表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/60

第二十五話 父親

読んで頂き、ありがとうございます。

本日2話目の投稿です。朝の分を読んで無い方は1話戻って読んで頂ければ嬉しいです!

では、よろしくお願いします。


「いやあ、懐かしいなぁ……記録庫に入るのは、かれこれ十五年振り?……かぁ……」


 スマートな中年男は、記録庫の中を心から懐かしそうに見回している。「記録庫の主」と言っても過言では無いアッシュの姿が、珍しく見あたらない。

 レイとシンは神妙な面持ちで中年男を見ていた。



ーーーーー



 ほんの数分前の出来事だ。


 ミユウを見送った後、玄関に向かうところで声をかけられたのだ。


「ちょっと失礼」


 レイとシンが同時に振り向くと、目の前には見知らぬ中年の男が立っていた。


「君たちは、レムアドミニスターの人間だね?」


 レイとシンは顔を見合わせ、すぐに男に鋭い視線を移した。

 男は無駄な贅肉もなく、すらりとした体型だった。さほど身長は高くはなかったが、背筋の真っ直ぐ伸びた姿勢のせいか、実際より大きく見える。数本白髪の交じった焦茶色の短髪と、形の整った奥二重の瞳は榛色。小顔の割に大きな鷲鼻が妙に目立つ。清潔感のある白いシャツにベージュのチノパンという格好を、すっきりと着こなしている。

 レイは微かに眉を顰め警戒心を顕にし、男を見た。


「ちょっと、話をしたいんだが。大事な話を」


「誰だ、あんた」


 シンが警戒心剥き出しの表情で、戦闘態勢を取り男に訊くと、男は慌てて「乱暴なことは嫌いなんだ」と言って両手を挙げひらつかせる。

 シンはレイを一瞥し、様子を覗う。先ほどと変わらず警戒心を表した表情だが、レイが何も言わないところを見ると、この男に戦闘意志は本当にないのだと思った。

 レイは人の言葉の裏側を読み取る事に優れている。嘘を言えば、あっと言う間にばれてしまう。相手が嘘を言えば、直ぐにレイの口角が意地悪く上がることをシンは知っていた。今はそれもない。


「話とは、どんな?」


 レイの、さほど大きくはないが凛とした良く響く声が男に届くと、男は「ここではちょっと」と言い淀んだ。

 しかし、レイの顔を見て顎を引くと観念した様に僅かに身体をこちらに傾け「『鍵』についてだ」と早口で言った。



 中年男の希望により、記録庫で話しを聞くこととなった。中年男が言うには「内緒話は、記録庫が一番安全」との事だった。

 レイとシンは「確かに」と思った。

 記録庫は大事なデータが保管されている事もあり、どの部屋よりもセキュリティが万全だ。が、この男が何故そんなことを知っているのか、二人は訝しんだ。こんな怪しさ満点の男を入れるべきか考えはしたが『鍵』の事だと言われると、入れる他ないと判断した。

 どちらにせよ、家に入れるとも限らない。一歩入ったのであれば、この男を信じるとレイは心の中で呟いた。


 男は家の中に入るなり、夢の扉を見て「おぉ、懐かしいなぁ」と嬉しそうに声を上げた。男はまるでこの家の中を知っているかの様に、中庭に続く通路へ先に歩き始めた。


 男から二、三歩離れて歩きつつ、レイはシンに囁いた。


「見覚え、あるか?」


 中年男を自分たちが住む世界で見たことがあるかと。

 シンは「いや、一度も」と答え、二人は小首をかしげた。

 その声が聞こえていたのか、中年男はレイを振り返り「君には会ったことがあるよ」と柔らかな笑みを浮かべた。


「……え?」


「まぁ、忘れているだろう。もう何年も前だがね。たった一度。その時の君は随分と荒んでいた様子だった。先日、妹さんと会った時は、とても感慨深いものがあったよ」


 懐かしむ様に自分を見つめる男を、戸惑いながらも観察する。嘘の気配はない。しかし、自分には()()()()()()()()のだ。


 記録庫に着く迄の間、それ以上はなにも会話は無かった。


 

ーーーーー




「そろそろ『鍵』について、詳しい話しを聞かせていただけませんか?」


 レイは静かな、しかし何処か冷たさを感じる声を中年男に放った。

 記録庫の天井を仰いでいた中年男は、「あぁ、すまんな」と言って、人の良さそうな笑顔で応える。

 笑顔を戻しても、どこか微笑んでいるように見えるのは、この男の顔が元からそういう作りなのだと思わせた。得なようでもあり、時には無駄に人を怒らせるような損な顔でもあるとレイは思っていた。現に、たった今、隣りに座っているシンが、終始不機嫌な顔つきで男を見てる。

 以前、「可笑しくもないのにヘラヘラしている奴ほど信用ならん」とシンが言っていたことをレイは思い出し、小さく苦笑した。


「まず、圭は……」と、中年男が話しを始めた。


「君たちが監視している二宮圭は私の息子だ。息子は半分、君たちと同じ血が入っているんだよ」


 男は穏やかな顔で言った。

 レイとシンは顔を見合わせた。


「俺たちと、同じ?息子?」


 シンは何を言っているのだと言わんばかりに困惑した声で呟く。


「どういうことでしょう?」


 レイの声にも驚きが混じっていたが、シンよりも遥かに冷静だ。


 男は微笑みながらレイの顔を真っ直ぐに見据える。


「私は、レムアドミニスターの人間。元法術師だ」


 その一言は、レイとシンの思考を停止させるのに、十分すぎる程の効力があった。



最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


続きが気になる!という方は是非ブックマークや☆、評価、感想など今後の励みになりますので、残してもらえると喜びます!よろしくお願いします!



今回、とても的確なご意見頂きました。

お忙しい中、お読みいただき、本当にありがとうございます。

ご指摘頂いた点、今すぐに直せる範疇にない為、またポツポツ直していこうと思っています。

それまでは、ひとまず毎日の投稿はして参りますので、宜しくお願いします☆

いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おお!あのパッパさん、やっぱり何か変だと思ったら!こういう展開、燃えますよね!おとーちゃんのかっこいい姿を見られるのでしょうか!すごく楽しみです!
2022/06/17 00:47 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