくら払えば良いんすかね?」
ごろつき「一日当たり金貨2枚だ…そんだけ払えば船の安全は確保してやる」
学者「うほほ…なんかメチャクチャ高いんすが…ほんで船に何かするのってあんた達っスよね?」ジロ
ごろつき「うるせえこの野郎!それがここらのルールだって覚えておけ」
シュタタタ ピュー
女盗賊「ほっ!!ほっ!!」シュタタ
学者「お!?ミファさん…ちっと今取り込み中で危ないっすよ?」
女盗賊「この人達誰ぇ!?知り合い?」
ごろつき「こんクソがき!勝手に俺らの懐に入って来るんじゃ無え!」
女盗賊「ほっ!!」スッ
ごろつき「ごるあ!!勝手に持ち物を覗くんなってんだ!!」
学者「あいやいや…分かりやした分かりやした…とりあえず金貨2枚払うんで一旦引き上げて下せぇ」チャリン
ごろつき「分かりゃ良いんだ…明日も来るからな?」
学者「へいへい…」
ごろつき「それからチョロチョロしてるクソガキもしっかり躾けて置け!ウハハハハハ」
学者「…」ポカーン
女盗賊「えへへ…」ニッコリ
学者「ええと…フーガ君はいつもの様に後方で狙撃狙っていやすかね?」
女盗賊「もう撃つ必要無いみたい」
学者「いやぁぁさすが兄貴に仕込まれただけ有りやすね…ほんで何をスリやした?」
女盗賊「ここで広げるのも良く無さそうだから付いて来て」
学者「そーっすね…俺っち良く分からんので案内して下せぇ」
『路地裏』
ひぃふぃみぃ…
学者「おおお結構持って居やしたね…40枚くらいっすか」
女盗賊「これ金貨で持ってると又難癖付けられるから何かに変えた方が良いね」
学者「丁度魔石を買い入れにと思って船から降りて来たんすよ…売ってる場所分かりやす?」
女盗賊「その路地を右に曲がって突当りの露店…値切りは得意じゃ無いからゲスがやって」ユビサシ
学者「そら俺っちの得意分野っす…ちゃっちゃと魔石に変えちまいやしょう」
女盗賊「それで…さっきのごろつきはどうしてゲスに絡んでたの?」
学者「船を停泊させてるんでショバ代をみかじめに来たんすよ…只のたかりっすね」
女盗賊「じゃぁ船を少し沖に出さないと仕返しに来ちゃうな…」
学者「ちゃんと入船料は払ってるんすけどねぇ…」
女盗賊「ふむふむ…これもシン・リーンの資金源なのかも知れないなぁ」
学者「ショバ代なんてみみっちい稼ぎ方しやす?」
女盗賊「グルになってると言うか…」
学者「まぁ資金循環の為にそういうの放置してるってのは考えられやすね…船持ってる人って一般的には金持ちっすからね」
女盗賊「私達はお金持ちに見られてる?」
学者「漁船には見えんですし…海賊船にも見えんでしょうから何か運んでる商人に見えてると思いやすぜ?」
女盗賊「目を付けられる前に移動した方が良いか…」
学者「商工会に入ればもうちっと違うんすけどね…相場強制されたり色々面倒もあるみたいなんすがね」
女盗賊「そう言うのには関わらない…とりあえず少し沖に船を出して小舟を使う様にしよう」
学者「分かりやした…俺っちは魔石仕入れて来るんで先に戻っといて下せぇ」
女盗賊「フーガ!追尾でいつも通り!」
ローグ「あいさー!」
実行役はミファ
後方で隠れてサポートするのがフーガ
そんなスタイルが定着していた
『フリゲート船』
ザブン ギシギシ
ミルクは甲板の上で横になりくつろいで居た…そして耳を澄ます
彼女はわざわざ町に情報集めに行かなくても色んな噂話を聞ける能力を持って居た
地獄耳なのだ
狼女「ふーん…三角の大きな古代遺跡はピラミッドと言うのか…そこにご神体が安置されてるのか…」
狼女「近付くと呪われるってどう言う事なんだろうな…」
狼女「古代の神様の名はオシリス…それから女神イシス…名前が全部覚えられんぞ…」
狼女「ええとマズいなもう忘れた…文字の勉強サボったから記録も出来ん…まぁ良いや…寝よ」グター
ドタドタ
おいこの船だったよな?
誰か見張りは乗ってそうか?
