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あぶれた魔法

 いやー、それにしても。

 魔法楽しー!


 見ていて派手なのは火に雷の爆発系。

 風もクールな印象でカッコイイ。


 なんとなく地味な印象だった氷や冷気系の見方はがらりと変わった。

 大事!!

 ないと生きていけない!!

 主に冷蔵庫、冷凍庫、クーラー!!


 治癒魔法とか、見た目地味だけど大事だもんな。

 その節は大変お世話になりました!!

 レティシアが生きてるのは治癒魔法のおかげでございます!!

(ちなみに治癒魔法の実技は、植物で行われた)


 後、地味な魔法も多いけど、それは使い方を考えるのが楽しい!

 まぁ、俺が考える程度のことは、みんな考えてると思うけどね。


 他にも結構いろんなグループがあって、これのどこにも属さないレティシアたちって逆にすごいな。


 興味深く魔法を鑑賞してるうちに、とうとうあぶれ組の番だ。


 まとめて呼ばれたので、これ幸いと一緒についていく。


 おっと、結構注目浴びるな。

 これで何もしません。ってちょっと恥ずかしいけど、魔法を近くで見られるチャンスだし!


 うんうん。

 やっぱり近くで見ると違うわー。

 的になっている鎧やゴム人形の傷とかさ、ショボって印象の魔法でもやっぱ当たったら洒落にならないんだろうな。


 それにでかい。

 離れた所からに見たら、結構でかいなーぐらいだった鎧。

 でかい。

 え? これマトにする用に作った特別でかいのじゃなくて、実際に使うやつ?

 どんなでかい人が入るの?

 オークとか?

 ……んなバカなーとか言えないな。

 いるかもしれん。



 俺が鎧を見上げてる間に、メフティルトちゃんがアクセサリーをチャラチャラ言わせながら前に。


「アタシの魔法は増幅。ドラゴン族の特性含めマジックアイテムの効果を倍増させます。これとか全部そうだけど、どれかやってみる?」


 へー。

 てか、そのアクセ全部マジックアイテムなの?

 確かに細かい細工がしてあるし、高そうな宝石ついてるし。

 よく怒られないなー、侯爵家だから? とか思ってたけど、そーゆーわけね。


「メフティルトさんの持ち物を使ったら大変だわ。それなんて曾おじいさまの鱗でしょう?」


 くすくすとリゼットちゃんが笑う。


「まぁね。けど、エルダードラゴンとか言われてるけど、あれただのジジイだよ?」

「あなたにはそうかもしれないけど、大変なものなのよ。大事にしてね。今日はわかりやすい様にわたしが炎の符を作ったからこれで。威力はろうそく程度に抑えてあるから」

「ふーんじゃあ思いっきりできるね」


 メフティルトちゃんが、もらったお札をひらひらさせている隣で、エリヴィラちゃんはマト用の鎧を調べる。


「先生、私これを使っていいですか?」


 と、ひときわ大きいのを指さす。


「ええ、いいですよ。好きなのを使ってください」

「ありがとうございます」


 リゼットちゃんに丁寧にお礼を言い、エリヴィラちゃんは三つ編みのおさげを半分ほどいて鎧の前に。

 プチプチと何本も髪を引き抜く。


 魔法のため仕方ないのかもしれないけど、髪をそんなたくさん抜くのは心配だなー。

 毛根にダメージ行かない?

 抜いた長い髪を鎧の手首、足首、つま先立ちで苦労しながらも首のあたりに巻き付ける。

 コンコンコン。

 指先で鎧の胸部分をノックすると、鎧にぐわっと力が入った。


 いや、鎧だから筋肉に力が入るようなことはないよ。

 その、ロボットものであるじゃん!?

 起動するときのあの感じ!

 シャキーン! ってあの感じ‼︎

 うおー、テンション上がるわー!!


 ガシャガシャ、ガシャーン!!

 発進!!


 と、行きたいところだが、立てるための軸か何かが片足に入っているらしく、鎧は足を一本固定したまま台座の上で動くだけだ。

 それでも迫力あるわー。

 だってこの大きさで金属だよ?

 すっごい重さだろうに、筋力ではなく魔法とはいえ女の子が一人で動かせるって!


「はぁー、凄いわねぇ」

「いえ、私なんてまだまだです。母なんかは小山ほどのゴーレムを作りますよ」

「まぁ」


 山……山って。

 魔法凄い。


 鎧は鉄のこすれる音を立てながら、ゆっくりと動き続けている。

 カッコイイ……。


「ふぁー」

 同じくあぶれ組のマリオンちゃんもぽーっと鎧を見上げていた。

 おお、君にもわかるのかね? このかっこよさが!


「えーっと、普通にやったらこんなもん?」


 っと、メフティルトちゃんも始めてる。

 そっちも見たい!!


 メフティルトちゃんが、符をちょいちょいと降ると、ぽっと火が付いた。

 うん、ろうそく程度の言葉に偽りなし。

 リゼットちゃんだからこそできる、細やかな魔法の使い方だよね。


「そんで、あたしができるのはこれをこう……」


 ばっと、護を中心に火球が生まれた。

 そこそこ離れた場所にいる俺の顔にまで、熱い風がかかった。


 すげっ!

 炎の魔法グループの中で、一番すごかった子と張り合えるよこれ!


 講師の先生たちがぱっと動いて、障壁で火球を消す。

 この障壁も地味にすごいよなぁ。


 なんかすごいすごい言ってるばっかだな、俺。


「こんな感じでいい?」


 メフティルトちゃんがパンパンと手はたいて、符の燃えカスを払う……


 メキョ!

 ベキベキ!


 突然、背中の方から何かが壊れる音がした。


 振り向くとエリヴィラちゃんが動かしていた鎧が台座から降りている。

 今の、軸が折れる音か?


 ガショガショ! ガシャン!!


 痙攣してるみたいな奇妙な動きで、鎧は暴れはじめる。


「どうしっ、止まって!!」


 エリヴィラちゃんは、鎧に近づき手を延ばす。

 危ないっ!!


「ダメよ!!」


 リゼットちゃんがエリヴィラちゃんの制服をつかんで引き離す。

 エリヴィラちゃんがさっきまでいた場所に、鎧が倒れ込んだ。


 あっぶね! あっぶね!

 リゼットちゃんナイス!!


 だが鎧は立ち上がり、奇妙なダンスを踊るように暴れる。

 その傍にマリオンちゃんがいた。


「逃げて!!」


 マリオンちゃんは体がすくんでるのか動こうとしない。

 助けにっ――


 飛び出そうとする俺の腕を、メフティルトちゃんがつかむ。


「あの子は平気よっ、だって――」


 んなわけあるかっ!

 俺の目の前で、女の子が傷つくことは許されないのだ!!


 かわいそうなのはダメ!!

 俺はこと現実に関してはハッピーエンド至上主義だからっ!!


 メフティルトちゃんの腕を振り払い、俺はマリオンちゃんと鎧に向かって飛び出した。


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