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猫とわんこと談合を

「アタシらっす」

「そう~」


 お前らかーい!

 ずいぶん深刻そうに話すから、最悪の事態を考えてしまったじゃないか!


「二人とも、大丈夫だったの?」

「はい~。私たちも電気系の魔法なんで~、耐性があったのか大したことなかったんですよ~」

「でも、どう反応したのかすっごいことになって、物置一つふっとんだんすよ! 音も、バーンってものすごかったす!」

「大騒ぎだったよね~。私たちぜんぜん平気なのに~」


 おいおいおい、二人の中じゃいい思い出になってんじゃねーか。


 ふーむ。

 小さい頃のことだし今はなんのわだかまりもなさそうだから、グローリアちゃんも気に病むこともないのになぁ。


「そのおかげでアタシら二人ともこの学校これてるんすよ。一応お目付け役ってことになってるんですけど」

「一緒に遊んじゃうようなのは~、お目付け役にはならないもんね~。慰謝料みたいなものかな~?」

「ウチでは口止め料って言ってたっすよ」

「それじゃ~、言っちゃダメじゃん~?」

「あ……」


 イルマちゃん、ハスキー顔なのにそんなチワワみたいにこっち見ないで。


「ここ、このことは! ご内密にお願いするっす!!」

「そうね。それじゃぁ……私は何も聞いていません。二人はこの部屋に来てません。ってことでいいかしら?」


「たすかるっす!」

「よかったね~」

「でも実際、グローリアさんまだあれ気にしてるんすかね?」

「気にしてるから触られるの~、嫌がるんでしょ~?」

「いや、グローリアさん、帯電体質じゃないすか。結構バチッてくるの。冬のドアノブとか100パーっすよ。100パー。それで触らせないのかもしれないっすよ」

「わたしそれは関係ないと思うな~」


 俺もそう思うな~。


「まぁ、そんなのなんで。レティシアさんが嫌いとかじゃないんすよ」

「そうそう~。アダルベルト様のことも~、誰でも気に入らないですから~」

「ふふ。グローリアさんは、よっぽどお兄さんが好きなのね」

「いやー。兄妹仲は悪くないっすけど、問題は順番すよ」

「順番?」


 何の順番だ?


「あ~。ヴェロネージェ家はしきたりが古いんで~、今時~兄弟は上から順番に結婚するの~守ってるんです~」

「そんで、アダルベルト様が結婚すると、さあ次だ。グローリア結婚しろ。って呼び戻される恐れがあるんす」

「まぁ!」


 なんだと!?

 そんな無理やりな結婚など、天が許しても俺が許さぬわ!!


「できれば学園は卒業したいって~。一人でやっていけるだけの勉強できたら~、家から出るのも夢じゃないし~」

「せめて初恋ぐらいはしたい。っての、よく言ってたっすよね」

「当然だわ!」


 そうだ!! 初恋ぐらいはするべきだ!!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 かつての自分によく似た孫を窓際で見送り……私はあの時の恋を思い出す。


 胸に揺れるロケットはいつの間にか開かなくなってしまったけれど、中の写真は見なくても目を閉じれば瞼の裏に色鮮やかによみがえる。

 彼女の声も、髪の優しさも、指の細さも、胸の鼓動の速さも、ぬくもりも。


 記憶の中の彼女は少女のままで……私だけが大人になり、こんなに老いてしまった。


 いいえ、私の時もあの時のまま止まっているのかもしれない。

 こうして目を閉じていれば、まるであの日にいるようだ。


 ああ、彼女が呼んでる。

 あの日の笑顔で。


 ええ、行くわ。

 私もそこに。

 待たせてごめんなさいね。


 でも、これからはずっと一緒よ……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 Nooooo!!

 悲恋、NGです!!

 フィクションだと、ああ美しい……。

 とか言ってられますけど、知ってる女の子がそうなるなんて許せんですよ!!


「安心して。私も卒業まで結婚はしないと言ってあるから!」

「あ、そうなんすか! グローリアさんも喜ぶっす!」

「でも~。わたしたち今日ここに来なかったのよね~? 教えられなくない~?」

「あ……」


 イルマちゃん、再びチワワされてもこれは俺にはどうにもできん。

 なんとか仲良くなって、自然な会話で伝えられるといいんだがなぁ。


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