週末は 俺と彼女の 金魚日(きんぎょうび)
小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。
テーマは「金魚」です。
毎週金曜日は夏帆の家で過ごすことになっていた。
同じ高校に通う夏帆は金魚が趣味の小学校からの同級生。
高校生になると金魚部を作ると息巻いていたが許可されることなく、結局俺が週一で彼女の部屋に行き金魚を観察することに。
今日は水槽の水を変える手伝いをする。
きれいになった水槽で嬉しそうに泳ぎ回る金魚たち。
それを眺めている俺たち。
夏帆が金魚を飼い始めたのは小学生の時、夏祭りで一緒にすくってからだ。
「長生きだな」
「でしょ。愛情持って育てれば10年くらい生きるらしいよ」
夏帆は昔、チビで太ってて眼鏡をしてたから出目金て呼ばれ虐められてた。
そこを俺が助けてやったら、俺の後ろをずっと付いてくるように。今度は金魚の糞だと虐められて……
今、嬉しそうに金魚を見つめる夏帆はスラリとした可愛い子に。コンタクトにもして、今じゃ明るく学内の人気者だ。
「見てるだけて楽しいか?」
「楽しいよ。飽きないし。
好きなもの見ててもなにも思わないの?」
と、逆に問いかけてくる。
「まあ、確かに飽きないよな」
「……それに金魚が目的じゃないし」
「なに?」
「なんでもない!」
視線は再び水槽へ。
「口をパクパク、餌のおねだり、可愛いよね」
「そうだな」
「まるでキスをせがんでるみたい」
「金魚とキスしたいんか?」
「違うよ!」
「しかし本当に金魚、好きだよな」
「うん、でももっと好きなものもあるんだよ」
「なに?」
「コイ……かな」
「鯉?」
静かに頷き
「一緒に住みたいなぁ」
と呟く。
「なら庭と池がないとな。鯉は部屋じゃ飼えないだろ?」
「……
……私も金魚みたいに
愛されたい」
「この金魚も幸せだよな。俺たちに大切に飼わ……」
「もう!この鈍感!」
「は?」
「本当は金魚部なんてどうでもいいの!」
「なんだよ急に?」
「ただ一緒にいる理由が欲しかったの!!」
「なにそれ?」
急に怒鳴ったかと思ったら、
金魚みたいに頬を赤らめ膨らませる?
夏帆のやつ、さっきから変なことばっか言って。
愛情
好き
キス
鯉
一緒に住み…
愛されたい……
もしかして?
キス?
鱚?
鯉?
コイ?
恋!?
「おい、お前まさか!」
夏帆は無言で瞳を金魚のように潤ませる。
(俺のことが……)
金魚のように口をパクパクするだけで言葉が出てこない?
体が熱くなってきた。
夏帆を見てるとなんだか……
これはもしかして金魚?
じゃない鯉?
いや、恋なのか!
恋してるのか!
水槽の金魚に救いを求めるも答えるはずもなく、ただジーッと俺たちを見ているだけだった……
お読みいただき、ありがとうございます。
では皆様、良い週末、金曜日をお過ごしください!