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お買い物・7


 リゼットちゃんと並んで、試着室のカーテンをちょっと開けて中をのぞく。


「あの、これでいいんでしょうか?」


 胸の前で手をもじもじさせているエダの上半身は白いブラのみ。

 エダのほんのり褐色の肌に、白いレース(トーションレースという種類だとレティシアの記憶から検索!)のブラはとにかく映える。

 それが小さ目おっぱいを優しく包み込み、丸い形に整えていた。


「はうっ」

「はうぅぅ」


 リゼットちゃんと俺は同時に後方によろめき座り込む。


「かわいいっ」

「かっわいい!」


 いや、俺はともかくリゼットちゃんもその反応?

 女の子として変な反応なんじゃないかと、ちょいヒヤッとしてたんだけど平気っぽい?


「ああん、もう、かわいいわ。かわいいわ。そうなのよ、ブラはあのくらいが一番かわいいの。レースのモチーフの大きさとカップの大きさがベストのバランス! そして、カップの形がハーフから3/4。胸のふくらみもデザインに組み込むような形。かわいい……」


 おお、リゼットちゃん語るねぇ。

 しかし、それ全部丸っと同意!


「細いレースの肩ひももいいわよね。もう、アクセサリーみたいじゃない?」

「うんうん。アンダーも細くてデザイン性があるのが素敵」


 そしてなにより、エダに百点満点に似合っている!


「同じデザインでも私のサイズになると……レースのバランスが崩れて途端にかわいくなくなるのよね。肩ひももあの細さじゃ食い込むし」

「そうよね。でも、レティシアちゃんならまだかわいいのあるじゃない。その点、わたしときたら」

「大変そう」

「うん。大変」 


 おっぱい大きいのがこんなに大変だとは、女にならねば分からなかったな。

 俺としては、おっぱいは大きくても小さくてもいいとは……まぁ、高校生の身では巨乳はまわりにあまりおらず希少価値ゆえに良いと思い込んでいたところはあるが。


「かわいいブラはないし、着る服は限られるし、太って見えるし、とにかく重いし。こんな胸、本当にきらいだわ」


 リゼットちゃんは自分の胸に手を置いて、大きなため息を吐く。

 いやいやいやいや!


「そんなことないわ! リゼットちゃんは素敵よ!」

「そうかしら」

「ええ。リゼットちゃんは大変みたいだからあんまり言うのはよくないかもしれないけど……、リゼットちゃんには似合ってると思うの」


 うん、リゼットちゃんの優しさとか包容力とかがそこにぎゅっと詰まっているようで、どこか母性的っていうか傍にいて安心できる感じが増幅される気がするんだよな。


「なんていうか、胸の大きさも全部ひっくるめてリゼットちゃんと言うか……でも、胸が小さくてもリゼットちゃんは素敵だし、えーっと難しいな。とにかく自分の体を嫌いだなんて言ってほしくないの。私はそのままのリゼットちゃんが大好きよ!」


 うおー、自分で何言ってるかよくわかんなくなってきたけど、言いたいことは言えた気がする!


「ブラが可愛くないのに?」

「それは、お互い様だし」

「そうね。ふふっ」

「ふふふっ」


 おでこが引っ付きそうな距離で、笑う。

 うん、この笑顔はレティシアの記憶の中の、少し幼いリゼットちゃんとおんなじだ。


「あのー、レティシア様? リゼット様?」


 あ、そうそう、エダのブラ見てるところだったんだ。


 慌てて立ち上がり、もう一度試着室を除く。


「はうっ」

「はぅぅぅっ」


 やっぱりぎゃんかわいい。

 けれど、2度目なのでなんとかその場にとどまる。


「サイズは店員さんに見たもらったので、間違いないと思うんですが……あの。初めてなので」

「エダちゃんのファーストブラなのね」


 ファーストブラ?

 なにそれ、ファーストキスみたいで甘酸っぱいな!!

 てか、そんなものなら、厳選に厳選を重ねたいところだが……


「はい。でも、私にこんな大人っぽいデザインは」

「すっごく似合ってるわ!」


 もっと選んで決めたいって思いもあるが、それ似合いすぎである!!

 褐色の肌と白いブラのコントラスト。

 上品で大人っぽいトーションレースが小ぶりなおっぱいを包み込む危ういアンバランスさ。

 ブラを持ち上げる肩ひもは小花を重ねた華奢なレースで、甘いかわいらしさをプラス。


 デザイナー・ミユキ、マジいい仕事する。

 これを選んだ店員さんもマジプロ。

 本当、神!


「けれど、こんな高いものは……」

「高い?」


 ブラについた値札を見ると、なるほどお高い。

 と言っても最高級品ってわけではなく、レースの繊細さを考えれば妥当な値段である。


「エダのファーストブラの値段にしたら、ちっとも高くないわ」

「でも……」

「そうそう、1枚ぐらい高いのがあってもいいじゃない」


 リゼットちゃんナイスアシスト!


「普段使いとは違う、勝負下着も持ってないと!」


 勝負下着って、ななな何の勝負するんですかね!?


「発表会の時なんかに、特別な下着をつけてると気合が入る気がするじゃない?」


 あ、ああ、そういう勝負ですか。

 服の下に着る鎧みたいな感じですかね?

 ちょっといけない想像が頭をよぎりました!


「そういうことなら、いいんでしょうか?」

「いいの! いいのよ! それじゃあ次は普段使いのブラよね!! 選んでくるわ!」

「レティシアちゃんずるい! わたしも!」


 俺とリゼットちゃんは競争するようにエダのサイズのゾーンにターン!


「絶対これに合うと思うの!」

「もう、レティシアちゃん。普段使いってこと忘れちゃダメ」


 フーゥ! 祭りはこれからだぜ!!


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