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潜入! モンスターっ娘寮

 マリオンちゃんの部屋は、モンスターっ娘ちゃんたちが住む寮の中にある。


 俺がいる寮とかは部屋の広さで寮の場所が違うんだけど、モンスターっ娘ちゃんたちの寮は部屋の大きさ色々でひとつになってるみたいだ。

 うーむぅ。

 やっぱ、いろいろあるのかな。


 食事のメニューとか。

 うんうん。ご飯は重要だからな。

 教室での食事はこっちに合わせてもらってるし、せめて寮では好きなもの食べてほしい!


「きょろきょろしてないで。置いてくよ」


 先を歩いていたメフティルトちゃんが、ちょっとしかめた顔で振り向く。


「あ、ごめんなさい」


 慌ててメフティルトちゃんの翼に触りそうな距離まで、小走りで近づく。

 置いていかれるのも困るけど、きょろきょろをするのをやめるのも至難の業!


 だって、まわりみーんなモンスターっ娘ちゃんなんだよ?

 おっきい子(縦横におっきくて、ムキムキバリバリでうらやましい筋肉!)、ちっちゃい子(一メートルぐらいの子とか、手のひらサイズ!! の子!!)。

 鱗がある子、毛皮のある子、目がひとつの子。

 パッと見人間にしか見えない子も、ここにいるってことは実はそうじゃないんだろう。

 吸血鬼とか狼男とか。

 いや、男じゃないのはわかってますよ?


 知らない人(俺)が入り込んでいるのが珍しいのか、結構な人数に遠巻きに見られている。

 ふふふ。

 君たちが俺を見るということは、俺にも君たちが見られるということ。


 フーゥ!

 モンスターっ娘ちゃんに囲まれる天国!!

 まさに異世界!!


 いや、マジで異世界だったよな。

 異世界最高!


 ぺちっ。


「きゃっ」


 突然、頬をビンタされた!

 いや、メフティルトちゃんの翼が、軽く頬にあたっちゃっただけだ。


「ごめ……なにやってんの?」


 急に立ち止まった彼女の羽に突っ込んだ俺が悪いんですけど、つかメフティルトちゃんなんなのそれ!!

 ツンデレの見本なの!?

 テンプレが過ぎるんですけど!!


 けどいい!

 テンプレってのは、いいものだからこそテンプレ化してるんですよ。

 言い換えれば王道。

 ツンデレの王道!


「よそ見してたわ。ごめんなさいね」

「べつにいいけど。ここ、マリオンの部屋」


 親指でくいっとドアを示す。


 おーここかー。

 つか、勢いで来ちゃったけど良かったのか?

 心配でお見舞いしたい気持ちはあるけど、急に来られたら困ったりしないか?

 かといって、連絡を取ろうにもこっちの世界にはスマホとかありませんし?

 異世界、不便!!


「マリオン、入るよ」


 なんてぐるぐる考えてるうちに、メフティルトちゃんがドアを開ける。

 いや、ノックぐらいはした方がいいんじゃ!?


「あ、メフティルトさん。何か……」

「アタシじゃなくて、レティシアがなんかあるんだって」

「へっ。レティシアさんが!?」


 部屋の中は見てないけど、聞こえる声は結構元気そう。


「そ。あの人間。じゃ、アタシは部屋に帰るから。帰りに教師に見つかったらアタシの部屋に来ただけって言いなよ。見舞いの案内したのがばれたらめんどくさいことになるから」

「わかったわ。なるべく見つからないようにするし。えーっと、あなたの部屋は……」


 突っ込んで聞かれた時に、答えられないとまずいよな。


「あそこの部屋。リースが飾ってあるとこ」


 顎で示された方を見ると、大きめのドアにドライフラワーのリースが飾られたドアがある。

 ドライフラワーだからちょっと色は褪せ気味だけど、それに合わせてクリーム色のレースリボンで飾っていたりしてセンス良し。

 ……ねぇ、格好はパンクだけど、乙女なの?

 もしかしてそうなの!?


「じゃ」


 そっけなく去ってく後ろ姿。

 強そうな角とか翼とか尻尾とか、ベリショピアスマシマシギリギリミニスカ、胸元ガバァで中身はもしかして乙女チックなんですか!?


 おー、おー、おおー。

 気になる存在ではありましたが、ますます気になるよ、メフティルトちゃん。


 追いかけて、ちょっとお部屋見せて☆ とかすごく言いたいですけど、今はメフティルトちゃんよりマリオンちゃんなのです。


「えーっと、入ってもいいかしら? 具合が悪いなら無理しなくてもいいのだけど」


 部屋の中は見ずに声をかける。


「はっ、あのっ。えっ……平気です。はい。どうぞ」

「じゃぁ、お邪魔します」


 マリオンちゃんの部屋は小さかった。

 あまり物もなくて、作り付けの戸棚には授業で使う教科書ぐらいしか並んでいないし、壁のフックには上着の一枚もない。

 あ、そっか。

 マリオンちゃんは服も体の一部だもんな。

 おしゃれし放題だな!!


 だけど、ベッドにはこだわりがあるのか、細かなパッチワークで作られたベッドカバーの下から、大きなふかふか枕が顔をのぞかせている。


「わざわざ来てもらって、ごめんなさいっ!」


 そういうマリオンちゃんは、ふかふか枕の上にスライムの姿でちょこんと乗っかっている。


「声は元気そうね」


 残念ながらスライムの顔色を見る技術は俺にはないのだ。


「はい。具合が悪いわけじゃなくて……」

「じゃあ、もしかして、擬態、できないとか? そうよね、あまりいろんなものに擬態するとできなくなるって言ってたわよね。もしかして、そのせい!? だったら――」


 俺のせいじゃないか!


「ちっ、ちちちっ、ちがいまちゅ。ちがいましゅ! っっちがいますっ!」


 マリオンちゃんはプルプル震えながら否定。

 つか、凄い噛んだね。


「あんなのは、ただのおどしです。夜更かしするとお化けが来るよ的なのですっ。擬態は、できますっ」


 ぬるっとマリオンちゃんが伸びて、ベッドに座るエリヴィラちゃんの姿になる。

 三つ編み眼鏡のエリヴィラちゃん。

 いつも通り完璧な擬態である。


「部屋では、スライムの姿でいることが多いんです。楽だし部屋も広く使えますから」

「なるほど。部屋が広くなるのはいいわね」

「はい。この部屋でも広々です」

「ふふ。あら……でも、それならどうしてお休みしてたの?」


 具合が悪いわけじゃなくて、擬態もできるなら、なぜ?


「それは……」


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