第四話 偶然
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教室に入り席に着くと、朝から賑やかに声をかけてくる人物が居た。
「おっはよう!圭が遅刻ギリギリなんて珍しいじゃん」
圭はぼんやりとした顔で親友の新田一馬を見上げ「よぉ」と小さく挨拶した。
「にしても、何か、今日は朝からずいぶんボロボロじゃねえ?」
一馬は圭の頭に着いていた葉っぱを取り、上から下を何度も見た。
「ん、まぁ……何というか、朝から白昼夢?」
圭は説明しがたい朝の出来事を思い出しながら言った。当然、一馬は困惑の顔で「はぁ?」と素っ頓狂な声で聞き返してきたが、圭は苦笑いし「いや、何でもない」と、手をひらひらさせた。
机の中にノートをしまおうと少し椅子を引くと、後ろの席の机に左肘をぶつけてしまった。思いの外、痛みが強く顔をしかめ、袖を捲り肘を見てみると、鮮やかな赤い色が滲んでいた。それを見た一馬は、自分が肘を怪我しているかのように「いってえ!痛てぇよ!それ!」と騒いだ。
「ほんと、痛そう。早く消毒した方が良いわ」
一馬の騒ぎ声と重なるように、落ち着いた声がした。
圭は声の主に顔を向けると、隣の席の早川成美が哀れむ顔で圭の傷口を見ていた。
「そうだ、保健室行ってこいよ。沙也加先生に見てもらえよ」
一馬は圭の耳元に顔を寄せ囁く。
「でもって、ついでにたっぷり元気もらってこいよぉ。圭、沙也加ちゃんのお気に入りだしぃ、サービスしてもらえるぜ?」
一馬はいやらしい笑い声を出した。
「新田君、丸聞こえ。朝から最低」
早川は心底嫌そうな顔で一馬を睨み付け、直ぐに圭に顔を向けた。
「でも、本当に。ばい菌が入って化膿する前に洗うなりした方が良いよ。絆創膏でよければ、私持ってるから」
早川は鞄から小さなポーチを取り出し、何枚か絆創膏を圭の机に置いた。
「やっさしい。なんで圭にはそんなに優しくて俺には厳しいの?ねぇ、圭ちゃんはどんな魔法を使ったの?」
一馬は早川に依怙贔屓だ何だと騒いでいたが、圭はそんな一馬を無視し早川に礼を言って席を立った。
廊下に出ると、三クラスずつ間隔を開けて備え付けられている水場がある。水道の蛇口を捻り、恐る恐る傷口に水を当てると、染み入る痛さに小さく呻く。ある程度、血が落ち、ハンカチで抑えようとした時。
後ろから「圭くん」と名前を呼ばれた。
圭はビクッと肩を震わせ素早く後ろを振り向く。この学校で「圭くん」などと呼んでくる人物は、ただ一人を除いて居なかったため反射的に顔を強張らせた。しかし、圭が予想していた人物とは違う、予想外な人物が目の前に立っていた。
「え……?あれ?君、この学校……」
圭は目を見開き、目の前に立つ美少女を見つめた。
「今日からなの。よろしくね」
そう言うと、ミユウは輝く笑顔を見せる。
圭は口をぽかんと開けて、その笑顔を見つめた。
「なんだ、知り合いか?」
ミユウの隣りに立ってた担任が、二人を交互に見た。圭はそれまで全く気がつかなかった担任を見て、慌てて「おはようございます」と挨拶し、ミユウは「友達なんです」と明るく担任に言う。圭は驚きつつ口の中で小さく「友達……?」と呟く。
「もしかして、同じクラスだったのかな?すごい」
ミユウの嬉しそうな顔を見て、圭は何故か複雑な気持ちで「あはは、ねぇ」と、取りあえず同意してみた。
教室へ入ると、季節外れの転校生にクラス中がざわつく。いや、理由はそれだけではない。当然、美少女であるミユウの容姿を見てざわついているのもある。
ミユウは圭が初めて会ったとき同様、歌うように自己紹介をした。顔が良くても声が駄目なケースは良くある。しかし、ミユウは顔も声も完璧だった。
ホームルームが終わると同時に、ミユウの周りには男女問わず人集りが出来て、圭と知り合いだと言うだけの理由で圭の隣の席に座ったミユウは、どの生徒にも屈託のない笑顔で挨拶をしていた。
「おい、二宮、お前は何なんだよ。沙也加先生といい、この美少女といい。なんでお前ばかりがいい思いをするんだ?」
そんな調子で、朝から放課後まで圭は一馬を含むクラス全員の男子生徒に小突かれ続けた。
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