第三十五話 再会
読んで頂き、ありがとうございます。
本日2話目の投稿です。
34話を未読の方は、1つ戻って読んでもらえたら嬉しいです。
では、よろしくお願いします。
月明かりでかろうじて足下が見える。
ミユウはリスに変化すると、木に登り遠くを見渡した。
「圭くん、居た?」
木の下でアサトが小さく声をあげる。
ミユウは木から下りると、アサトの肩に乗り、状況説明をした。
『ここから三時方向二百メートル先の砂浜にいた。二時方向、圭くんから八十メートルほど先にウィルがいる。黒猫に変化して、圭くんの様子を見ている感じ。お兄ちゃんとシンさんは一時方向ウィルの近く、アーシャは四時方向、圭くんの近く、それぞれ目標まで三十メートルほどの距離にいるわ』
「僕たち、どうする?」
『取りあえず、少し近づきましょう。それからだわ』
「了解」
シンの脇に金色の犬が静かに座った。
「どうだ?」
シンが静かに聞いた。
『ウィルの周りに結界を張ったが、気づかれるのも時間の問題だろう』
シンは静かに頷くと、空を見上げた。
「どの星だろう」
『鍵』の事だろうと察したレイは、人間の姿に戻ると小声で応える。
「一番輝く星だとは言っていたな」
「それらしい星は、俺には分からん……」
シンが口角を下げぼやくと、レイは苦笑する。
「困ったことに、まったく同感だ」
と呟いた。
二人が空に注意を逸らしていると、黒猫が動き出した。二人は素早く体制を整える。黒猫は足を忍ばせ、砂浜に足を踏み入れた。その瞬間、黒猫は弾き飛ばされたかのように、後ろへ飛んだ。
「よし!」
シンが囁くと、二人は黒猫の元へ走り出した。
黒猫の目の前にレイが立ちはだかる。
「ウィル」
黒猫は瞬く間に人間の姿になった。砂浜から立ち上がると、スーツに付いた砂を軽く叩くように手を動かした。
「久しぶりだね、レイ。素晴らしい結界だ。張られたことに気がつかなかった……」
「何でこんな事……」
レイの声は微かに震えていた。
ウィルは小首をかしげた。黙ってレイを見ると、小さく息を吐き「そこを、退いて欲しい」と冷たい声で言った。
「断わる」
レイは短く答えた。
ウィルは再び息を吐き出すと、左手に持っていたステッキを右手に持ち、腕を上げたと同時に、シンの剣がそれを防ぐ。
ウィルは冷たい視線をシンに向けた。
「良く気がついたね」
「夢の中で銃なんて、御法度も良いところです」
シンの瞳は剣同様、鋭い光を放っていた。
ウィルは左手を挙げると、短く呪文を唱えた。すかさずレイが「逃げろ!」と声を上げたが、レイの声は数秒遅く、ウィルの攻撃がシンを直撃し、砂浜に吹き飛ばされた。
「シン!」
シンは直ぐさま体制を整えたが、利き腕に傷を負った。左手に剣を持ち替え、ウィルを睨み付ける。
「シン、動きが鈍くなったな」
ウィルは相変わらず無表情のまま、呟いた。
レイがシンの前に立ちはだかると、両手を強く打ち付け、短く呪文を唱えた。
シンの周りに小さな結界が現れる。シンは「大丈夫だ」と言ったが、レイは短く「癒せ」と言うと、ウィルに向かって右手を突き出した。
「『癒し』の結界か。無駄だよ、レイ」
レイは何も答えず、ウィルに向かって攻撃の呪文を唱え放つ。ウィルは微かに眉を寄せると、左手を挙げた。
二人の攻撃が同時にぶつかり、強い光が群青色の空に広がる。
砂浜に寝っ転がっていた圭は、普段と違う光景に身体を起こした。
光の方角へ顔を向けたが、何も見えない。圭は立ち上がり、空が光った方角へゆっくり歩き出した。
「あ、ダメよ、そっち行っちゃ!」
アーシャは慌てて木の陰から飛び出して圭を追いかけようとした。その手を、誰かが掴んだ。振り向くと、アサトが立っていた。
「僕が行きます。アーシャさんは『鍵』を」
そういうと、圭を追いかけた。
アサトの前を小さな黒い固まりが駆けぬけ、あっという間に圭を通り過ぎると、圭の足下で小さな光を放った。その光に、アーシャは小さく驚き声を上げた。ミユウが結果を張ったのだと気づくまでに、数秒かかった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
続きが気になる!という方は是非ブックマークや☆、評価、感想など今後の励みになりますので、残してもらえると喜びます!よろしくお願いします!