正夢
山田は真っ暗な部屋でテレビを観ている。 日本各地で暴動が相次ぐ中、青森県の大規模な森林火災はその勢いを増しています。こちらは青森県の上空です。今ご覧いただいていますように、広い範囲にわたって炎が上がり続けています。こちらは国会議事堂の上空です。道路が人で埋めつくされていた。 世界中で新種のウイルスが蔓延しているため、連日感染者と死亡者の人数が発表され続けていた。日本政府は北海道や、一部の島を封鎖していて、密かに国民の選別をしていた。その機関の本部やら研究施設やら選ばれた国民の住居が北海道にある、というもっぱらの噂だった。レポーターが勢いよく東京都の現地から解説を繰り返していた。急に映像が乱れてテレビ局がざわついていた。カメラマンとレポーターが襲撃されたようだった。そして、テレビには、若い男たちが映っていた。日本政府は、なんで国民を捨てたんだ、さんざん金持ちを優遇し続けたあと、今度は選ばれ者を優遇!ふざけんな!映像が途切れた。
ふざけんな! 山田は教室で授業中さけんでいた。そこで夢であることに気がついた。 山田ぁ、だからおまえは馬鹿なんだよ。クラスの全員が山田を注目して、どっと笑っていた。 これはただの夢ではない。正夢だ。山田はそう思った。