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ドリームハッカー 〜隣の家は異世界への入り口だった〜  作者: 星野木 佐ノ
第一部

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第二十三話 相棒

読んで頂き、ありがとうございます。

本日2話連続投稿です。第二十二話未読の方は一つ戻って読んでください。

では、よろしくお願いします。


「どうだ?」


 岩陰に隠れ待機していると、静かに金色の毛並みの犬が近寄って来た。シンは声を顰め犬に訊ねると、犬は直ぐに人の姿へ変化した。


「念のため、彼の周りに結界を張ってはみたが、特に何か気になる点は無かった。砂浜に寝転がり、星を見ている」


 レイは声を顰めシンに二宮圭の様子を伝えた。

 ここは二宮圭の夢の中。

 満天の星空と、穏やかな海。その砂浜で、彼は寝転びながら、星空観測をしている様だった。


「それにしても、随分とリアルな砂浜の感触だな……」


「海もそうだった。恐らく、これは彼のメモリーレムだろう。相当、思い入れがある記憶なんだろうな……」


 二人は暫く、黙ったまま二宮圭の様子を観察していたが、これといって変わった動きはなく、時折腕を上げ星空をなぞる様な行為をしていたが、それ以外の動きは見せなかった。ただただ波の音だけが響く、なんとも静かな夢だ。


 レイは腕時計に目をやり「そろそろ夜明けだ」と囁いた。


「大丈夫そうだな……」


「あぁ。とりあえず、今日は一旦戻るか。ミユウ達の事も気になるし」


 レイがそう言うとシンは黙って頷き、二人は二宮圭の夢の中から出て行った。




ーーーーー


「ミユウ、アサト!西棟K6947へ向かって下さい!」


「「了解!」」


 二人が記録庫を出て行くと、戻ってきたばかりの他の騎士達が次の扉をアッシュに指示され、直ぐに向かう。

 騎士達が検挙してきた「法術師モドキ」達は、ヒスイが用意した拘束の陣の中へ次々と放り込まれた。


「法術師モドキ」とは、元々はレムアドミニスターで法術師を目指してアカデミーで学んで来た者達だ。

 しかし、魔力量やその者の素質、成績等、法術師としては向いていないと判断され「法術師」としては、組織には入れなかった者達だ。

 それでも、魔力持ちは貴重な存在の為、法術師として働けなくても、組織の研究員として雇われている事も多い。しかし、プライドが高くそれが気に入らないと思う者達も一定数居た。そういった者達がハンターと闇契約をし手を組んで、不正に夢の扉を開ける行為をし、ハンターが喰い残した夢の残滓を回収。それを売り捌く、という行為をしているのだ。最近では、金欲しさに引退した元法術師さえも悪に手を染める者もいる。

 騎士達がハンターを討伐するのは、ハンターが喰った夢は主に回帰されるからだが、法術師モドキについては別だ。ハンターについては討伐をするが、裏切り者達とはいえ、元仲間達だ。その者達は出来るだけ検挙するのだが、法術師モドキでは無く元法術師となると、戦闘になる事もしばしばあった。その時は止むを得ず成敗することになり、とても後味の悪い仕事となる。


「しかし……こんなに多くの法術師モドキがハンターと手を組んで居たとは……」


 拘束の陣を見ながら、ヒスイは静かに言う。その声には少なからず驚きが混ざっていたが、他の者が聞くと平坦な声に聞こえただろう。アッシュはキーボードを操作しつつ、チラリとヒスイを見た。他から見たら無表情だろうが、アッシュの目には悲痛の表情に映る。


「中には組織で研究者として今現在も働いている者も何人か居ますし、これは由々しき事態ですね……」


 今回の件は、ダークログスターが仕掛けて来たことであると、調べはついていた。

 検挙した者の中に見知った顔があり、ヒスイが口を割らせたのだ。


 夢の扉を開けるのは法術師の役目のため、だいたいが一件につき一人の法術師が就く。夢の扉を開ける方法は、アカデミーに入って一番最初に学ぶ術だ。万が一、その場に扉が無い場合、緊急度に合わせ組織に通知してから仮の扉を開ける方法がある。それについても、アカデミーで最初に学ぶ事だ。組織に通知する事により、強引に扉を作った事で生じる「傷」を修復し、本来の扉から入った場合と同じ様にプログラム変更を行う。そうする事で夢の主には影響は無くなる。その「仮の扉」の開け方を利用し、組織に通知無しで不正に扉を開ける行為を法術師モドキ達が行っているのだ。プログラム変更を行わない為、夢に傷が出来る。その傷が影響し、悪夢に変化する事もあるのだ。

