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ゴーレムは萌えフィギュアの夢を見るか

「ごめんなさい。髪を触られるの嫌だった? そうよね、急にごめんなさい。よくなかったわね」

「……気持ちが悪くないの?」

「気持ち悪い?」


 あー、いるよねー。

 長い髪を異様に気持ち悪がる人。

 そりゃ汚らしくだらだらのばしてるだけだと、切ったほうがいいんじゃない? って思うかもだけど、エリヴィラちゃんはちゃんと手入れしてきれいに伸ばしてるんだから、気にしなくていいのに。


「ぜんぜん、そんなにきれいな髪、気持ち悪いなんてありえないわ」

「……珍しい人ね、あなた」

「けど」

「なに?」

「せっかくきれいな髪なんだから、もっと違う髪型にしてもいいんじゃないかしら? おろした髪も素敵よ」


 半分だけだけど髪を下ろしたエリヴィラちゃんは、黒髪だけどとても華やかに見える。

 三つ編みの時の地味でまじめな感じもいいけど、こっちもいい。

 ミステリアス度が上がる!!


「……下ろしていると、髪が落ちるかもしれないですから」

「ああ。それできつく編んでるのね」


 術に使う髪なんだから、落とすと何かあるのかもなぁ。


「じゃあ、しっかりきつめに編むわね!」

「でもっ」

「粘土で手が汚れてるでしょ? こんな時は助け合いよ」

「あらかじめ濡れタオルは用意してありますから」

「じゃあ、手を拭いてなさいな。私は髪を編むわ」

「………」


 再び伸ばした手は避けられなかった。


 うっわー、なんだこれ。

 エリヴィラちゃんの髪はサラサラでハリがあり、一本一本がつやつやと輝いてる。

 乱れてもさっと手櫛で撫でるだけで真っすぐだ。


「本当にきれいな髪ねぇ」


 いや、ホントため息が出るよ。


「そう……ですか」

「ええ」


 さて、三つ編み、三つ編み。

 ざっくりと髪の束を三つに分けて、根元からきっちりと編み上げていく。

 レティシアの手が覚えているおかげか、かなりキレイにできてるぞ。


 その間にエリヴィラちゃんは、濡れタオルで指を拭く。

 粘土のゴーレムはおとなしく机の端っこに座って、足をぶらぶらさせてる。

 なんか、動きが可愛いんですけど。


 しかし、これ……フィギュアとかに髪を入れたらどうなるんだろう?


 え?

 それ、すごない?

 フィギュアのあの子を動かせるなら、アニメのあの百合ワールドを360°アングル変えて眺め放題!

 VRを超える!!

 ……まあ、VRとか持ってなかったけど。

 小遣いで手が出る値段じゃないしっ。


「ねぇ、エリヴィラさん、そのゴーレム術って、自分が作ったもの以外の人形でもできるの?」

「ものによりますけど」

「なら、フィギュ……」


 じゃ、わかんないよな。


「銅像とか動かせるのかしら?」

「無理です」


 返事早っ!


「あ、先に髪を入れとかないと無理かしら?」

「いえ、短時間なら張り付けたりで対応はできますが……銅像は固まっていますから。関節構造がないと無理です」

「ああ、それでやわらかい粘土で作ったのね」

「はい」


 ふーむ。

 じゃあフィギュアは無理か。


 あ、でもそれなら稼働フィギュアならアリなのか?


「粘土じゃなくても、関節のあるものならできるのね。例えば、ドールとか!」


 ドールいいよね!

 アンティークドールと女の子の組み合わせいいよね!

 ゴシックな感じもプラスされていいよね!!


「できるけれど……おすすめはしません」

「どうして?」

「私もお人形は好きなので……一度同じことを考えて実行してみたことがあるんですが」

「ええ」

「……動かすことはできたのですが……まったく表情を変えずに動く様子がとても怖くて」

「あら」

「しばらく人形に触れなくなりました」


 たしかに……アンティークドールが自分でカタカタと動く様子を想像すると……めっちゃくちゃ怖いな!!

 チャッキーとか思い出すよな!!

 あいつはめっちゃ表情変わるけど!


 キレイ系のドールでもすごみが増すし、カワイイ系でも……怖いわ!

 めっちゃ怖いわ!!

 つーことは、可動フィギュアもイマイチかもなぁ。

 表情変えないし。


 けど、エリヴィラちゃんが自分で人形動かして、一人怖がってるのを想像すると……


「ふふっ」

「何がおかしいんですか?」


 むっと表情を険しくされた。


「ごめんなさい。怖いのはわかるんだけど、おかしくて」

「う、動いているのを見たら、笑ってなんかいられないですよ! 本当に怖いんですから!」

「わかってるわ」

「本当ですよっ。今度見せましょうか!?」

「ふふふっ。遠慮するわ。怖いもの」


 この子、ミステリアスで近づきがたいかと思ったら、結構しゃべるし面白いぞ。

 周りに我関せずって感じで一人が好きなのかと思ったけど、そうでもなさそうだ。


 ……呪いの家系ってことで敬遠されてるから?

 と、なると、俺は無関係じゃないぞ。


 だって、彼女は関係ないとはいえ、呪いにかかったことがある人がクラスにいるんだもん。

 まぁ、みょーな感じにはなるよな。


 犯罪事件の被害者と加害者の親戚が同じクラス。

 的な?


 うっわー。

 めっちゃややこしい状況だこれー!


 そりゃあ遠巻きにするね。

 腫物だね!


 こりゃ張本人の俺が何とかしなきゃ、どうにもならんやつでは?

 しかし、どうしたもんか。


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