お買い物・6
俺、目覚めてからそんなことしてねぇ!!
ついでに言うと、レティシアが呪いで二年間寝ていた時も当然できませんよな。
つまりエダは、二年以上前の服を着ている。
そう思って見たら、エダの服レティシアの記憶のエダが来てるのとおんなじやつ!!
七分丈でひざ下スカートのワンピースじゃねぇよ!!
アレ、元は長袖ロングスカートのワンピースだよ!!
エダの背が伸びてつんつるてんになってる状態!!
「ごごご、ごめんなさい!!」
「レティシア様?」
「私、エダの服を買ってなかったわ!」
「え? ええ?」
「用意しなきゃいけなかったのに。ずっと昔の服を着せていたのよね。ごめんなさい。そのメイド服、エダにとても似合っていたからうっかりしていたわ」
「え? あ、そうですか?」
エダは自分の服を見下ろしてもじもじとする。
だよな、そんな古い服ずーっと着てるなんて、女の子には恥ずかしいことだよな!
二年以上前の服なのは間違いなくて、その前と後にも着てるから三年かもしくはもっと。
そんで下着も支給されず、さらしで何とかしてるとか!
やっばい!
「店員さん!! この子のサイズも測って選んでください!!」
「はぁ~い」
「いい、いえ! そんなメイドごときがこんな素敵なお店で!」
「いいの。これが主人の務めよ!! お茶が売れた分、お小遣い増やしてもらったわよね。アレを使いましょう!」
「あれはいざという時のために」
「今がいざよ!!」
今以上のいざがあるかい!!
小遣いの増額が結構すごくて、何に使うんだよ? とか思ったけど、使う!!
足りないぐらい!!
「はいぃ。こちらにどうぞ」
「レティシア様ぁ!」
店員さんによって、エダが試着室に引きずり込まれる。
頑張れ、エダ。
お前もなにかを無くして何かを得るのだ!
「リゼットちゃん、下着を買ったらエダの服を選ぶの手伝ってくれないしら?」
「もちろん任せて! 私、着られる服が少ないからいろんなお店を回ってるの。だから詳しいわよ」
「頼りになるわ」
「ふふ。もっと頼ってね」
たっのもしー!!
「え? あっ、そんな」
「大丈夫ですよぉ」
「ええっ。でも」
「はーい、力を抜いてぇ」
「ひゃんっ!」
おー、おー、測っておりますな。
うん、やっぱり生粋の女の子でもあれはちょっとびっくりするよなぁ。
「少し待っててくださいねぇ」
店員さんが試着室から出てくる。
「エダさんのサイズはどれですか?」
「そうですね、エダさんのサイズは、ここからここまでです」
店員さんが指さしたゾーンは、大きくて特にびっしりとブラが詰め込まれている。
一番小さいのからふたつかみっつ上の大きさかな。
「デザイン別に分けてあるものにもサイズがありますよぉ」
これ以上にまだあるのか!
それにしても……
「かわいいっ」
「かっわいい!」
俺とリゼットちゃんの声が重なる。
いや、本当にかわいいんだ。
俺のとかリゼットちゃんのとかもかわいいけど、エダのサイズは同じデザインでも三倍はかわいい。
おっぱいは大きいのもいいけど、ブラに関しては絶対小さめから中が飛び抜けてかわいいのだ。
柄の大きさ、レースの密度、リボンの大きさ、そのバランス。
どれをとってもこの大きさのために選ばれたかのようだ。
もう、ほんとカワイイ。
そして、デザインも色も豊富。
レティシアのサイズの三倍、リゼットちゃんサイズの十倍は数がありそう。
「ああ、いいなぁ。こんなにサイズがあるなんて」
「それに同じデザインのはずなのに、違うものみたい」
「本当よね」
「かわいいっ」
「かっわいい!」
もう俺とリゼットちゃんはカワイイカワイイしか言えなくなって、それを引っ張り出してはカワイイ、色違いを並べてはカワイイを連呼する。
「エダちゃんなら、こういうのが好きかしら? シンプルが好みよね?」
リゼットちゃんが取り出したのは、レースなどは使われていないネイビー一色のブラ。
飾り気は全くないのに、形と大きさがもうカワイイ。
「シンプルならこれもいいかも」
俺が選んだのは、ぱっと見チューブトップみたいなブラ。
イエローの花柄で、ちょっと水着みたい。
そして、このブラは何よりパンツがカワイイのだ。
おそろいのフリルのついたパンツ。
「かわいいっ」
「かっわいい!」
俺とリゼットちゃんは、ほんと壊れたレコーダーみたいだ。
だって、全部かわいいんだもん。
俺たちがカワイイカワイイ言ってる間に、店員さんはいくつかのブラを試着室に運んでいく。
「これもかわいいわ」
「本当にかっわいい!」
「あ、あのぉ」
エダが試着室のカーテンから顔だけを出す。
「あ、エダ、サイズは大丈夫?」
さっき聞かれたことと同じことを聞き返す。
「はい、サイズはいいと思うんですが、これでいいのか見ていただけますか?」
「ええっ!?」
「ええ、いいわよ」
リゼットちゃんが躊躇なく試着室に向かう。
「ほら、レティシアちゃんも」
「いや、でもっ」
「ほーら」
そんなっ、まずくない?
けど、あんまり拒否するのも良くないよな?
俺も見られてたし、いいの?
「レティシア様、お願いします」
エダの声が不安そうだ。
う、う、うう~ん。
……ええーい、ままよ!