 ハンターの者達も同じ様に法術師を扱っている様で、検挙する法術師は必ず一人だった。今回、アッシュ達がいる記録庫内だけでも三十人は居て、恐らく本部にも同じくらいの人数が捕まったであろうと推測出来た。中には何度も検挙され、釈放されては、また捕まることを繰り返している者もいる。

 顔触れは老若男女問わずで、年齢も上は七十歳、下は十九歳と様々だ。七十歳の老人を横目に何故、その歳になってまでハンターに付いたのか、アッシュには到底理解し難かった。

 それと同時に、大量のハンターを放ったダークログスターは、何かに焦っているのでは無いかとも考えられた。法術師モドキとは言え、これだけの人数の法術師を集めるのは簡単な事では無い。考えたくは無いが、レムアドミニスター内の仲間にダークログスターと手を組み斡旋している者が居るという事は容易に考えられる。でなければ、ダークログスターと簡単に手を組もうとする者が三十人以上も居るとは考え難い。仲間に誘われて行ってみたら、実はハンターとの仕事であったと知った者も中にはいるだろう。それがダークログスターに協力する事になるとも思いもせずに。



ーーーーー


 ミユウとアサトは、三十代の男性の夢の中に居た。

 見ている夢は、何か小動物に追いかけられている夢だった。それも一匹ではなく、複数匹に追いかけられており、夢の主は必死に逃げているが、その顔は少し楽しげだ。

 しかし、動物に追いかけられる夢は、だいたいがストレスを抱えている暗示のため、ミユウとアサトは夢の主に少なからず同情をしていた。

 その様子を見ているのは、ミユウ達だけではない。

 ハンターが三体と法術師モドキが一人、彼女達と同じ様に夢の主を見ていた。


「ミュウちゃん、あの法術師、モドキじゃないかも知れない。気取られ無い様に気をつけてね」


「うん。そんな感じするわね。気を付けるわ」


 そういうなり、ミユウはシマリスに変化した。


「え!?ミュウちゃんの変化ってリスなの!?」


 アサトが小声で驚き、ミユウはシマリスの姿のまま口元に小さな指を当てた。


『アサトくん、しぃ〜!』


 アサトは慌て口を両手で塞ぎ、ハンター達に目をやる。

 大丈夫、気が付かれていなそうだ。


『行ってくるわね』


「気を付けて」


 ミユウが結界を張りに茂みから飛び出して行ったが、小さい為、あっという間に見えなくなった。

 あれなら恐らく法術師モドキで無くても気が付かれ無い可能性が高く、アサトは気持ち少しだけ緊張感を解す事が出来た。


 ミユウは結界を張り終えたと同時に、攻撃の術を放った。ハンター達は予期せぬ攻撃に慌てて結界内へ飛び込んで行く。それを見たアサトは「さっすが!レイさんの妹!」と、ニヤリと笑うと素早く結界内へ飛び出して行った。



ーーーーー


 ミユウとアサトが記録庫へ戻ると、レイとシンが戻って来ていた。

 レイはミユウを見るなり、青白い顔で駆け寄り抱きしめた。


「良かった、無事だったか……」


「ちょ!お兄ちゃん!苦しっ!」


 ミユウはレイの背中を容赦なくバンバン叩き、離すように促す。なかなか離れない兄にミユウは半ば諦め、叩くのを止めた。


「心配した」

 

 弱々しい声がミユウの耳元に届いた。


「うん。でも大丈夫だったよ。心配してくれて、ありがとう」


「うん」


「ほら、レイ。そろそろ離れろ。とにかく二人とも無事で良かったじゃ無いか」


 シンが呆れながらレイを引き剥がし、ミユウを解放する。


「他の騎士や法術師達は?」と、アサトが誰にとも無く訊ねる。


 記録庫にはいつものメンバーとヒスイ、そして拘束の陣に入っている検挙した法術師モドキ達だけだった。


「アサト達が行った後、ピタリと止まったのですが、皆さんには念のため食堂で少し休んでもらっています」


 アッシュが応えると、ヒスイが続けて話をする。


「現実界の人間の多くは六時頃から起き出す人が増えますから、ハンターもそれに合わせて引いたのだと思います」


 その言葉にミユウは懐中時計を開いた。現実界では、間も無く五時半を迎えようとしていた。




最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


続きが気になる!という方は是非ブックマークや☆、評価、感想など今後の励みになりますので、残してもらえると喜びます!よろしくお願いします!

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