おしゃべりは止まらない
いつも思う。
どうして女の子たちは、こんなにずっと話しを続けていられるのかと。
「それで、新しく出た靴がかわいいんすよ。このデザインで走れる靴ってすごくないっすか?」
「確かにいいけど、どうしても大きくなるわね」
「そこはクッションの関係上致し方ないっす!」
「け~ど~、カワイイ系なのにおっきいと~、合わせる服を考えたらごついのはきつくない~?」
「うむむ……」
「いっそ大きめのアクセサリーかリボンで強調してみたらどうです? バランスがとれればいいと思うのだけど」
「あ~、それいいかも~」
グローリアちゃんたちとエリヴィラちゃんは、イルマちゃんの持ってきたカタログ一冊でずーっと話し続けている。
この様子を見ていて、どうしてそこまで話すことかあるのか?
の、疑問の答えが見つかった気がする。
きっと女の子たちは好きなことが多いのだ。
俺だって気の合う仲間が見つかって、百合談議ができるようになったら声がかれるまでしゃべり続ける自信がある。
俺にとっての百合と同等に愛するものが、女の子たちにはたくさんあるのだ。
そして語り合える相手がいる。
……話すことが尽きないのも納得だ。
好きなことを語る時、人はいい顔になる。
次から次へと話題を変えながらも楽しそうに話す彼女たち。
眺めているだけで自然とこちらもう顔になるではなすか。
……あー、俺はこの教室の壁になりたい。
天井でもいい。
「お義姉さまはどれが好きですか?」
「え、ああ」
楽しそうな彼女らを眺めているだけで、また尊死しそうになってたけど……
そうだ! 今、俺はレティシアなのだから、ここに混じってもいいのだ!!
ビバ! 異世界転移!!
「うーん、悩むわね。これが使いやすいかしら?」
「ああ、いいですね。使いまわしがききそう」
「ええ~、お義姉さまはもっと華やかなものが似合います!」
エリヴィラちゃんとグローリアちゃんで俺にはどれが似合うかの論争が始まった。
直人の時なら、いや買わないし。とか言って水を差すところだが、これはこれでいいのだ。
実のない不毛な会話と、言いたくば言えばいい。
だが、それで彼女たちが笑顔になる。
これ以上に素晴らしいことが他にあるというのか!!
いやない!!
エリヴィラちゃんは前のお茶会から、グローリアちゃんたちとも仲良くなって、ランチとか休憩時間には一緒にいるようになった。
イルマちゃんとラウラちゃんが引っ張ってきた。ってのが真相だけど。
エリヴィラちゃんはひとりで静かにしてるのが好きかもしれないので、迷惑そうならフォロー入れるつもりだったけど、必要なかったな。
グローリアちゃんたちに比べると口数は少ないけれど、結構楽しそうだ。
良きかな良きかな。
しかし、グローリアちゃん、イルマちゃん、ラウラちゃん。
ここにエリヴィラちゃんが入ると、ほんっとーにバランスがいい。
絵面が様になる!
切実にカメラが欲しい!!
探せばないかな?
この世界で俺が手に入れられるレベルのカメラ。
もしくは絵心でもいい。
この瞬間をなんとか永遠にできないものか。
「……さま? お義姉さま!」
「あ、なにかしら?」
いけね。
またトリップしておりました。
百合は合法ドラッグだから仕方ないね!
「次は移動教室ですからそろそろ」
「そうだったわね」
次の時間は魔法のテストなのである。
テストと言っても点数をつけるものではなく、今の実力を測るもの。
つまりは、全力でぶっ放したらどのくらいになるか見てみよう!
ってことらしい。
今、専門の講師の人たちが来てるから、その人たちがいるうちにやってしまおうってことだな。
いつもはいない講師さんがいるおかげで急に魔法の実技授業が詰め込まれて、俺とエリヴィラちゃん含むハブられ組は授業の半分は自習してる。
次の授業も俺は自習しててもいいって、リゼットちゃんに言ってもらったけど……行く。
絶対行く。
だって、エリヴィラちゃんも行っちゃうからつまんないし、魔法を全力ブッパとかそんなん見たいにきまってるだろ!
「私も見学に行くわ」
「お義姉さま、見に来られるのですか!」
「ええ。グローリアちゃんの全力の魔法も見たいし」
今のところ『ものすごい静電気』しか見てないからぜひ見たい。
「そ、そうですか! ええ、見ててください! すごいの見せますから!!」
おー、気合入ってるなぁ。
「ふふ。楽しみにしてるわ」
「全力……ですか」
エリヴィラちゃんがぽつりと呟く。
「どうかした?」
「いえ、ちょっと考え事を」
「そう?」
ずいぶんと真剣な顔してるみたいだけど。
「レティシアさーん、エリヴィラさーん、行くっすよ!」
「おいてくよ~」
イルマちゃんとラウラちゃんがもう教室から出ようとしている。
早いな!
「あらあら、待って! 行きましょう」
「はい……」
さーて、魔法だ、魔法見学だ!!
うおぉぉぉー!! 異世界にいるって感じするー!!




