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パンダの思い出
山田は考えていた。昔の記憶がよみがえる。動物園によく連れていってもらっていた。パンダを観る列に何度も並んだ。そのせいでやたら時間がかかり、帰りが遅くなったが父親も母も文句一つ言わずに笑顔でいてくれていた。パンダはなんていうか、美しいと思った。白色と黒色が混ざることなく白色が少し汚れているのか真っ白ではなかったのが好きだった。パンダはほとんど寝ていたが、姿を見るだけで良かった。そのうちに、ひとりだけで列に並ぶようになった。母は父親に、大丈夫かと言っていたが父親は笑顔で見送ってくれて終わったら出口で待ってくれていた。パンダを観ながら歩いている間、半ズボンの尻や太ももの後ろ側を後ろの人が何度も触ってくることがあった。少し怖くて触ってくる人がどんな人か振り向いて見ることができなかった。薄暗いトンネルの列にライトに照らされたパンダはとても美しいなとずっと今でも覚えている。




