お茶会をもう一度
復学の説明は問題なく進む。
難しいことはなく、形式的な説明と後は世間話とか。
魔法学校にいるのに呪いをかけられてしまったことをずいぶん謝られてしまった。
校長先生のせいじゃないのになぁ。
学園の生徒を守れなかったことは、この学園の最初にして最大の汚点みたいだ。
だからこそこうしてレティシアが帰ってきた事は、汚名返上のチャンスってことか。
ふむ。
かわいいおばあちゃん校長先生のためにも、このリリア魔法学園と言う百合の園を守るためにも、呪いからはしっかり身を守らないとな。
具体的には……んー?
感覚的には呪いはピンポイントで自分を狙ってくる風邪みたいなもんなので、とにかく健康に気を付けて、自分の魔力を高めて抗体を作る?
つまり充実した学園生活を送りましょう。
ってことだな!
それ、言われなくてもやらせていただきます!
しかし、このおばあちゃん先生……有事の時にはスタイリッシュババアになるタイプと見た。
『あたしから見たら、あんたたちなんぞまだほんのお嬢ちゃんなのさ。ここは任せて下がってな! あたしの生きざま、見るがいいさ!』……とかな。
いやいや、それじゃ死亡フラグだから!
ま、まぁ、そんな感じに女子たちに見せつけて、「あんな人になりたい」って憧れを植え付けるやつやってほしいだけだから。
そんなエッチな感じが全くない心のあこがれもまた、百合。
ピュアさが際立って、これは……間違いなく尊い!
……もちろん、エッチなのが嫌いなわけでなく、大好きですけど!
「説明は以上です。何か質問はありますか?」
「はっ! いいえ、ありません」
やっべ、聞いてなかった。
「なにかわからないことがあったら、こちらの冊子を見るように」
「ありがうございます」
おおう、こちらのミスを指摘せずにフォロー! さすがスタイリッシュババア!
資料だの教科書だのを受け取って、後は明日の登校に備えるだけ。
「ファラリスさんっ。ううん、レティシアちゃん。少し、お話できる、かな?」
「えっと」
いいのかな?
そりゃ俺としては大歓迎だけどそれでリゼットちゃんが怒られるのはやだなぁ。
ちらりと校長先生を見る。
「モーリア先生がファラリスさんの担任になるのは明日からですし。今日はまだ二人はただのお友達ですからね」
さっすが話が分かる!
「よかった」
「ありがとうございます」
「ですが、他の生徒からすると贔屓のようで面白くないかもしれません。だから、こっそりね」
と、ウインク。
「はい」
「わかりました」
うーん、このおちゃめなところいいなぁ。
若い時はさぞかし美人だったんだろうと思わせる。
ノーマークだったが俺の百合センサーにピピっと来たね。
精神性の高い百合を摂取したいときのポイントとして覚えておこう。
いったん部屋に戻って教科書を置き、急いで準備を済ませると、二年前、レティシアとリゼットちゃんの待ち合わせの場所だった校舎裏へ。
そこからこそこそと人目を避けて職員棟のリゼットちゃんの部屋にIN!
「ふふっ」
部屋に入ったとたん、思わず笑い声が漏れた。
「もう、なんで笑うの?」
「だって、変わってないんだもの」
リゼットちゃんの部屋は二年前のまま。
カントリー調のインテリアにぬいぐるみが並ぶ『オンナノコの部屋』を絵に描いたよう。
変わらない部屋で、リゼットちゃんだけが大人になっていて……
俺は初めてレティシアが呪いで眠っていた二年間と言う時間を実感した気がする。
「それじゃ、はじめましょうか」
「うん」
テーブルの上に、側面に大きな穴の開いた壺を置き、リゼットちゃんが穴に指を入れてくるくると回すと、ポッと炎が上がる。
リゼットちゃんの魔法は火だ。
レティシアの記憶によると、火の魔法は一番ポピュラーな魔法で、魔術師の三分の一は、火の魔法の系統らしい。
ありふれてはいるんだけど、火は生活の必需品だし、攻撃にも使えるしと、一番使い勝手のいい魔法でもあるんだよな。
いいなぁ。
すっごい魔法って感じする。
俺の魔法の解呪とか、使いどころ全然ないぞ?
実際のところ、目覚めてこの方一回も使ってないんですけど?
やかんがシュンシュンと蒸気を吐き出し、俺は手早くお茶の準備を始める。
レティシアとリゼットちゃんが、学園の一年生だった時、こっそりしていた二人だけのお茶会をもう一度、だ。
ちなみにレティシアの家は、お茶を作っているから当然だが、俺もお茶にはちょっと詳しいぞ。
なぜなら俺の愛読書のひとつ『紅茶の冷めないうちに』は、ありすと佐奈子の二人がお茶の入れ方をレクチャーしてくれる小説だから!
お茶の入れ方とうんちくをちょっと教えてくれて、あとはありすと佐奈子のお茶会風景という、紅茶レクチャー本の皮をかぶった微百合本。
この微ってところがミソで、直接書かれていないだけに妄想がとてもはかどるのだ。
ポットを温め、茶葉はいっぱい多めの量。
勢いよくお湯を注ぎ、ティーコージーをかぶせて三分。
ティーカップに注いだ紅茶は、レティシアの思い出と同じ香りだ。
「はい、どうぞ」
お茶を差し出すと、リゼットちゃんの顔がくしゃっとしかめられ、きつくつむった目から涙がわき出した。
おえぇぇ!? なんで泣くし!?
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