怨霊の呪い
こんにちは、Marsです!
私は『終焉の刻印』を漫画化し、最終的にはアニメ化も目指しています。
この物語を楽しんでいただけると嬉しいです!
---
「死者は休まない。ただ、待ち続ける。」
一、怨霊の呪い
「決して耳を傾けるな。決して探すな。そして何より――呼ばれても決して答えるな。」
それが、青木ヶ原の町で子どもたちが最初に学ぶ教訓だった。
田舎には幽霊話がつきものだ。しかし、ここでは違う。ここでは、それはただの「話」ではなかった。
怨霊――それはただの幽霊ではない。彼らは怒りに燃え、死を超えてもなおこの世に留まる復讐の化身だった。彼らは彷徨うだけではない。彼らは喰らうのだ。
他の霊とは異なり、怨霊は目的を持って戻ってくる。溺死した亡者が、水面の下で音もなく唇を動かす。壁を這う囁き声が、夢の中に忍び込み、心を蝕んでいく。
だが、その中でも最も恐ろしいのは――印を残す者。
怨霊の呪いを受けた者は、やがて運命が狂い始める。
終わりのない不運に見舞われる者。
得体の知れない存在に生命力を削られる者。
そして――ある日、何の痕跡も残さず消え去る者。
中でも、最も恐れられたのは「黄泉ヶ池の溺死女」の伝説だった。
古の時代から存在するその湖は、深く、静かに息を潜めていた。嵐の夜、風が木々を裂き、雨が大地を打ちつける時、そこから声が聞こえるという。
呼ぶ声。
誰かを探しているという者もいた。
誰かを待っているのだという者もいた。
だが、すべての者が口を揃えてこう言った。
「その声を聞いたら――もう手遅れだ。」
青木ヶ原の嵐
町は雨に沈んでいた。
屋根を打つ雨の音、窓を叩く風の響き。薄暗い部屋の中で、葛ノ葉 怜は机に向かっていた。古びたファイルを捲りながら、揺れるランプの明かりに目を細める。
嵐は激しさを増していた。
勉強をするはずだった。だが、今読んでいるのは「死者」についての記録だった。
数時間前、誰かが彼の部屋の前に封筒を置いていった。差出人不明。ただの新聞記事、警察の報告書、そして不鮮明な写真の束。
すべて、行方不明者に関するものだった。
そして、その全員が黄泉ヶ池の近くで消えていた。
怜の指がページを強く握る。一番新しい記録は、たった一週間前のものだった。夜の散歩に出かけた24歳の男性が、二度と戻らなかったという。
最後のページの下部に、深紅のインクで書かれた手書きの文字が目に飛び込んだ。
「水辺には近づくな。」
寒気が背筋を這い上がる。
誰かが警告している。
ということは、誰かが何かを知っている。
そして、怜はそれを確かめる必要があった。
雷鳴が轟く。風がうねる。窓の外、街灯が不気味に瞬く。
怜は指で机を軽く叩きながら、考えを巡らせた。
――幽霊話なんて信じない。
町ではずっと聞かされてきた。呪われた森のこと、人を飲み込む湖のこと。でも、最近になって、何かが違う気がしていた。
夢。
暗闇の湖が広がる。囁き声が耳元をかすめる。そして、水底から何かがこちらを見つめている。
失踪事件。
一ヶ月で三人。痕跡なし。遺体もなし。
そして、この封筒。
誰かが湖に近づくなと言っていた。
だが、それは怜の興味をますます引き立てるだけだった。
何かが、そこにいる。
そして、明日の夜――それを確かめる。
湖の呼び声
翌日、雨は止まなかった。むしろ、昨夜よりも酷くなっていた。
フードを深く被り、怜はポケットに手を突っ込む。町の外れへと続く道は水浸しになり、街灯の鈍い光が雨に霞んでいる。
誰も外には出ていなかった。
青木ヶ原では、警告を無視する者はいない。
だが、怜は違った。
彼はいつだって、深く掘りすぎる性格だった。
今夜を逃したら、きっと一生このことが頭から離れなくなる。
水たまりを踏みしめながら歩く。湿った土の匂いが鼻を突く。
町は遠ざかり、森の囁きが広がる。
そして、見えた。
黄泉ヶ池。
嵐に揺れる水面。黒く、静かに広がる湖。雨の音に紛れて、何かが漂っているような、ざわついた気配。
怜は息を吐き、岸に近づいた。
――何もない。ただの湖。ただの風。
その時――
囁き声がした。
喉が凍りつく。
それは微かで、どこか悲しげな声だった。
そして、それは後ろからではなく――
湖から聞こえた。
鼓動が速くなる。もう一歩踏み出し、水面を覗き込んだ。
そして、怜はそれを見た。
女の顔が、水の下にあった。
大きく見開かれた目。口が音もなく動く。何かを囁いている――だが、聞こえない。
怜は息を呑み、後ずさる。
その瞬間――
水面から、手が飛び出した。
何かを掴もうとするように、指が空をかきむしる。
怜は駆け出した。
嵐の中、全速力で駆ける。雨が肌を打ちつけ、心臓の鼓動が耳の奥で響く。
だが――
囁き声が追いかけてくる。
体に絡みつくように、耳元でささやく。
そして――
静寂。
怜は立ち止まる。息が切れ、全身が震えていた。
振り返る。
湖はそこにあった。
静かに。
暗闇の中、何もなかったかのように。
……だが、怜は知っていた。
見間違いではない。
これは、終わりではない。
――続く。
あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!『終焉の刻印』第一章、いかがでしたか?
怜が背負う呪いの真実、そして彼の行く末は…?
この物語では、怨霊や呪いにまつわる恐怖と、それに立ち向かう者たちの戦いを描いていきます。これからもどんどん物語が展開していくので、ぜひ次の章もお楽しみに!
感想や応援コメントをいただけると、とても励みになります!
では、次回もよろしくお願いします!