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小説投稿サイト大事典【2019年版】  作者: とあるWeb小説投稿サイト研究者
2章 掲示板型
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コラム2 掲示板 × インターネット黎明期 × 掲示板小説 みたいな

掲示板(電子掲示板、BBS:Bulletin Board System)はパソコン通信時代から2000年代のインターネット黎明期において大流行したシステムの一つです。インターネット黎明期において多くの掲示板が生まれました。有名どころで言うならばこのあたりでしょうか。



1996年 セガBBS

1997年 あめぞう

1997年 価格.com

1998年 Yahoo!掲示板

1999年 2ちゃんねる

1999年 発言小町

2001年 ふたば☆ちゃんねる

2004年 mixiコミュニティ

2004年 Yahoo!知恵袋



ただ、個人サイトも含め誕生した多くの掲示板は現在閉鎖されています。




掲示板システムは簡単に導入でき、誰でも参加でき、面識のない利用者同士でも気軽に書き込めることが売りで多くの利用者を生み出します。もちろんオンライン小説にとっても掲示板は大きな役割を果たしてきました。



1つは小説の批評活動、晒しと呼ばれる行為など小説の鍛錬を目的としたもの。


自作品を掲示板に載せ、批評してもらい改善点を教えてもらったり添削してもらったりする文化。基本的に小説執筆の勉強のために使われます。この文化は『2ちゃんねる』や、『作家でごはん』、『ライトノベル作法研究所』などの投稿サイトで培われてきました。


2つめは作品の探索用。捜索掲示板やスコ速など、作品を探すために使用されます。『2ちゃんねる』や『Arcadia』、『ハーメルン』など古くから存在しているサイトでは設置されてある掲示板で自薦や他薦など作品紹介のスレッドがあります。


そして3つ目は掲示板発祥の出版作品。『電車男』を起点とし、多くのスレが書籍化されていきました。




電車男は2ちゃんねるのスレッドの書き込みをそのまま掲載したものです。単行本化され、ベストセラーそして漫画家、ドラマ化、舞台化されるなどして大ヒットします。


出版した際の作者名は『中野独人なかのひとり』です。これは『中の一人』を意味するもので、架空の名前。匿名掲示板としての特性から、作者を特定しにくいのと、スレッドの皆で作り上げた作品としてこのようになったようです。


電車男は2005年時点で100万部を突破しました。


この作品以降多くのスレッドが出版されていきました。



中野 独人『電車男』新潮社 (2004/10/22)


板野 住人『痴漢男』双葉社 (2005/04)


黒井勇人『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』新潮社 (2008/6/26)


橙乃ままれ『まおゆう魔王勇者』KADOKAWA/エンターブレイン (2010/12/29)


@遼太郎 『風俗いったら人生変わったwww』 小学館 (2012/7/14)


富澤南『ゲーセンで出会った不思議な子の話』 エンターブレイン (2013/9/20)




2007年9月にはぶんか社が『2ちゃんねる新書』というものを立ち上げたました。スレッドの内容を書籍化するために作られたレーベルで2008年7月まで定期的に発行されていましたが、それ以降の発売はありません。


この辺りまでは掲示板から書籍化する際に、内容をそのまま載せているものが多かったです。2010年あたりから小説のフォーマットになおして出版されるようになってきます。また最近ではやる夫スレ発の作品が増えてきます。



やる夫とは2ちゃんねるに存在するキャラクターです。



     /⌒  ⌒\

   /( ●)  (●)\

  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   

  |     |r┬-|     |

  \      `ー'´     /



https://ja.wikipedia.org/wiki/やる夫



やる夫スレはAAアスキーアート作品の一種で、2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板などに立てられるようになったやる夫を主人公とするAA作品、及びその作品を載せているスレのことです。


00年代において、ネット発の面白い作品が大量に生まれたのがやる夫スレでした。


そしてWeb作品の書籍が相次ぐ現在になり、発掘されていっているようですね。最近角川から4作品が書籍化のお知らせがありました。


ただ、匿名掲示板のため、著者にコンタクトを取るのはかなり大変なようですね。




蝸牛くも『ゴブリンスレイヤー』SBクリエイティブ (2016/2/12)


間 孝史 『朝比奈若葉と○○な彼氏』KADOKAWA (2019/9/25)


ハイヌミ『君は死ねない灰かぶりの魔女』KADOKAWA (2019/10/10)


荻原 数馬『クレイジー・キッチン』KADOKAWA (2019/10/10)


川田 両悟『アキトはカードを引くようです』KADOKAWA (2019/10/25)




またスレ発ではありませんが、掲示板という舞台を作品に組み込んだ作品も多く生まれました。



『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた』小説家になろう

https://ncode.syosetu.com/n7594ct/


『迷宮と掲示板』小説家になろう

https://ncode.syosetu.com/n1799br/


『勇者互助組合 交流型掲示板』小説家になろう

https://ncode.syosetu.com/n8344u/



などなど、掲示板システムは色々な場所に影響を与えました。




ただ、こうした掲示板文化はSNSが発達していくごとに終わりを迎えつつあります。SNSが駆逐したと言うよりは時代の流れだと思われます。それは匿名文化の終わりを意味するものです。



mixiやFace BookによりSNSの概念が浸透し、本人とインターネットが徐々に近くなっていきました。


インターネット上に情報が増えるにつれ、デマ、フェイクニュースが氾濫するようになりました。また著作権に対する考え方も徐々に厳しくなってきています。インターネットが商業化するにつれて、個人も収益化を目指すようになりました。



そのような時代では匿名性というのはデメリットが大きくなります。



誰が発言しているのか、誰が作ったのかというのが大事になってきます。


また小説投稿においても、ネット発の書籍化が始まるにつれ匿名システムに魅力が感じられなくなっていくのです。




現在では掲示板系の小説投稿サイトはあまり人気がありません。


男性向け小説の最大手であったArcadiaも、公募のための小説鍛錬を目的とした作家でごはんや、ライトノベル作法研究所も徐々に力をなくしてきています。


名作の宝庫だったやる夫スレの作者達も、小説家になろうやカクヨムなどの小説投稿サイトに移住していきました。



ただ、掲示板が作った文化は色々なところに継承されており、またそれが新しい文化となっていくのを思えばそう悪いことでもないのかなと思いますね。

・参考資料


ばるぼら 他『僕たちのインターネット史』亜紀書房 (2017/6/17)


『2chスレから書籍化された小説14選【2ちゃんねるで話題となった物語たち】』読書のすゝめ

https://24trip.jp/2ch/


『歴史に残すべきやる夫スレメモ』note

https://note.mu/ssakagami/n/nc49cdd0358b2


『やる夫スレ談義に沸き立つ人たち「やる夫スレが廃れた時点で俺にとってのインターネッツは終わった」「やる夫スレという新しい表現に才能が集まってたような気がする。」そして書籍化の話へ』toggeter

https://togetter.com/li/1324325


『「やる夫スレ」の傑作4編が書籍になるようです 今再び脚光浴びる「やる夫」、企画者に意図を聞いた』ねとらぼ

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1910/11/news018.html


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[一言] 確かに匿名式の価値観は薄らいできましたね 当時における著作権の所有者は作者自身ではなく、無償の互助からなる匿名コミュニティにあったと思います だからこそ、のまネコ騒動やまとめブログの炎上に見…
[良い点] 本作を読んで思い出したようにハーメルンに行ってみました! そしたらなんと! 男塾の二次創作に出会ってしまいました! 超面白いんです! また、over the rainbowにも行ってみま…
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