狼女「んん?」ムクリ
ごろつき「お!!女が一人乗ってるな…おい!そこの女!!」
狼女「お前達は誰だ?」
ごろつき「この船にもう一人男が乗ってただろう…戻って来て無いのか?」
狼女「誰の事言ってるのか分からん…何か用か?」
ごろつき「俺はそいつに騙されたんだ…何処に行ったか分かるか?」
狼女「だから誰の事か分からないと言ってるだろう…お前馬鹿だな…」
ごろつき「くそう!此処に戻って無いと言う事は町に出て帰って無いと言う事か…」
狼女「ハハーン…さっきの声はそういう事か…」
シュタタ
女盗賊「お?又この人居る…」
ごろつき「おっとこのクソガキ…」
女盗賊「ほっ!!」スッ
ごろつき「俺に纏わりつくな!ってまさかお前が俺の金貨をくすねたんか?」
女盗賊「金貨?」シラー
ごろつき「こんなクソガキにやれる訳無えか…おいお前!さっきの男は何処行った?」
女盗賊「ゲスなら酒場行ったんじゃないかなぁ」シラー
ごろつき「何処の酒場よ?」
女盗賊「そんなの知らないよ…一件づつ探してみたら?」
ごろつき「ちぃぃぃ…どうも今日はツイて無え」
狼女「ミファ!その馬鹿に近付くと危ないみたいだから早く船に乗れ」
ごろつき「お前等…俺らに逆らったらどうなるか分かってんだろうな?」
女盗賊「私に言ってる?」
ごろつき「クソガキは引っ込んでろ!」
狼女「いきなり難癖付けられて良く分からん…こっちは何もしてないんだから騒がないでくれ」
ごろつき「まぁ良い…まずはあの男を探さん事には…」ドタドタ
狼女「なんか…馬鹿丸出しだな…」ポカーン
女盗賊「ミルク!船を沖に出すから準備して!」
狼女「トラブル回避か?」
女盗賊「そう…さっきの人が大勢連れて襲ってくるかも知れないから」
狼女「分かった…ゲスは?」
女盗賊「魔石を調達したら直ぐに戻って来る筈」
狼女「じゃぁもう碇は上げておいた方が良さそうだな…ボイラーに熱入れてくる」
女盗賊「フーガ!縦帆一枚開くからロープ解いて来て!」
ローグ「あいさー!!」ダダ
このフリゲート船にはウラン結晶をエネルギー源としたボイラーが搭載されている
ボイラーによって作り出された蒸気を使って重たい碇を引き上げたり太いロープを巻き上げる機構が備わって居た
たった4人で大きな縦帆を操作出来る様に工夫されて居たのだ
『ボイラー室』
プシュー モクモク
狼女「うむむ…やっぱりウラン結晶がそろそろ限界だな」
ドタドタ
学者「ミルクちゃん!もうボイラー止めて良いっす!」バタバタ
狼女「お?ゲス戻って来たね…これウラン結晶どのくらい持つかな?」
学者「今年の冬は越せそうに無いんで節約っす…一回圧力上げたら帆走だけならしばらく使えるんで覚えといて下せぇ」
狼女「代わりのエネルギーで魔石使うのはどうだ?」
学者「使えん事も無いんすが魔石は他の用途の方が効率良いっすよね…」
狼女「石炭のボイラーとか船に乗せられないか?」
学者「デカ過ぎるんでダメっす…てか石炭の入手が厳しいっすね」
狼女「何処にでも売ってるだろう…」
学者「いやいや使う量が半端無いっすよ…あっちゅー間に無くなるんで大量に入手せんとイカンです」
狼女「う~む…やっぱりウラン結晶手に入れないとダメか」
学者「そーっすねぇ…内陸の方に行けばまだ沢山あると思うんすが危なくて近付けないっすからねぇ」
グラーリ グググ
学者「お?桟橋を離れたっぽいすね」
狼女「なんかゲスを尋ねてごろつきが来てたんだけど…大丈夫だったか?」
学者「おろ?俺っちは何事も無く帰って来やしたよ?」
狼女「じゃぁ丁度入れ替わりですれ違ったのか」
学者「いやいや…もう会いたくないっすね」
狼女「ミファは一旦沖に出るとか言ってたけど…このまま移動した方が良いかも知れんな」
学者「どっか行く宛てありやす?」
狼女「ムン・バイ遺跡だっけ?あそこは危ないか?」
学者「恐竜がわんさか居るんでちっと厳しいかと…あとぶっ壊され方が酷いんで遺跡探索に苦労しやす」
狼女「ちょっとミファとも相談しようか…」
学者「そうしやしょう…」
『200メートル沖の小島』
ガラガラガラ ジャブーン
ローグ「碇降ろしたぁ!!」
女盗賊「とりあえず今晩はここで休めそう…」キョロ
ローグ「小島に下りられそうだけど…何か食材無いか見て来ようか?」
女盗賊「一人で行ける?」
ローグ「大丈夫!暗くなる前にちょっと見て来る!」ピョン ジャブーン
ドタドタ
学者「ありゃ?向こうの桟橋と目と鼻の先じゃないっすか…この距離だと夜中に小舟でこっち来るかも知れんすよ?」
女盗賊「逆にあまり遠いと小舟で向こうに行き辛いと思ったんだけど…」
