第四話 突然の出会い
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レイ達は人通りの殆ど無い路地裏を過ぎ、ちょっと開けた場所に出た。
「ここなら大丈夫か……」
レイは独りごちると荷物を放り投げ、構えの姿勢を取った。
男達が一斉に襲いかかって来るのを、レイは瞬く間に倒していく。それでも多勢に無勢、疲れも出始めた時、レイの放った一発が、光を帯びて相手の腹に入った。
腹に攻撃を受けた男は、軽く三メートルほど吹っ飛ばされて、そのまま倒れた。
レイは自分の拳を驚きながら見つめたが、それも束の間、直ぐに次の手が迫り、それを避けようとしたが、別の男に羽交締めにされてしまった。
「随分とやってくれたじゃねぇか……」
頭の男が廃材を片手に、息を切らせながらレイの目の前に立ちはだかった。
「これで終わりにしようぜ!?」
男が廃材を振り上げ、レイに強い衝撃がかかった。ふと、意識が遠のくのを感じた。
その時。
「お兄様!!」
遠のく意識の中、叫び声と共に、辺り一帯に白い光が溢れてたのを見た気がした。
ーーーーー
どのくらい意識が飛んでいたのか。
意識を取り戻した時には、男達は全員伸びていて、起きる気配は無かった。
頭を振って、まだぼんやりした意識を取り戻そうとした。
さっき、意識を飛ばす前に見た光は何だったのか。それに、あの声は……。まさか。こんな場所にいる筈がない。が、もしやと思い辺りを見回す。すると、路地裏の通り前に、淡い黄色の塊が見て取れた。
レイは軋む身体を起こして、その塊に近づく。
塊を見て、レイの心臓は大きく鼓動を打った。
すぐさま抱きかかえ、その頬に手を当てる。氷の様に冷たく、身体を震わせている。
「ミユウ!ミユウ!……なんでこんな所に……」
レイは必死にその小さな身体を摩った。熱が少しでも戻る様にと。
「これはまた……随分と派手にやった様だね」
頭上からゆったりとした声が降って来た。夢中でミユウの身体を摩っていて、その気配に全く気付か無かったレイは、ミユウを抱えたまま後ろへ飛び退いた。
「いやいや、大丈夫。何もしないよ。それより、その女の子が心配だ。恐らく魔力切れだろう。急がないと危険だ。ちょっと近寄っても良いかな?」
高い鷲鼻が特徴的な男だった。恐らく、レイ達の父親と似たような年齢か、もう少し若いくらいだろう。その男は、レイの返事も聞かずに近寄ると、跪きミユウの額に手を当てる。
「アシュレイ、居るんだろ?助けてくれ」
誰にともなく男は言った。
一拍おいて、銀色の髪をした背の高い男が何処からともなく現れた。
レイは驚きのあまり、声も出ず男二人を凝視した。
「アシュレイ、悪いがこの子に回復術を掛けてやってくれるか?」
「私にはその様なことをする義理はありません。だいたい、貴方は自分で助ける事も出来ない癖に、何故首を突っ込むのです。時間の無駄です。さぁ、早く行きますよ」
アシュレイと呼ばれた男は人形の様に整った顔をしながら、無慈悲な言葉を発する。
「アシュレイ……。確かに、今の俺には力が無い。だが、気が付いておきながら放って置けるほど冷酷な心を持ち合わせて無くてね」
「それは、私が冷酷だと言いたいのですか?シオン」
「いやぁ、そうとは一言も言ってないよ?そう君が思ったなら、それは君が自分で自分自身をそう感じているって事じゃ無いのかなぁ」
シオンと呼ばれた鷲鼻の男は飄々とした様子で受け答えをする。
「はいはい、とにかくアシュレイ、早くしないと!この子が本当に危なくなる」
シオンに急かされたアシュレイは、唇をぐっと噛み締め「これは貸しですからね」と言い、シオンの隣りに跪き、ミユウの額に手を置いた。
そして、レイの聞いた事の無い言葉を呟くと、その掌から淡い虹色とも取れる光が溢れ、ミユウを包み込んだ。レイはその不思議な輝きに目を奪われ、黙ってミユウを抱きかかえていた。
「……これで大丈夫ですよ。さぁ、シオン。これで満足でしょう?行きますよ」
「あぁ、ありがとうアシュレイ。助かったよ。だが、そう急ぐな。もう少し良いだろ?」
シオンの言葉に、アシュレイはあからさまに大きな溜息を吐き出し、少し肩を上げ諦めた顔をした。
「君、この子のお兄ちゃんかな?」
シオンはレイを真正面から見つめて訊ねる。
レイは少し躊躇しながらも、小さく頷いた。
「君の様子からすると、自分や妹ちゃんに魔力がある事に気が付いて無いと思うんだけど、どうかな?」
魔力という言葉に、レイは眉間に皺を寄せ首を横に振った。
「うん。やっぱり。……君は無意識に、この周辺に結界を張ったんだよ。その魔力が随分と大きくて……俺は今、魔力が無くなってしまったんだが、気配は感じる事が出来てね。こんな強い魔力は誰のものかと気になって来てみたら……。どうも大暴れしていた様で驚いたよ」
そう言うと、シオンは「ふふ」と笑う。
「ここに向かう途中で、また更に大きな魔力を感じ取ってね。何となく嫌な予感がして急いで来てみた。来て正解だった。君の妹は、君を護ろうとして、一気に大量の魔力を放出した。まぁ、どちらかと言うと魔力暴走に近いかも知れないな。それで、魔力切れを起こして倒れたんだ。魔力切れは、下手する死に至る。本当、間に合って良かったよ」
「死」という言葉に、レイは一気に青ざめた。身体中の血の気が何処かへ去ってしまったように、カタカタと震えだした。
「あぁ、もう大丈夫だ。怖がらなくて良い」
シオンはレイをミユウごと抱え、その背中を優しく摩った。レイの震えが治るまで、ずっと。
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