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夏休み 4

 数十分後、戻ってきたグローリアちゃんたちは、ひらひらかわいいけど普段の休日ドレスに着替えてきていた。

 まつげがいつもよりくるんとしてるしツインテールの先もカールがちょっと残ってるけど、いつものグローリアちゃんである。


 さっきまでお姫様だったのに!


 あ、いやそれが悪いってわけじゃなく、改めて変わりっぷりがすごいなぁって感激してしまう。

 化粧とか詐欺じゃんとか言ってたヤツもいたが……


 バーカバーカ!

 別にお前のために化粧してるわけじゃねぇし!


 まあ、大人になったら化粧しなきゃいけないみたいなめんどくさいあれもあるけど、女の子同士で化粧品について話してる様子とかマジ尊い。

 化粧品とかもなんかかわいいケースでさー、魔女っ娘のアイテムとかを吟味しているようで……決して近づくことができない花園を覗いているような気分になったものだ。


 ……んん?

 あ、そう言えばここにいるみんな、自分も含めて魔女っ娘では!?

 魔法使いの女の子で魔女っ娘では!?

 アイテムで変身できないのは残念だか、おしゃれという魔法で変身はできるのでは!?


 あああ、なんかテンション上がって来たー!!


「先ほどは急に中座してすいません」


 グローリアちゃんがちょっと赤くなって言う。

 ……化粧もいいけどやっぱりこうして表情が見られる方が俺は好きかも。


「いいのよ、やっぱりあのドレスは苦しいわよね。あんまり素敵だったから……でもお人形扱いだったかも。引き留めちゃってごめんなさいね」

「いいえ! お姉さまのお人形なら喜んでなります!!」

「そんなの嫌よ」

「ふぇっ!?」

「グローリアさんは、グローリアさんでなきゃ。ね?」


 そりゃあ、かわいいドールとか嫌いじゃないけど、本物とどっち? って言われたら俺は本物を取りたいね!


「かわいいお人形にも興味はあるけど」

「わ、私もお人形は好きでっ。一人持っていて!」


 エリヴィラちゃんがぐっと身を乗り出す。


「まぁ、それは素敵。今度会わせて」

「はい!」


 にしても、誰もさっきのこと誰もからかったりしないの!

 やっさしーなー。

 これは女の子だからなのかみんなお嬢様だからなのかはわからないが、ここにいる子たちが全員優しくていい子たちなのは間違いないのである。

 くぅぅぅ。

 やはりここは天国だな!


「で、別荘なんだけど、みんな来てくれるわよね? 休憩も取りたいしなるべく早く出発しましょ」


 グローリアちゃんの問いに、みんなはちょっと困った顔だ。


「リゼットちゃん、もしかして学園の仕事とかある?」

「授業の準備なんかはあるけれど、基本はお休みをもらっているわ」

「そう! エリヴィラさんとマリオンちゃんも特に予定はなかったわね」

「はい」

「けどぉ」

「はーい。みんな大丈夫ね! もちろん行かせてもらうわ。さ、早く準備してできたらここに集合ね」


「ええ?」

「あぅ」

「うーん。お姉さまがそう言うなら」


 みんな、ちょっと戸惑った様子ながら、自分の部屋に準備をしに行く。


 グローリアちゃんが着替えている間、伯爵家の別荘ってどんなところかと興味津々に話していた様子から見ると……

 ものすごーく行きたいけれど、いいのかなー? 本当にいいのかなー?

 って感じだったのでここは俺が強引に誘ったって体にするのだ!


 俺も行ってみたいし、どうせならみんな一緒にの方がいいもんな。

 そしてそれはグローリアちゃんも同じはず!


「みんな一緒なら、絶対に楽しくなるわね」

「あたしはお義姉さまだけでも歓迎なんですけど」

「そんなこと言って。楽しみでしょ?」

「う、まぁ、友達を招待するとか、初めてで……ちょっと楽しみじゃないわけじゃなくて」


 おお、素直になれないこの感じ、イイ。


「私も楽しみだな~。遊びに行くってなるとずっと三人だったし~」

「そっすね。いや、三人がいやってわけじゃないっすけど、なんか新鮮でいいっすよね。グローリアさんもみんなと遊ぶようになってだいぶ変わったと思いますし」

「え? あたし変わった?」

「変わったよ~」

「あら、それ興味あるわ! ねぇ、学園に来るまでのグローリアさんのこと聞かせてほしいわ」

「ちょ、ちょっと、なんか恥ずかしい! そうだ、お義姉さまは準備いいんですか!?」

「いや、それはエダさんがやってるっすよ」

「だよね~」

「ええ」


 その通り。

 準備はエダにお任せだ。

 たぶん俺がやろうとしたら邪魔になるだけだろうし。

 もう頼りきりである。

挿絵(By みてみん)


「だからそれまで、色々聞かせてもらおうかしら」

「お義姉様の意地悪~!」



 残念ながら結構早くみんな戻ってきてしまったので、話はほとんど聞けなかった。

 まあ、実際話を聞くのが目的じゃなくて、恥ずかしがるグローリアちゃんをからかうように話すラウラちゃんイルマちゃん、この三人を眺めることが本命なのだ。


 恥ずかしいと怒って見せるが、決して本気で怒ってはいないグローリアちゃん。

 ラウラちゃんイルマちゃんは、いたずら心で昔話をしているようだが、その実、幼馴染でずっと一緒にいる親友同士でしか知りえない出来事を話すことによって、一番仲がいいのは自分たちであるというマウントを無意識にかけているのである!

 たぶん! 絶対!


