第三十六話 明星
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圭が小さな呻き声を上げた。
シオンは、抱きかかえていた息子の顔に触れ「頑張れ」と祈る様に囁いた。
ミユウは急いで圭の周りに結界を張った。アサトは結界の外に出て、リスの姿のミユウの元へ駆け寄りながら、掬うように右手に乗せると、そのまま真っ直ぐレイ達の居る結界へ向かった。
ミユウの張った結界内に残された圭は、ふと、左右に首を振り「なんだ?」と首をかしげた。すぐ側に誰かが居たような気がする、と思ったが、誰もいない事を確認すると、再びその場にしゃがみ込み、寝っ転がった。
強い光が反発し合う中、アサトはレイの作った結界内に走り込んだ。
「お兄ちゃん!」
ミユウはアサトの肩から飛び降りると、人間の姿に戻りレイの隣に並び、アサトはシンがいる結界の中に入り込んだ。
「ミユウ!離れろ!」
レイは急いで妹を抱え込むようにして砂浜に倒れ込む。レイの背中を、熱風が翳め通った。
ミユウはレイの腕の間からウィルを見た。
暗がりの中で目を懲らしウィルを見つめ、兄の服を引っ張った。
「あれ、ウィルじゃない……」
「え?」
レイは小さく声を上げた。
「瞳の色が違う。操られてるのよ。だから、ウィルじゃ、ない」
ミユウは言い切った。その声には、自信が漲っている。
レイはウィルに視線を向け「じゃあ、全力で行くぞ」とミユウに囁いた。ミユウは「うん」と小さく頷く。
二人は素早く立ち上がり、レイがウィルに向かって攻撃を仕掛け、ミユウはレイの援護を行った。
「レイさん、援護お願いします!」
アサトが前に飛び出すと、高く跳び上がりウィルに斬りかかるが、ステッキでそれを抑え薙ぎ払われた。それでもアサトは食い付く様にウィルに向かっていき激しい打ち合いを交わす。その間、ミユウはアサトに回復の術をかけ続けた。
「うん。アサトはシンの剣筋に似ているね」
そういうなり、アサトの脇腹にステッキを叩き込んだ。
「ッ!!」
アサトは両脚を踏ん張り「レイさん!」と叫ぶと、レイは呪文を唱えアサトの剣に魔力を与えた。剣はオレンジ色に染まり、アサトは下から上へと剣を振り上げた。
「うぉぉぉぉぉおおお!!!!」
剣から放たれたオレンジ色の光が塊となりウィルの腹に撃ち込まれ、その身体を数十メートル吹き飛ばす。
アサトは全身で息をし剣を構え、ウィルを睨み付けるが、脚が震え、立っているだけでも辛い。
ウィルはゆっくりと起き上がると、まるで何事も無かったようにスーツの砂を払う。
「そろそろお遊びはこの辺で終わりにしよう」
ウィルはそう言うと、左手を真っ直ぐレイ達に向け呪文を唱えようとしたが、その攻撃をさせまいと、すかさず兄妹が声を揃え呪文を唱えた。
「「クロウ・ヴォルノ」」
呪文と同時に、眩しいほどの白い光の固まりがウィルを覆った。
最強の浄化術。
(あなたが俺達に教えた術だ。どうか効いてくれ……!)
光が徐々に薄まり完全に消えると、そこにはウィルが蹲るようにして倒れていた。
レイとミユウは顔を見合わせると、すぐさまウィルに駆け寄った。
「ウィル!」
レイがウィルの身体を抱きかかえると、ウィルは小さく呻き声を上げ、細く目を開けた。開いた両目には、深い海の底のような瞳が現れた。
「ウィル、しっかり!」
ミユウの声を聞き、ウィルはそっと眉を寄せ微笑んだ。
「すまなかった……」
小さくそう言うと、再び目を閉じた。
「ウィル!」
「大丈夫、大丈夫だよ、ミユウ」
レイはミユウの頭を優しく撫でると「今は急いでウィルを『外』へ出そう」と言った。
シンが結界から出ると、レイと一緒にウィルを担いで圭の夢のドアへ急いで向かった。
五人がドアへ向かっていると、アーシャが慌てて声を上げる。
「待って、今、『鍵』が現れるわよ!」
アーシャの言葉に四人は空を見上げた。
その数秒後、どの星よりも一際目立つ光を放った星が、水平線に現れた。
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