おはようございま~す♪
テッテレ、テテーテーテー、テテーン♪
頭の中で即興のBGMを流しながら、俺、福井直人だったレティシア・ファラリスは教室に向かう。
今日も今日とてご機嫌です!
だって、教室に行けば周りは全部女の子!
教室の一番後ろ、かつ端っこと言うベストなポジションから女の子たちに気付かれずたっぷり眺められるあの教室に行くのに、ご機嫌にならないわけがない。
さらに本日は、昨日買ったばかりの新しい下着を着用!
いやー、トランクスでさえ新しいのに足を通すときにはちょっとテンション上がったのに、今日はエダと色違いおそろいの、かっわいいブラ・ショーツのセットアップですよ!!
あ、ちなみに女の子のパンツはショーツって言うそうです。
まぁ、諸説あって呼び方もいっぱいあるみたいですけど。
そうそう、そんでもってリゼットちゃん――モーリア先生ともおそろいかもしれないってことで、テンションは爆上げ。
ぱっちりの目覚めで、朝のぼんやりしている時間が大幅カットされた結果、いつもより早く教室に到着することとなった。
「おはようございま~す♪」
元気に教室のドアを開けると、
「おはようございます、レティシア様!」
「今日もご機嫌麗しゅぅございます」
「おお、おはようございますっ」
「はよ」
教室の中からいろんな挨拶が返ってくる。
ちなみに最後の「はよ」は、ドラゴン娘のメフティルトちゃん。
机に突っ伏して寝ていたが、ちょっと頭を上げて手を振ってくれた。
そしてすぐにまた睡眠再開。
朝からそんなに眠いとは、夜更かしでもしてたのかな?
そして、今日もグローリアちゃんが突っ込んでくるかと腹筋に力を入れていたけど、彼女たちはまだだったもよう。
エリヴィラちゃんも席にいない……
「あら?」
エリヴィラちゃんがいた。
いたんだけど、教室一番後ろの俺の隣の席ではなくて、教卓に近い前の方の席に座っている。
しかも、三つ編み眼鏡で。
エリヴィラちゃんは最近髪の毛下ろしてるから、三つ編みはレア!
下ろしているのもかわいいけど、三つ編みもやっぱかわいい。
そして眼鏡。
授業中とかにしかかけてくれない眼鏡はさらにレアで、三つ編みとの親和性がめちゃめちゃ高い逸品!
そんなレアレアなエリヴィラちゃんが、なんで自分の席じゃないところに?
「エリヴィラさん、どうしてこの席に?」
「ぇえ?」
エリヴィラちゃんはビクンと肩を揺らして、不安そうに俺を見る。
うぇ? 俺、なんか変なことした?
「あら? 席替えでもあったかしら?」
そんな覚えないし、他の子たちは前と同じ席にいるような気がするけど……
「ち、ちがいます。席替えは、ないです」
「そうよね? じゃあ、どうしてこの席に? あ、お友だちとおしゃべりでもしてた?」
友だちと話すのに席移動とかアルアルだよな。
エリヴィラちゃんはちょっと孤立してたから、話すのは俺とグローリアちゃんたちぐらいだったけど、他に席移動して話すぐらいのお友だちができたとはすばらしい。
「や、あの、そのっ」
エリヴィラちゃんは、今まで見たことないような顔でおろおろ!
どったの? クールビューティなエリヴィラちゃんもいいけど、おろおろエリヴィラちゃんもいい!!
あ、もしかして新しい友だち作ったらダメだと思ってるとか?
なんかそういう風習あったり?
そんなの俺は気にしないぞ~? むしろ仲良しが増えるってことは、百合の可能性が広がるってことで大歓迎なのである。
「お友だちができたなら、紹介してね」
「ち、ちがっ、違うんです」
「違う?」
エリヴィラちゃんは、なんか今にも泣きそうなぐらいおろおろしてる。
「よくわからないけど、授業の時以外ならエリヴィラちゃんはどこの席にいたっていいのよ?」
いいよね?
その席の持ち主が許可してるなら、別にいいよね?
なんかエリヴィラちゃんがおろおろしてるから、こっちまでなんか悪いことしてる気がしてくる。
「ちがうんです、ワタシ、ちがうんですっ」
「えぇ?」
だから、何が違うんだ?
「おはようございます」
ん、この声は?
振り向くと、ちょうど教室に入って来たらしいエリヴィラちゃんがいた。
「おはよう、エリヴィラさん……え?」
あっちにエリヴィラちゃん(ストレートロング)がいて……こっちにエリヴィラちゃん(三つ編み眼鏡)がいる?
教室の入り口、机、と何度も首を動かすが、間違いなくエリヴィラちゃんが二人いる。
エリヴィラちゃんが二人いる!?