 うんうん、ぽっと出のお義姉さまより、ずっと一緒の幼馴染のほうがお互いのことよく知ってるよね。

 よくわかっているけど、いいぞ! もっと自慢してほしい!


 別荘に到着するまで、かなり馬車に乗っているのだからいっぱい話を聞いちゃうぞ~。

 と、楽しみに乗り込む。


 ……部屋じゃん。


 馬車の中は部屋だった。

 狭いけど、豪華な部屋!

 さすがに全員乗ったら狭いけど、中だけ見せられたら絶対馬車だなんて思わないぞ!!

 ソファーもふっかふかでお尻にも優しい!!


「あの、少し狭いようなので私は御者さんの所で」


 っと、部屋みたいと言っても、さすがにこの人数は多い。

 座ってみたらぎゅうぎゅうになってしまった席から、エダが立ち上がろうとする。


 ぎゅうぎゅういいのに!

 女の子が密集してるとか天国なのに!!


「え、外の席っすか? 時間長いので大変っすよ?」

「ですが、これでは皆さんが大変ですし」

「あ、じゃあ!」


 マリオンちゃんが立ち上がったかと思うと、ぽうん! とスライム体に変身!


「マリオンをお膝に乗せたらいいんじゃないかな?」

「それはいい考えだわ! こちらにどうぞ」


 ポンポンと膝を叩くと、ぽにょんと膝に乗っかってくる。

 スーラーイームー!

 ぽにょぽにょー!

 はー、この重さまで変わる不思議。

 深く考えてもどうせ俺にはわからん。

 あー、やっぱ異世界だなー、ここ!


「いいんですか?」

「うん、マリオンこの姿見られるの、ちょっと嫌だったけど、ここにいるみんななら平気。だって、みんなマリオンがどんな姿でも変わらないし」

「態度を変える人がいるの?」


 リゼットちゃんが先生の顔になる。


「前はね。でも、お姉ちゃんたちが遊んでくれるようになってから、みんなおんなじ風になったかな?」

「そう、なの。よかった」

「……悪気があったわけじゃなくて、どうしていいか分からなかっただけ。だって思考型スライムと会うのは初めてだったもの」


 エリヴィラちゃんがちょっとばつが悪そうに俯く。


「そんなのわかってるよぉ。マリオンだって家族以外の思考型スライムにあったことないもん。もし会ったら――きっとどうしていいかわかんなくなっちゃうと思うなぁ」

「そうかもしれないけど、これからマリオンちゃんに変な態度をする人がいたら、このグローリアお姉ちゃんに言うのよ! できる手段は全部使って追い込んであげるから」

「ヴェロネージェさん、あまり過激なことはやめてほしいんだけど」


 ああ、リゼットちゃんが先生の顔になっちゃったよ。


「でもっ」

「その前に一度話してみない? 私たちみたいに仲良くなれるかもしれないもの。マリオンちゃんも言っていたけど、知らないって怖いことだわ」


 ツンデレを知らなければ、ツンツン娘はただの嫌な奴。

 だが知ればそれが抗いがたい魅力になるのだ。


「お互いを知ったら、新しいことが見えてくるかもしれないわ。もちろんそれでも仲良くなれないことはあるかも知れないけれど……挑戦してみる価値はあると思うの」


 新ジャンルを食わず嫌いしていてはいかんのだ。

 かくいう俺もギャルものはちょっとなぁ。

 って思っていた時代もあったのだ。


 だがギャル。

 いいぞ。

 死ねるぐらいいいんだ。


「お姉ちゃん……ありがとう」

「ん? いいのよ。ちっとも重くないし」


 俺はひざの上のマリオンちゃんをぽょぽょと揺らす。

 あー、異世界感があり、小動物感もあり、かわいい女子でもあるなんて、マリオンちゃんとはなんと全部乗せマシマシなゴージャスな子なのか。

 知ればだれもが好きになること間違いなしだろ!


「お姉様が言うなら、きっと……私もそうだったから」


 エリヴィラちゃんが呟き、なんか馬車の中がシンとする。


「あっ、あのね! 別荘には泳げる湖があるのよ!」


 突如グローリアちゃんが声を上げる。


「まぁ、湖? すごいわね」


 いやマジ凄くない?

 グローリアちゃんの別荘どんだけ広いの?


「みんなで泳いだらきっと気持ちいいわ!」

「悪いけど水着なんか持ってないわよ」

「あたしたちのでよかったら貸すから。ちょっと泳ぐだけなのに毎年何着も作るから、一度も着てないのもたくさんあるし」

「今年はデザイナーミユキのなんすよ。結構お気に入りっす」

「マリオンは水着作れるけど、泳ぐのは楽しみ!」

「いいわね。およぐなんて久しぶりだわ、先生になってから全然だったし」


 みんな楽しそうに湖で遊ぶ相談をしているけれど、俺はひとつのことが気になって仕方なかった。


 グローリアちゃんたちの水着を借りる。

 ……三人ともスレンダーなタイプなグローリアちゃんたちの水着を……リゼットちゃんが!!

 え? 何それマイクロビキニみたいにならない?


 嫌いじゃないけど、嫌いじゃないけど!!


 リゼットちゃんも泳ぐのに乗り気っぽいし……え、ええ?

 これは、なにかがおこってしまうのでは!!??


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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 皆も本当に優しくて良い娘て可愛いです〜 百合百合イチャイチャは最高ですwww イラストの目にはちょっと違和感が有りますが、他の所は普通に中々のメイド感が出来…
[一言] いよいよ来る水着回( ˘ω˘ )!
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