学者「あぁぁそれもそうっすね…」
女盗賊「それよりコレ何だか分かる?」チャプン
学者「瓶?ポーションか何かっすか?」
女盗賊「ちょっと鑑定お願い」ポイ
学者「貸して下せぇ」パス
女盗賊「あのごろつきから又スッたんだけど…なんかキナ臭い感じ」
学者「おっと!こりゃ毒薬っすね…アラクネーか何かの麻痺毒っすよ…これメチャクチャ高いんすけど…」
女盗賊「やっぱり…」
学者「普通の海賊とかが使う物とは違うんでどっかの組織が絡んで居やすね」
女盗賊「心当たりは?」
学者「いやぁぁ…昔はエルフ狩りとかに使われてたらしいっすけどね…今こんな物誰が使うんでしょう?」
女盗賊「どうしてあんなごろつきが持ち歩いてるのか…おかしいと思わない?」
スタスタ
狼女「あのごろつきは中身が何なのか知らなかったんじゃないか?」
女盗賊「ミルク…何か分かる?」
狼女「密売がどうとかいう噂は聞こえて来てた…何処かに悪い奴が潜んでいそうだな」
学者「これあんま首突っ込まん方が良い奴っすね」
狼女「ミルクもそう思う…只金の匂いはするから少し遠目に観察はしておきたいな」
学者「いつでも逃げられる様にだけはして置きやしょうか」
狼女「ミファは目視で向こうを監視出来るな?」
女盗賊「監視と言っても何を?」
狼女「どの船が密売やってるとか見つけるのはムリか?」
女盗賊「う~ん…難しいと思うけれど…一応見ておこうかな…」
狼女「あとス・エズ海峡を抜けられるのはいつだ?」
女盗賊「今晩月の観測やってみる…多分2~3日後くらいには思う」
学者「ミルクちゃんどういうつもりっすか?まさかムン・バイ遺跡行く感じになりやす?」
狼女「まだ考え中なんだがハウ・アイ島って所にも遺跡が在った筈だろう」
学者「あぁぁぁ…そういやその昔攻略したとかして無いとか…」
狼女「ミライ達もそっちの方に冒険に行ったらしいからもしかしたら何処かで会えるかも知れん」
学者「ミライ君っすか…今何処に居るんすかね?」
ミライとリッカが乗る船は海賊王と共に北半球の開拓に出て居た
3年ほど前に分かれたきりその後の安否は聞いていない
そしてアランとラシャニクア…
この2人はアメ・リカ大陸のヒュー・ストン攻略の為に戦車で戦地へ向かった
機動隊として招かれたのだ
残された子供達3人を任されたのがゲシュタルト…
かつての仲間たちは別々の道を歩んで居た…
狼女「アランもどうしてるのかな…」
学者「兄貴も酷いっすね…皆置いて戦地行っちまって」
狼女「あと2つの衛星を打ち上げないと機械に勝てないのだろう?」
学者「どうなんすかね?こっちの大陸に居ると噂が中々流れて来ないもんで…」
狼女「次いつ会えるだろう…」トーイメ
『世界情勢』
シン・リーンは王政を返還して政治を元老達が取り仕切る体制に変わって居た
王家は象徴として存在するが何の権力も持たない…そしてルイーダは彼女を匿う組織によって世間から隠された
フィン・イッシュも同じく王権が変わった…女王のサクラは3人の子に権力を分配し
自らは政治の場から身を引いてバレン・シュタインが統治するウ・クバ領へその身を預けた
ユー・ラシア大陸にはその他にいくつか小国と言える自治領が存在する…
オム・スク領、ノ・ヴォ領、ト・アル領、シ・ケタ領、ハ・ズレ領、シャ・バクダ領
セントラル崩壊後に分散した形だが内陸における機械との戦闘の中で急速に技術を発達させていた
破壊した機械を回収して武器として転用出来たからだ
一方アメ・リカ大陸…
かつてのキ・カイを統治していた王権は既に無くなり
バン・クーバーやミネア・ポリスといった要衝を主とした共和制が敷かれて居た
その中にハテノ自治領も含まれるが此処だけはドワーフ達が主権を主張している
他にも言語の違うオーク達がアメ・リカ大陸の半分を支配して居た
そして機動隊の位置付け…
アメ・リカ大陸における最強の傭兵団だ
政治に関わる事には関与して居ない…しかし武力によって結果的に政治影響を及ぼす
彼らが目指すのは徹底的に機械を破壊する事…そしてあと2つの衛星を打ち上げるのが目的だ
アランが機動隊と合流した理由はこの衛星の打ち上げに理由が在る
衛星による通信をハッキングし返さないと超高度AIを有する機械には勝てないからだ
その為にはあと2つ衛星が必要だと古代人は言ったらしい
そしてアランの本当の目的…それは超高度AIを持つ機械の支配から逃れる事だ
ホムコと同じ超高度AIを持つもう一人の精霊が何処に居るのか?
アランは薄々分かって居た…何故なら彼の父が何処からソレを盗んで来たのかを知って居たから…