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ドリームハッカー 〜隣の家は異世界への入り口だった〜  作者: 星野木 佐ノ
第一部

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第二十七話 解読

読んで頂き、ありがとうございます。

本日2話目の投稿です。

26話を未読の方は、ひとつ戻って読んで頂ければ幸いです。

では、よろしくお願いします。



 昼休み、圭は重たい足を保健室に向けて一歩ずつ運んでいた。

 保健室ってこんなに遠かっただろうかと思いながら、階段を下りる。暗い気持ちを抱えながら、やっと目的の場所に辿り着いた。

 保健室の前に立つと、深く息を吐き出す。たいした時間はかかっていないはずだが、まるで何時間もかけてここへ来た気分だ。いつもなら賑やかな廊下が、何故か今日は静かだ。まるで、全生徒が階段の陰に隠れて、圭が保健室へ入っていく様子を固唾を飲んで見ているかの様に感じた。圭は周囲を見渡し、誰もいないことを確認する。少し躊躇をしたが、思い切ってドアをノックした。中かから、相変わらず身体に纏わりつくような、ねっとりした声が聞こえ、圭は一度深呼吸をすると「失礼します」と言い、ドアを開けて中に入った。




 ミユウは階段の最後の一段が下りられないでいた。階段の下には、魔法陣が書かれていて、人を寄せ付けないための呪文が書かれている。


(まさかこれ、圭くんが……?)


 ミユウは解きの呪文を唱えた。しかし、どの呪文も効かない。焦りだした自分に「落ち着け」と言い聞かせ、もう一度、陣をじっくり見つめた。はっとある事に気が付き、その目が大きく見開かれた。


「これは……『人避の陣』と『暗号の陣』が組み合わされてる……」


 この間の夢の扉と同じだ。

 何者かが、圭を狙っているのか、圭が誰かを狙っているのか。とにかく早く解いて行かなくてはと気持ちが焦る。レイに連絡を取ろうと思ったが、人避けがされているといっても、階段下から。ミユウの居る場所は誰でもがここまでは来られる。万が一、誰かに見られる可能性は無くはない。しかし、今ここから離れてはいけない気がした。

 ミユウは階段に力なく座り込み、どんな暗号が組まれているのか分からない以上、どうする事も出来ない。ミユウは陣に刻まれた文字列を睨み付ける様に見つめる。どうやら特定の人物以外は通り抜けが出来な仕組みになっている様だ。


「どうしよう……」


 弱々しく声を出した。


「お兄ちゃん、ごめん」と呟き俯くと、不意に両肩を優しく包まれた。

 身体に羽根が生えたように、自分の意思とは関係無く、すっと立ち上がらせられる感覚。

 ミユウは驚き後ろを振り向くと、そこには思いもしない人物が立っていた。

 ミユウは目を見開きその相手を見上げる。


「……ウィル……」


 ウィルと呼ばれた男は、優しい笑みを浮かべ深い海の色をした瞳でミユウを見つめる。


「ミユウがここにいると言うことは、レイ達が来ていると言うことか……」


 ウィルはどこか安堵するような笑みを浮かべた。 


「ウィル……!あなた何故ここにいるの!?」 


 ミユウは戸惑った顔でウィルの顔を覗き見る。


「もしかして、この一連の事件……」


「私だよ。私が起こしている」


 ウィルはミユウの言葉を先読みして答える。

 ミユウは悲痛の顔でウィルを見上げた。


「お兄ちゃんは、あなたじゃないって。絶対に違うって……」


 ミユウはウィルに拳を当てながら「何で!」と繰り返し、頬を濡らしていく。

 ウィルは黙ってミユウの頬をつたった涙を優しく拭った。一瞬、顔を歪めたが、すぐに真剣な眼差しでミユウを見つめる。その表情に何か言おうとしている事に気が付き、黙ってウィルを見つめ返した。


「いいかい、ミユウ。時間がない、良く聞くんだ。今から私がこの陣の封印を解く。彼を助けられるのは、君だけなんだ。今の私がこの陣の封印を解いていられるのは、ほんの数秒だ」


 ミユウは目を見開きじっとウィルを見つめ、話しに耳を傾ける。


「私が解いたら直ぐに行くんだ。いいね?」


 ミユウは黙って頷くと、ウィルは「良い子だ」と言ってミユウの頭を優しく撫でた。ミユウは自分の頭に乗せられたウィルの手を掴んだ。

 ウィルは優しくその手を解くと、ミユウに後ろを向かせ、陣の正面に立たせる。ウィルはミユウの真後ろに立つと、小さな声で呪文を唱えた。


「アンリード・ヴィクス」


 どこからともなく風が吹き、ミユウの頬を優しく撫でると、陣の周囲を静かになぞるように風が走った。陣は光を帯びてうっすらと消えかけた。ウィルは「今だ」と囁き、ミユウの背中を軽く押した。ミユウが陣を通り抜けると、直ぐに光を失った。


「急ぎなさい」


 ウィルの声はミユウの不安を吹き飛ばすかのように優しく、力強い。ミユウは一度深く頷くと、保健室へ走った。

 ミユウが走り去るのを見送り、ウィルは大きく息をし始めた。肩を上下に動かし、頭を両手で抱え、小さく呻き声を上げしゃがみ込む。暫くして、ウィルは頭から手を放した。下げていた頭を上げ、無表情の顔で陣を見下ろし、静かに立ち上がる。その瞳は青と金に変わっていた。陣に背を向けると、黒猫に変化をし、階段を駆け上がり姿を消した。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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